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Thursday, June 19, 2014

パイオニア / Pioneer



ノルウェー北海で発見された石油を陸上へ輸送するための海底パイプライン工事で起こった実際の事件を元に製作されたノルウェー製・深海サスペンスムービー。監督も俳優も事件のことも全く知らないのだが、『深海』という人が本能的に恐れる海の底で実際に起きた事件を元に描かれた作品で、しかも舞台は石油パイプラインとくれば、もう観ずにはいられない。

80年代前半。莫大な石油とガスが北海で発見されたノルウェーは、世界で最も豊かな国になろうとしていた。ノルウェー政府は輸送用パイプラインの敷設を行い、最後に海底500メートルでパイプラインを接続する重要プロジェクトを開始した。海底500mというかつて誰も経験したことのない深海作業であり、実際の作業に先立ち入念な地上訓練が行われた。やがて地元ノルウェーのプロダイバーであるペッターとクヌートの兄弟がプロジェクト最初のダイバーに抜擢され、初の深海実験ダイブが行われた。作業は順調に進んでいたが、弟のペッターが気を失った刹那、兄クヌートを巻き込む爆発死亡事故が起きてしまう。自分はなぜ気を失ってしまったのか。事故の本当の原因は何なのか。上層部の説明に納得がいかないペッターは、自ら事件の真相を調べ始めた…。

最初に行っておきたいのが、『深海ミステリー』というのはこういう作品のことではないということ。配給会社からしてみれば、面白くも無い映画にもキャッチなコピーを付けて売りださねばならないのだろうが、本作に深海ミステリーとはもはや嘘と断言してもいい。で、若干ネタに触れるが、ストーリーの核は、当時は誰も成し得ていなかった深さにおける潜水作業で実験的に使用された呼吸用ガスを巡るダイバーと機材チームのイザコザ話ということになろうかと思うが、コピーでは『巨大な石油ビジネスと政府の陰謀』という感じで、Xファイル的な陰謀論置き換えられているのもやり過ぎ。事件の事も良くわからないので、本作を観ても脚色と事実の境界がどこなのかは分からないが、いずれにせよ何が目的で何が結論なのかが全然分からず、ストーリの山場もなく、意味不明のまま観終わってしまった。(SS)

製作: 2014年 ノルウェー 106分
監督: エーリク・ショルビャルグ / Erik Skjoldbjarg
製作: クリスティアン・フレデリク・マルティン / Christian Fredrik Martin
出演: アクセル・へニー / Aksel HENNIE, ウェス・ベントリー / Wes BENTLEY, スティーヴン・ラング / Stephen LANG, ステファニー・シグマン / Stephanie SIGMAN, アーネ・ダール・トルプ / Ane Dahl TORP, ヨルゲン・ラングヘーレ / Jrgen LANGHELLE, ジョナサン・ラパリア / Jonathan LaPAGLIA
ジャンル: サスペンス
鑑賞方法: DVD

Tuesday, June 10, 2014

鉄子の旅 全6巻



『鉄道ファン』。時に『テツ』やら『鉄ヲタ』と称される鉄道好き。テツ自体はかなり古くから存在するようだし、特にオタク性も高くない一般的な趣味(だと個人的には思っている)だが、ある時から急に市民権を得たというか、認知度が上がったのには、本作も幾ばくかの影響を及ぼしているかもしれない。『鉄子の旅』は小学館の『月間IKKI』に連載された漫画で、旅の案内人として、旧国鉄時代からJR・私鉄に至るまで日本の全ての駅に降り立ったという横見浩彦が毎回企画する鉄道の旅を、菊池直恵の作画で描くノンフィクション漫画。

Amazon.co.jpで『鉄子の旅』を検索する。

基本的な展開としては、鉄ヲタの中でも『神』に近いとされる横見が鉄道の旅を企画して、その横見と対極にある鉄道に興味のない漫画担当の菊池と毎回日本中の鉄道を訪れるというもので、時折ゲストが来たりすることもあるが、この2名に小学館の編集者を加えた3名が通常の旅メンバー。『列車に乗り駅を降りる』こと、それ自体が『旅の目的』である横見。一方、菊池(というか、テツ以外の人)は鉄道による移動は旅の移動の『手段』の一つでしかすぎず、おのずと両者の意見は異なることになるのだが、この辺りの考え方の違いに対する驚きや、二人の掛け合いやらが毎回のお約束である。しかし、鉄道はあくまで移動手段であってそれ自体を楽しむ術を知らない菊池が、漫画としてなるべく面白くなるように作画しても、その底辺にある考え方の違いはレールのようにどこまで行っても交わることが無いため、鉄道好きな視点からみるとそのストーリー展開は少々棘々しさが感じられる。しかも、ストーリーが進むに連れて菊池が徐々に鉄道好きになっていって…というような甘い展開ではなく、むしろ回を追う毎に菊池の棘が益々鋭くなっていくのだが、まぁそこが本作の面白いところであり狙いでもあるのかなと思う。

なお、撮り鉄・完乗・鉄道模型・音鉄などなど、いろいろあるが、横見が降り鉄というか駅ヲタなため、本作の方向性もほぼ駅に主眼がおかれており、全てのテツが楽しめるかといえばそうでもない。ノンフィクションを標榜するのなら、乗った車両の詳しい情報や風景写真などもフィーチャーすると、もう少し濃くなったような気がするが。既刊全6巻に加えて、連載終了後のコラムや読み切りなどを含めた鉄子の旅プラスの実質全7巻。なお、横見企画の旅に5年間付き合った結果、体力の限界ということで筆を置いた菊池に代わり、ほあしかのこ作画による新・鉄子の旅も既刊全5巻が発行されている。(SS)

Amazon.co.jpで『新・鉄子の旅』を検索する。


初版発行: 2004年
原作: 横見浩彦
作画: 菊池直恵

探偵はBARにいる 2 ススキノ大交差点/ The Detective is in the Bar 2




大ヒットした前作に続くシリーズ2作目は、同じく東直己の探偵はひとりぼっちを原作に、私立探偵『俺』と相棒の高田の活躍を描く。主演は前作に引続き、北海道出身の大泉洋と、相棒役に松田龍平。共演に尾野真千子、ゴリ、渡部篤郎など。今回も探偵の本拠地であるバー『ケラー・オオハタ』、『缶ピースと胃腸薬』や、喫茶店『モンデ』などなど、シリーズのファンなら説明不要のアイテムはそのままで、前作同様の面白さを期待させる。

東日本最大の歓楽街ススキノ。探偵が足繁く通うオカマバーのマサコちゃんはいつも大胆なマジックで探偵や仲間のオカマ達を驚かせていた。そんなマサコちゃんは皆にそそのかせれて冗談半分で出場したマジック大会で全国優勝してしまうのだが、記念パーティーの翌日に何者かに殺害されてしまう。しかし、警察の捜査も進展少なく、探偵がススキノの住人達に聴きこみを行ったところ、マサコちゃんが事件当夜にカリスマ政治家の橡脇と会っていたとの情報が入る。探偵は早速、地元暴力団や橡脇の支持団体の調査を始めるがそんな中、何者かによる尾行に気付いた探偵は、とある雑居ビルで逆にその尾行者を捕らえるも、それは気鋭の美人バイオリニストの河島弓子だった…。

昔、千葉の房総で特急列車に乗る前に『カニ味噌』とビールを買ったのだが、どうにもこうにもこのカニ味噌が美味しくない。良く良くパッケージをみると『カニ味噌風味噌』と書いてあった。『カニ味噌』と『カニ味噌風味噌』とは似て非なるものなのだ。それはさておき、本作はハードボイルド風ごった煮作品といったところで、前作よりもややコメディー方面に強めに振った感があるも、終盤にかけては大泉洋が格好良く見えてしまうハードボイルド風作品に仕上がっている。個人的には大倉山ジャンプ台と室蘭での銃撃戦についてはやり過ぎ感が強く頂けないのだが、それでも格好良さと面白さの間の微妙な細い線のような独特の雰囲気や、早くもなく遅くもない微妙なスピード感はいずれも心地よく、最後まで気持ちよく見られる。ただ、原作を読んでいないので何とも言えないところもあるが、ストーリの核心である殺人事件の謎を解き明かすきっかけや、その後の短絡的な展開などは脚本が良く練れていないとも感じた。作中の季節設定は晩秋といったところだが、季節外れの真夏日が続く6月に見てしまったので、紅葉や初雪のシーンなど北海道ならではの季節感を出したシーンがしっくりと入ってこなかったのが少々残念。本作の出来とは無関係だが。(SS)


製作: 2013年 日本 119分
原作: 東直己 / Naomi AZUMA『探偵はひとりぼっち』
監督: 橋本一 / Hajime HASHIMOTO
出演: 大泉洋 / Yo OIZUMI, 松田龍平 / Ryuhei MATSUDA, 尾野真千子 / Machiko ONO, 田口トモロヲ / Tomoro TAGUCHI, 波岡一喜 / Kazuki NAMIOKA, 松重豊 / Yutaka MATSUSHIGE, 片桐竜次 / Ryuji KATAGIRI, 篠井英介 / Eisuke SHINOI, ゴリ / Gori, 矢島健一 / Kenichi YAJIMA, 筒井真理子 / Mariko TSUTSUI, 渡部篤郎 / Atsuro WATABE, マギー / Maggy
ジャンル: サスペンス, アクション, ハードボイルド
鑑賞方法: DVD

Thursday, May 8, 2014

パンドラ



2003年に初のTVのドラマとなるセンセイの鞄以来、数多くの名作を生み出してきたWOWOWのドラマWシリーズだが、本作は2008年に発表された『連続ドラマW』の記念すべき初回作である。本作発表までのドラマWは芥川賞や直木賞受賞作といった人気作家の原作を映像化した作品が多かったが、本作は脚本化の井上由美子による書き下ろしのオリジナル作品となっている。主演はWOWOW作品への出演頻度がかなり高い三上博史。共演には國村隼、柳葉敏郎、小西真奈美、谷村美月など。

港東大学病院内科医の鈴木は、上司や同僚のみならず家族からも見放されながら、18年もの長い研究の末、全てのがん細胞を完全に死滅させることのできる究極の薬を発見する。鈴木はこの画期的な研究成果を上司の大田黒に報告し、早速実際のがん患者に対して治験を行うよう申請したが、全てのがんに効果のある特効薬など存在する訳がない、と一蹴され治験の実施も不許可となってしまう。そんなある時、鈴木は水野愛美というがんの患者と出会う。水野は末期がんで余命3か月と宣言されていた。大田黒によって治験実施が認められなかった鈴木は、秘密裏にがん特効薬の実用化に向けた治験を水野と共に行うことにし、遂に水野の体内の全てのがん細胞の消滅を確認する。一方、鈴木の研究結果が本物である事が判明したとたん、大田黒はこれまでの態度を一変させ鈴木へ「共同研究」という形にしようと提案するが…。

記念すべき連続ドラマW初回作の本作は発表年度の第1回東京ドラマアウォードのグランプリを受賞も納得のストーリー。全てのがんを消滅させるという特効薬が開けてしまう「パンドラの箱」がもたらす魑魅魍魎を見事に描いている。一方、連続ドラマらしく各話の後半に山場を持ってくるのはいいのだが、ストーリー展開におけるスピード感が無く、特に政治家や製薬会社が絡んで来る辺りはテンポが悪く中だるみする。全8話の構成だが、もう少し凝縮してスピード感を出しても良かったかなと思う。キャスティングは三上博史、柳葉敏郎、國村隼や平田満といったベテラン俳優を配しており重厚感がある一方、そんなビッグネームの中で山根和馬や谷村美月や上原美佐、小西真奈美といった若手俳優陣の演技が少々浮足立っていたのが残念。(SS)


製作: 2008年 日本 WOWOW
監督: 河毛俊作 / Shunsaku KAWAKE, 若松節朗 / Setsuo WAKAMATSU, 小林義則 / Yoshinori KOBAYASHI, 小倉久雄 / Hisao OGURA
脚本: 井上由美子 / Yumiko INOUE 
出演: 三上博史 / Hiroshi MIKAMI, 柳葉敏郎 / Toshiro YANAGIBA, 小西真奈美 / Manami KONISHI, 谷村美月 / Mitsuki TANIMURA, 相島一之 / Kazuyuki AIJIMA, 上原美佐 / Misa UEHARA, 山本耕史 / Koji YAMAMOTO, 小野武彦 / Takehiko ONO, 吉瀬美智子 / Michiko KICHISE, 平田満 / Mitsuru HIRATA, 國村隼 / Jun KUNIMURA, 余貴美子 / Kimiko YO
ジャンル: サスペンス, ドラマ
鑑賞方法: DVD

横山秀夫サスペンス II (TV)



横山秀夫の短編ドラマ集第2弾は短編警察小説集の深追いより選ばれた4作品をドラマ化。今回は三ツ鐘署という地方の警察署を舞台に、谷原章介主演の『深追い』、北村一輝主演の『引き継ぎ』、小出恵介主演の『締め出し』、および三浦友和主演の『仕返し』の4作品で構成される。それぞれのドラマは独立したストーリーだが、同じ警察署を舞台にした物語であるだけに、4人の刑事それぞれにスポットを当てつつ展開する、一つの連続ドラマのようで、ふと太陽にほえろ!を思い出してしまった。

内容は、前作の横山秀夫サスペンスに続いて、期待を裏切らない面白さ。特に北村一輝主演の『引き継ぎ』は、犯人探し一辺倒の警察ドラマにあって異色の面白さで、北村一輝の持つ独特の存在感と、それにひけをとらない津田寛治の演じるキレた刑事が、共に物語を盛り上げている。この他の3作品も、これまでの警察ドラマとは似て非なる、警察内部の人間関係にスポット当てた秀逸なサスペンスドラマに仕上がっており、WOWOWドラマの面白さを感じつつ、改めて横山秀夫の原作小説の高い品質を思い知ることになる秀逸な短編ドラマ集。(SS)

製作: 2011年 日本 WOWOW
原作: 横山秀夫 / Hideo YOKOYAMA『深追い』
監督: 下山天 / Ten SHIMOYAMA
出演: 谷原章介 / Shosuke TANIHARA, 北村一輝 / Kazuki KITAMURA小出恵介 / Keisuke KOIDE, 三浦友和 / Tomokazu MIURA, 伊武雅刀 / Masatou IBU, 小木茂光 / Shigemitsu OGI, 鶴田真由 / Mayu TSURUTA, 佐藤二朗 / Jiro SATO, 津田寛治 / Kanji TSUDA, 螢雪次朗 / Yukijiro HOTARU, 本田博太郎 / Hakutaro HONDA, 小野寺昭 / Akirra ONODERA, 大杉漣 / Ren OSUGI, 金子ノブアキ / Nobuaki KANEKO, 市川実和子 / Miwako ICHIKAWA, 上原美佐 / Misa UEHARA, 温水洋一 / Yoichi NUKUMIZU, 今井雅之 / Masayuki IMAI, 志賀廣太郎 / Kotaro SHIGA, 若村麻由美 / Mayumi WAKAMURA, 古田新太 / Arata FURUTA, 戸次重幸 / Shigeyuki TOTSUGI, 中村靖日 / Yasuhi NAKAMURA, 山本浩司 / Hiroshi YAMAMOTO, 白石美帆 / Miho SHIRAISHI
ジャンル: サスペンス
鑑賞方法: DVD

Tuesday, May 6, 2014

マグマ (TV)



この数ヶ月、個人的にWOWOW製作の連続ドラマであるドラマWシリーズが流行っている。WOWOWは未加入で視聴は専らDVDなのが恐縮だが。WOWOWは『地上波で映像化出来ないものを映像化する』というポリシーがあるそうで、例えば地上波における大スポンサーの電力会社や大手小売などのネガティブな側面を描くドラマ…といったようなところにWOWOWが入り込む余地があるのだろう。本作は真山仁の経済小説マグマを映像化した作品。3.11の大震災以降に注目を浴び始めた自然エネルギーによる発電の一つ「地熱発電」を舞台としたドラマ。主演は尾野真千子。共演にはWOWOW常連俳優の津田寛治や谷原章介、長塚京三など。

外資系ファンドであるゴールドバーグキャピタルの敏腕マネジャー、野上妙子は社長の待田に大分県にある地熱発電や開発を専業とする「日本地熱開発」の再建を任される。バイスプレジデントに昇格したとはいえ、事実上の左遷ではないかと不満に思いつつ、妙子は会社を立て直すべく大分に乗り込む。赴任早々に大幅な社員のリストラや赤字部門閉鎖を発表するが、夢の地熱発電と言われる高温岩体地熱発電の研究一筋に生きてきた所長の御室や古参研究員からの猛反発を受ける。企業を立て直すために収益を第一に考える妙子だが、一方「日本の未来にとって絶対に必要な地熱発電を研究開発する」という御室の大局に立った考え方や、高温岩体発電の将来性を知るに連れ、妙子は次第に考えを改めていくが…。

個人的に地熱発電の蒸気設備建設プロジェクトに携わったことがあり、思い入れを強く持って視聴した。ドラマでは地元温泉組合との対立や政治家による横槍が相当に派手な形で入るが、事実も政治に振り回され、温泉組合と常に軋轢音を立ててきたのが地熱発電であり、そういったネガティブ面から目を逸らさずに描いた原作や脚本に好感が持てる。一方、地熱発電の蒸気供給面ばかりが語られ、発電もしくは電力の買い方である電力会社について一切触れられていないのは、片手落ちと言わざるを得ない。高温岩体地熱発電の実用化については、ドラマだからこそ描けるハッピーエンドとでも言うべきか。主演は朝の連ドラヒロインのイメージが強く残る尾野真千子だが、あのハマリ役ほどの輝きはなく、外資系ファンドの敏腕マネジャーという強さは感じられなかったのが残念。一方、津田寛治の配役・演技共に個人的にどツボ。如何にも居そうなファンドの辣腕マネジャーをその眼力で好演している。(SS)


製作: 2012年 日本 WOWOW
原作: 真山仁 / Jin MAYAMA『マグマ』
監督: 香月秀之 / Hideyuki KADUKI,  鈴木浩介 / Kosuke SUZUKI
出演: 尾野真千子 / Machiko ONO, 谷原章介 / Shosuke TANIHARA, 石黒賢 / Ken ISHIGURO,  津田寛治 / Kanji TSUDA, 甲本雅裕 / Masahiro KOMOTO, 釈由美子 / Yumiko SHAKU, 渡辺いっけい / Ikkei WATANABE, 大杉漣 / Ren OSUGI, 長塚京三 / Kyozo NAGATSUKA, 上川隆也 / Takaya KAMIKAWA, 升毅 / Takeshi MASU, グレゴリー・ペカー / Gregory PEKAR
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

Wednesday, April 23, 2014

ウェイバック - 脱出6500km / The Way Back



ポーランド人のスラヴォミール・ラウイッツによる1956年発刊の脱出記―シベリアからインドまで歩いた男たち (原題: The Long Walk)』が原作の本作は、第二次世界大戦中にシベリアの矯正労働収容所から脱出した一行の逃亡劇を描いた作品。シベリアからインドに至るまでのまでの焼く6500kmを近代的な装備や充分な食料はおろか、服装ですらまともではない状態で、地図も持たずに徒歩で歩いたという、にわかには信じ難い話しであるが、原作者のラウイッツによれば事実に基づいた物語だそうだ。本当か否かは別に譲るとして、Amazonのレビューを見ると、とにかく絶賛の嵐で50年代の作品とは思えない高評価を得ている。監督はピーター・ウィアー。主演にジム・スタージェス。共演はエド・ハリスやコリン・ファレルなど。

ポーランド人兵士のヤヌシュはソ連によりスパイ容疑で逮捕され、妻を残してシベリアの強制労働収容所へ送られる。極寒の地域でまともな食事も与えられず、暴力が支配する過酷な環境。ある時、ヤヌシュにロシア人のカバロフが脱獄話を持ちかける。同じくアメリカ人のスミスや収容所を支配する犯罪組織ウルキのメンバーであるヴァルカなど、計8人へと膨れ上がった脱獄メンバーは、ついに収容所の脱出に成功する。一行は南のバイカル湖を目指して移動を開始したが、極寒のシベリアを移動するのは脱獄よりさらに過酷なものだった…。

事実だとしたら凄い話。歩いたメンバー達は手足の指などほとんど残っていなかったのではないだろうか。そして6500kmという距離もさることながら、極寒のシベリアに灼熱のゴビ砂漠、チベットから世界最高峰のヒマラヤ山脈と、この世に存在する過酷な自然環境を一挙に集めたかのような条件の中で、まともな食事、靴、服も無い中よく歩いたものだ。驚愕の物語だが、実際映像にしてみると、シベリアを歩き、砂漠を歩き、常に食事や水に困り、最後は歩くのも困難になるほど疲労困憊になる…という状態が繰り返されるので、多少の中だるみ感は否めない。しかし、最後に辿り着いた彼の地で歓迎されるメンバーや、冒頭のシーンで撒いた種をエンディングでしっかり拾うあたりなど、それなりに安心感がある秀作に仕上がっている。(SS)


製作: 2012年 アメリカ, アラブ首長国連邦, ポーランド 134分
監督: ピーター・ウィアー / Peter WEIR
原作: スラヴォミール・ラウイッツ『脱出記―シベリアからインドまで歩いた男たち』
出演: ジム・スタージェス / Jim STURGESS, エド・ハリス / Ed HARRIS, シアーシャ・ローナン / Saoirse RONAN, コリン・ファレル / Colin FARRELL, マーク・ストロング / Mark STRONG, グスタフ・スカルスガルド / Gustaf SKARSGÅRD
ジャンル: ドラマ, サスペンス
鑑賞方法: DVD

Thursday, April 10, 2014

横山秀夫サスペンス I (TV)

★☆

多くのヒット小説を世に産み出す横山秀夫の短編小説をWOWOWによりドラマ化した本作は、真相』『看守眼の中から仲村トオル主演の『18番ホール』。岸谷五朗主演の『誤報』。玉山鉄二主演の『自伝』。渡部篤郎主演の『他人の家』の4作品を収録。各話とも1時間ほどのショートストーリーでありながらスピード感と凝縮感に溢れたWOWOWらしい高品質な出来は観ている者を裏切らない。

『18番ホール』と『誤報で』細く強い繋がりが見られるが、総じて殆ど関連性のない独立したストーリーで構成された短篇集となっている。ただ、地理的な舞台設定が共通であり、チラホラと各話の横の繋がりが出てくるも、ストーリー展開にはそれほどの影響が無い。しかし、それ以上に各話に共通しているのは、所謂ハッピーエンドとは真逆の救いようのないエンディングが待ち受けているということ。幾らドラマと言っても、観ているこちらも辛くなるエンディングには、気分が暗くなること請け合い。ただ、サスペンスドラマとしては非常に良質で気分が悪くなるわけではない。

特に、主人公の境遇をボカシつつ、予想外のラストで秀逸なサスペンスに仕上げた『他人の家』と、全てを投げ打って地元の村長選挙に出馬した男の罪と募る疑心暗鬼を描いた『18番ホール』は1時間ドラマとは思えない秀逸な作品。全ての作品に原作のサスペンスとしての面白さが見事に表現された秀逸な作品集となっている。(SS)


製作: 2010年 日本 WOWOW
原作: 横山秀夫 / Hideo YOKOYAMA『真相』『看守眼』
監督: 鈴木浩介 / Kosuke SUZUKI, 水谷俊之 / Toshiyuki MIZUTANI, 榎戸耕史 / Koji ENOKIDO
出演: 仲村トオル / Toru NAKAMURA, 岸谷五朗 / Goro KISHITANI, 玉山鉄二 / Tetshuji TAMAYAMA, 渡部篤郎 / Atsuro WATABE, 西田尚美 / Naomi NISHIDA, 遠藤憲一 / Kenichi ENDO, 田口浩正 / Hiromasa TAGUCHI, 相島一之 / Kazuyuki AISHIMA, 小澤征悦 / Yukiyoshi OZAWA, 尾野真千子 / Machiko ONO, 柏原収史 / Shuji KASHIWABARA, 片岡礼子 / Reiko KATAOKA, 長塚京三 / Kyozou NAGATSUKA, 紺野まひる / Mahiru KONNO, 田中哲司 / Tetsushi TANAKA, 戸田菜穂 / Naho TODA, 高杉亘 / Koh TAKASUGI, 小野武彦 / Takehiko ONO, 伊東四朗 / Shiro ITO
ジャンル: サスペンス
鑑賞方法: DVD

Tuesday, March 25, 2014

メイドインジャパン



NHKがテレビ放送を開始したのが1953年2月1日。それから60年の節目の年ということで、『テレビ放送開始60周年記念ドラマ』として制作されたのが本作である("NHK開局"ではなく"テレビ放送開始"というところに留意)。『メイドインジャパン』というタイトルにNHKらしい重厚さを感じるとともに、ハゲタカチェイス-国税査察官など、秀逸な作品が多いNHKだけに、本作にも期待が高まる。主演は白い巨塔不毛地帯など硬派なタイトルの主役を多く演じたきた唐沢寿明。共演に高橋克実、國村隼、岸部一徳など。

日本を代表する大手電機メーカー『タクミ電機』の矢作は、財務部の柿沼や工場長の西山と共にとある場所へ呼ばれていた。そこで待っていたのはタクミ電機会長の譲原だった。譲原はメインバンクが3ヶ月内内に5000億円の債務を返済するよう迫ってきており、債務返済が滞った場合はメインバンクが撤退する、つまりタクミ電機は『余命3か月』と宣告された状態にあると3人に告げる。3人はこの危機的状況を打破するため、会長の特命再建チームを結成すべく招集されたのだった。矢作は早速チームリーダーとしてタクミ電機の倒産回避のために奔走するが、その矢先ヤマト自動車に対するリチウムイオン電池大量納入契約を中国の新興メーカーである『ライシェ』へ奪われてしまう。しかし、ライシェのリチウムイオン電池を詳しく調査するとタクミの開発した技術で作られている事が判明。ライシェと直談判を行うために中国へ飛んだ矢作だが、その前に現れた男は矢作のかつての盟友で、タクミ電機をリストラされた技術者の迫田だった…。

ハゲタカチェイス-国税査察官』『外事警察などなど、過去に観たNHK製作の秀逸なドラマ群を思い出して持った期待感は粉々に粉砕される。『メイドインジャパン』という壮大なタイトルそのものが無用な大風呂敷という感じだろう。ストーリーはさておき、人間ドラマの描写が浅く、日本経済に激震を及ぼす可能性の高い大企業の再建チームからは全く熱さが伝わってこない。チームの方針も二転三転し、最後は日中の特許訴訟かと思いきや、蓋を開けてみるとライバルが技術盗用をあっさりと認める始末。サブストーリーも稚拙で、人のせいにして問題と対峙することを避けてきた私怨に燃える新聞記者や、一方的な展開にイライラする矢作の離婚問題。何とか持ち込んだハッピーエンドでさえそのプロセスが不透明で最後まで消化不良。その上、マイコ、金井勇太、木下ほうかの3人の演技が余りに稚拙でもう観てられない。決して面白く無いという訳じゃないが、自分の中のNHK謹製ドラマ品質基準には合致しない。(SS)


製作: 2013年 日本
脚本: 井上由美子 / Yumiko INOUE
演出: 黒崎博 / Hiroshi KUROSAKI
出演: 唐沢寿明 / Toshiaki KARASAWA, 高橋克実 / Katsumi TAKAHASHI, 吉岡秀隆 / Hidetaka YOSHIOKA, 國村隼 / Jun KUNIMURA, 大塚寧々 / Nene OTSUKA, 酒井美紀 / Miki SAKAI, キムラ緑子 / Midoriko KIMURA, 刈谷友衣子 / Yuiko KARIYA, 金井勇太 / Yuta KANAI, マイコ / Maiko, 斎藤歩 / Ayumu SAITO, 中村靖日 / Yasuhi NAKAMURA, 平田満 / Mitsuru HIRATA, 及川光博 / Mitsuhiro OIKAWA, 岸部一徳 / Ittoku KISHIBE, 木下ほうか / Houka KINOSHITA
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD
エピソード: 
 第1話『余命3か月の会社を救うため集まった7人の会社員の物語!』
 第2話『倒産の回避に立ち上がれ! 七人の侍と家族がものづくり日本の誇りをかけて闘う! 日本の危機に迫る第2夜』
 第3話かつての友は敵に男達の誇りをかけて運命の最終回〜倒産の危機は? 訴訟の行方は? 日本の未来に希望は』

天地明察 (映画)

★☆

冲方丁(うぶかたとう)の同名小説『天地明察』を映像化。それまで中国から伝えられた暦をそのまま使用していた江戸時代にあって、日本独自の暦を作るという壮大な事業に取り組んだ安井算哲の功績を描いた作品。監督に滝田洋二郎。主演はジャニタレの岡田准一。共演にもジャニタレの横山裕。他、笹野高史や宮崎あおい、珍しいところでプロレスラーの武藤敬司など。

将軍に囲碁を教える囲碁指南役の名家に生まれた安井算哲は、碁方よりも星の観測や算術の問題を解くことに一生懸命な青年であった。ある日時の将軍、徳川家綱の後見人である会津藩主の保科正之は、そんな算哲に日本全国において北極星の角度を計測し、その結果から緯度を決定する『北極出地』の任を命ぜられる。数年後、無事に北極出地を完了して帰京した算哲を次に待っていたのは、800年もの間使われていた中国暦のズレを修正し、新たな日本独自の暦を作るという壮大な事業の総責任者という大役であった。来る日も来る日も星や太陽の運行観測を行い改暦作業に取り組む算哲であったが、一方、暦を権威の象徴と考える朝廷は暦からすれば改暦作業そのものが目障りなことであった…。

基本的には史実に則ったストーリーであり、墨田本所の天体観測所が襲撃されるシーンやサブストーリーである本因坊道策との囲碁打ち、やり過ぎ感を感じる算哲の切腹シーンなど、エンターテイメント的脚色は多少あるが、地球が丸いことや時差という概念すら無かった江戸時代において、肉眼で太陽や月の運行を記録し、日食や月食を科学的に予測する手法がじっくりと正確に描かれていて、史実としても時代劇としても見応え充分。ただ、北極出地にて使用した北極星の角度計測器をピタリと止めるダイヤル部分に21世紀の3/8鉄製ネジがチラリと見えたシーンで少々がっかり。(SS)


製作: 2012年 日本 141分
監督: 滝田洋二郎 / Yojiro TAKITA
原作: 冲方丁『天地明察』 
出演: 岡田准一 / Junichi OKADA, 宮崎あおい / Aoi MIYAZAKI, 佐藤隆太 / Ryuta SATO, 市川猿之助 / Ennosuke ICHIKAWA, 横山裕 / Yu YOKOYAMA笹野高史 / Takashi SASANO, 岸部一徳 / Ittoku KISHIBE, 市川染五郎 / Somegoro KISHIBE, 武藤敬司 / Keiji MUTO, 中井貴一 / Kiichi NAKAI, 松本幸四郎 / Koshiro MATSUMOTO
ジャンル: ヒストリー, ドラマ
鑑賞方法: Blu-ray

ロックアウト / Lock Out



近未来の宇宙を舞台に描くSFサスペンス・アクション。凶悪犯罪者を閉じ込める宇宙刑務所が舞台という、ひと昔前ならインパクトがあっただろうストーリー設定も、はたして今はどうだろう。主演はL.A.コンフィデンシャルのガイ・ピアース。製作はフランス映画界の巨匠、リュック・ベッソン。

西暦2079年。宇宙に実験的に作られた刑務所『MS-1』は『コールドスリープ』と呼ばれる技術を用いて、500人にも及ぶ凶悪な囚人達をまるで冬眠状態のようにして収監しており、厳重な警備体制のもと未だかつて脱獄した者はいない。そんなある日、アメリカ合衆国大統領の娘であるエミリーがMS-1の視察に訪れ、囚人の一人であるハイデルと面談している最中、ハイデルは隙をついてSPの銃を奪い逃亡。中央制御室へと辿り着いたハイデルは全囚人達のコールドスリープを解除した。凶悪な囚人たちが刑務所内に溢れだす最悪の状況の中、合衆国政府は元CIAの敏腕エージェント"スノー"にエミリーの救出を依頼する…。

傍若無人の敏腕エージェントを演じるのは端正なマスクのガイ・ピアース。フランス製作のハリウッド風作品にイギリス生まれのオーストラリア人俳優を主演に迎えたが、結果的にはミスキャスト。悪い男は似合いそうだが、髭をいくら伸ばしたところで粗暴な役は似合わない。それはさておき、ストーリー的には面白く、大量の囚人がひしめく刑務所に単身で飛び込むスノーの活躍、エミリーとの逃亡や掛け合いに加えて、囚人を束ねる極悪兄弟が仕掛ける様々な罠など、テンポの良い展開が続くが、最後の脱出シーンが全てを台無しにしてしまった。宇宙から生身の人間が大気圏突入して地球に落ちてきたのにそりゃねぇよ。『終わり悪ければ全て悪し』とは言えない面白さを内包する作品だけに少々残念。(SS)


製作: 2012年 フランス 95分
監督: スティーブン・セイント・レジャー / Stephen Saint LEGER, ジェームス・マザー / James MATHER
製作: リュック・ベッソン / Luc BESSON
出演: ガイ・ピアース / Guy PEARCE, マギー・グレイス / Maggie GRACE, ヴィンセント・リーガン / Vincent REGAN, ジョセフ・ギルガン / Joseph GILGUN, レニー・ジェームズ / Lennie JAMES, ピーター・ストーメア / Peter STORMARE
ジャンル: SF, サスペンス, アクション
鑑賞方法: Blu-ray

下町ロケット (TV)



慶応大学法学部卒業後に元銀行員の経験を生かしたミステリー『果つる底なき』や半沢直樹シリーズなど、ヒット作を送り出し続ける池井戸潤の小説下町ロケットをWOWOWが映像化。ちなみに池井戸潤はAmazon.co.jpあ行の著者のベストセラー1位である。主演は何故かWOWOWドラマの主演最頻出俳優の三上博史。共演には渡部篤郎、寺島しのぶなど。

日本のモノづくり中小企業の一大集積地である東京都大田区。精密機械の製造を手掛ける佃製作所の2代目社長である佃は、主要取引先である京浜マシナリーから突然取引終了の通知を受ける。当面の運転資金を手当するためメインバンクに融資を申し込むが、業績見通しの不透明さから渋られてしまう。そこに追い打ちをかけるように、精密機械製造大手のナカシマ工業から佃製作所の主要製品に関する特許侵害で訴えられてしまう。メインバンクからの融資が無い状況下で、特許裁判が長期化すれば会社の倒産は避けられない状況まで追い込まれたそんな矢先、日本の重工業界を代表する帝国重工より佃製作所が保有する特許を20億円で買取りたいというオファーが舞い込む。20億という大金は直面する会社存続の危機を乗り切るには十分すぎるほどであり、幹部社員は当然このオファーを受けるものと思っていたが、社長の決断は予想外のものだった…。

個人的にWOWOW製作のドラマには外れがないのだが、本作はラストのエンディングまで手抜きは勿論のこと一切のムダもなく、WOWOWドラマ史上最高傑作と言っても過言ではない完成度 (ドラマWを全部見たわけではないのだが)。三上博史の独特の演技は過去にWOWOWで演じた刑事役よりもこういった熱い男の役が良く似合うし、渡部篤郎の熱いエンジニア役も最高の適役。一方、敵役に升毅、眞島秀和や佐藤二朗という配役も絶妙で、キャスティングの妙が光る。

『手作業は所詮手作業。人間の感覚なんて思ってるほどあてにならない。』モノづくりに関わる者にあるまじき発言に喰い付く、佃の社員達の熱さが観ているこちらにも伝わってくる。大なり小なりエンジニアリングに関わってきた人間ならこのストーリーはたまらないはず。本作を観て泣かない奴はエンジニアに向いていないと断言する。(SS)


製作: 2011年 日本 WOWOW
監督: 鈴木浩介 / Hiroyuki SUZUKI, 水谷俊之 / Toshiyuki
原作: 池井戸潤 / Jun IKEIDO『下町ロケット』
出演: 三上博史 / Hiroshi MIKAMI, 寺島しのぶ / Shinobu TERASHIMA, 渡部篤郎 / Atsuro WATABE, 池内博之 / Hiroyuki IKEUCHI, 綾野剛 / Go AYANO, 升毅 / Takeshi MASU, 田村亮 / Ryo TAMURA, 光石研 / Ken MITSUISHI, 堀部圭亮 / Keisuke HORIBE, 古谷一行 / Ikko FURUYA, 佐藤二朗 / Jiro SATO, 螢雪次朗 / Yukijiro HOTARU, 小木茂光 / Shigemitsu OGI
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

Monday, March 24, 2014

スリーパーズ (映画) / Sleepers (film)



ロレンツォ・カルカテラによる同名小説の映画化作品である本作は、主人公の名が"ロレンツォ・カルカテラ"である事から推察されるとおり、原作者自身が経験した事実に基づく物語であると、作品冒頭でも述べられている。ほんの些細な出来心から起こした悪戯により4人の少年の人生が大きく変えられていくストーリーはまさに『事実は小説よりも奇なり』。主演にジェイソン・パトリック、ブラッド・ピット。共演にはロバート・デ・ニーロにダスティン・ホフマンと豪華な顔ぶれにも注目したい。

ニューヨーク・マンハッタンのある暑い夏の日。ふと目に入ったホットドッグの屋台を巡る些細な悪戯により過失傷害事件を起こしたロレンツォ、マイケル、トミー、ジョンの4人の少年達。送致された少年院で彼らを待っていたのは看守による性的虐待の日々だった。心に深い傷を負った4人の少年たちは、虐待の事実をそれぞれの心の奥底にしまい込むことにした。それから数年後。大人になったジョンとトミーは、ふと立ち寄ったバーで偶然に看守と出会ってしまう。かつて自分たちを虐待した看守を目の前にしたジョンとトミーはある決意をする…。

青春ドラマであり法廷サスペンスでもあるがいずれも中途半端。マンハッタンの少年時代に長い時間を割くもその中身は薄く、少年達の人物像はぼんやりとしたまま。少年院時代についても残虐性が意図的に抑えられて描かれているようで、どっちつかずの展開に少々ジリジリする。さらに、少年院を出た後から大人になるまでの間は完全に省略されているので、観ている側としては大人になった4人の境遇を単純に受け入れるしか無い。やがてドラマは突然に復讐劇へと変わり、山場の法廷劇場を迎えるが、前述したような中途半端感からか否か、俯瞰図でも観ているような感じがして感情移入する向きは全く感じられない。最後の法廷ロジックは浅はかで、最後まで入り込めない作品。(SS)


製作: 1997年 アメリカ 147分
監督: バリー・レヴィンソン / Barry LEVINSON
原作: ロレンツォ・カルカテラ / Lorenzo CARCATERRA『Sleepers』
出演: ジェイソン・パトリック / Jason PATRIC, ブラッド・ピット / Brad PIT, ロン・エルダード / Ron ELDARD, ビリー・クラダップ / Billy CRUDUP, ロバート・デ・ニーロ / Robert De NIRO, ダスティン・ホフマン / Dustin HOFFMAN, ケヴィン・ベーコン / Kevin BACON, ヴィットリオ・ガスマン / Vittorio GASSMAN
ジャンル: サスペンス, ドラマ
鑑賞方法: DVD

Friday, March 21, 2014

震える牛 (TV)



偽装牛肉やBSEなど社会を騒がせた食品問題をテーマとした相場英雄の同名ベストセラー小説震える牛』のWOWOWによる映像化作品。2011年の下町ロケット(ドラマ)などWOWOW+三上博史の組み合わせが多いようだが、本作も同様で主演の刑事に三上博史。WOWOW制作のドラマを観るのは本作が初めてだが、前述の下町ロケット(ドラマ)パンドラなど、いずれの作品も評判が高く、WOWOWのオリジナルドラマに対する印象は高い。共演には、小林薫、小野寺昭、吹石一恵など。

警視庁継続捜査班の田川は、5年前に中野駅前の居酒屋で起きた強盗殺人事件に疑問を抱き再捜査を始めた。事件は覆面姿の犯人が店員から金を奪い、店の奥にいた獣医師や暴力団関係者を殺害したというもので、捜査初期段階では金目当ての外国人による犯行で怨恨の線は無いとされたが、田川の捜査の結果、二人の被害者ともに食肉加工会社のミートボックスに関わっていたという共通点が見つかる。金目当てではなく2人の殺害が犯人の真の目的ではないかと疑いを持った田川。一方、報道記者の鶴田もミートボックスの食品偽装疑惑を追っていた。一見、無関連の殺人事件と食肉偽装事件の裏には、巨大企業の嘘が隠されていた…。

迷宮入りしていた殺人事件の再捜査がいつしか食肉偽装やBSEといった社会的問題に波及する、派手さの少ない硬派な作品に仕上がっているが、警察と報道機関という公私の両面から迫る謎解きの面白さや、最後のトリック的な要素もしっかり織り込んでおり、エンターテイメントとしても優秀。キャスティングも秀逸で、特に悪役の古田新太が持つ天然の気持ち悪さが食品偽装を行う社長の役にピッタリとハマっている。個人的には秀逸なドラマといえばNHKだったが、WOWOWも全く侮れない。(SS)


製作: 2013年 日本 WOWOW
原作: 相場英雄 / Hideo AIBA『震える牛』
監督: 鈴木浩介 / Hiroyuki SUZUKI
出演: 三上博史 / Hiroshi MIKAMI, 吹石一恵 / Kazue FUKIISHI, 小野寺昭 / Akira ONODERA, 平山浩行 / Hiroyuki HIRAYAMA, 小林薫 / Kaoru KOBAYASHI, 木村文乃 / Fumino KIMURA, 古田新太 / Arata FURUTA, 温水洋一 / Yoichi NUKUMIZU, 遠藤要 / Kaname ENDO, 羽場裕一 / Yuichi HABA, 佐野史郎 / Shiro SANO, 竜雷太 / Raita RYU
ジャンル: サスペンス
鑑賞方法: DVD

Monday, March 10, 2014

アルゴ / Argo



アカデミー賞作品賞やゴールデングローブ賞作品賞など2012年の主要アワードを総なめした本作は、1979年にイランで起きたアメリカ大使館人質事件にて、CIAが実際に行った人質救出作戦を元に描いたサスペンス大作。監督兼主演にベン・アフレック。共演にブライアン・クランストン、アラン・アーキンなど。

イラン革命の真っ只中の1979年。イスラム過激派を含む多くの民衆が在イラン・アメリカ大使館を占拠して、52人の職員を人質にとる事件が発生する。しかし、占拠直前に6人のアメリカ人職員が秘かに脱出し、カナダ大使公邸に逃げ込んでいた。既に空港を含めたテヘラン市街地はイスラム過激派の監視下におかれ、6人が見つかるのは時間の問題だった。そこで国務省から協力を求められたCIAの人質奪還専門家であるトニー・メンデスは『アルゴ』という架空の映画をでっち上げ、6人をロケハンのスタッフとして出国させる作戦を立案する。ハリウッドの著名な映画関係者を作戦の協力者として得たトニーは「ニセ映画でも大ヒットを狙うぞ!」と豪語する協力者とともに、『アルゴ』の製作発表を盛大に行うが…。

史実に忠実か否かはさておき、こうした『事実は小説よりも奇なり』を地で行く極秘作戦がアメリカ・カナダの2国の協力のもとに実際に行われたとは驚く限り。イスラム過激派に廻りを囲まれた中での生死をかけた作戦だが、プロフェッショナルとしての自信を持って大胆にかつ慎重に行動するトニーをベン・アフレックが熱演しており、イランから脱出するその瞬間まで観ている者をドキドキさせるストーリー展開が秀逸。一方、厳戒態勢下にあるテヘラン市中を6人と共に歩き回るシーンや、大統領による作戦中止命令、空港におけるクライマックスなど、少々脚色が強い箇所もあるが、そこは必要なエンターテイメントだろうと解釈する。しかし、作品としてはまぁまぁ面白いのだが、各アワードを総取りするに値するか、と問われると、2009年にアカデミー賞で6冠に輝いたハート・ロッカーのように、そこまでの価値を見出だせないのだが。(SS)


製作: 2012年 アメリカ 120分
監督: ベン・アフレック / Ben AFFLECK
製作: ベン・アフレック / Ben AFFLECK, ジョージ・クルーニー / George CLOONEY
出演: ベン・アフレック / Ben AFFLECK, ブライアン・クランストン / Bryan CRANSTON, アラン・アーキン / Alan ARKIN, ジョン・グッドマン / John GOODMAN, ヴィクター・ガーバー / Victor GARBER, テイト・ドノヴァン / tate DONOVAN
ジャンル: サスペンス, ドラマ
鑑賞方法: Blu-ray

プロメテウス / Prometheus

★★☆

エイリアンシリーズのリドリー・スコット監督作品は、人類の起源という壮大なテーマのSFサスペンス。この手のテーマは取扱が難しいと思う。一歩間違うと非科学的な事象を並べるだけの陳腐な作品となってしまうし、かといって現実路線を追うといずれ壁に突き当たる。現実に解明されていない問題だけに、科学的アプローチで生じるさまざまな疑問の隙間にオカルト要素が入り込み、結果としては宗教や様々な神といった創造主に逃げこむのが多いのだが本作は如何に。主演はミレニアムシリーズで全身ピアスにドラゴン・タトゥーの女を演じたノオミ・ラパス。他、シャリーズ・セロンやガイ・ピアースなど。

科学者のエリザベスは古代遺跡にて古代人が天の星を指し示している壁画を発見した。壁画は時代も場所も異なるそれぞれが酷似していることから、それらを地球外知的生命体からの『招待状』と分析した彼女は、巨大企業ウェイランド社が出資した宇宙船プロメテウス号で地球を旅立つ。2年以上の航海を経て未知の惑星にたどり着いたエリザベスは、人工構造物のような建造物を発見し早速調査を開始するが、中で発見したのは地球の科学常識を覆すものだった…。

冒頭の謎の映像が既にネタバレとまでは言わないが、本作の方向性を如実に表している。しかし、この映像を見て一瞬ツリー・オブ・ライフを思い出しゾクッとした。ということで、本作は唐突感と説明不足が満載で一体何を伝えたいのか良く分からない作品。『招待状』と分析された理由の核心は不明だし、2年間の旅でたどり着いた謎の惑星はなんと人工構造物だらけで、地球外生命体の存在は明らかだが、誰もさして驚いていない様子。いきなりエイリアンだとか、主人公の窮地を救う手術カプセルは男性専用なのに結局は手術するだとか、説明不足と唐突な展開を積み重ねるストーリーに観ているこちらの心が疲れてしまう。個人的には、アンドロイドの数々の謎の行動、ウェイランド社のじいさんが問答無用で葬られるシーン、エリザベスの推察を信じて急に正義感を出しつつ命を投げ出した船長とその仲間達、が完全消化不可能の3大シーン。しかし、なんでノオミ・ラパスなのだろう。どうせならシャリーズ・セロンのほうがいいかと思うが。そして最も謎なキャスティングはガイ・ピアース。よっぽどのファンでも無い限り、ガイ・ピアースを劇中で見つけることは不可能だろう。そんな中、冷徹なアンドロイドを演じたマイケル・ファスベンダーの演技が秀逸で強く印象に残る。(SS)


製作: 2012年 アメリカ 124分
監督: リドリー・スコット / Ridley SCOTT
製作: リドリー・スコット / Ridley SCOTT
出演: ノオミ・ラパス / Noomi RAPACE, マイケル・ファスベンダー / Michael FASSBENDER, シャーリーズ・セロン / Charlize THERON, イドリス・エルバ / Idris ELBAガイ・ピアース / Guy PEARCE, ローガン・マーシャル・グリーン / Logan Marshall GREEN
ジャンル: SF, サスペンス, アクション
鑑賞方法: Blu-ray

ブラッド・ワーク (映画) / Blood Work (film)



マイケル・コナリー原作わが心臓の痛み (原題: Blood Work)をクリント・イーストウッドが監督、製作、主演の3役で映像化。コナリー原作の映像化作品ではリンカーン弁護士が近作かと思うが、大ヒット作とは言えないもののアウトローの弁護士が活躍する見応えある作品だったのを思い出す。これに、ここ最近は俳優よりも監督業の方が板についてきた、と言えるほどヒット作を飛ばすイーストウッドとの組合せは非常に楽しみだが、主演こそイーストウッド自身が務めるものの、共演俳優陣はジェフ・ダニエルズくらいが有名所であとは華がない。本作の出来にはあまり関係ないが、予算が足りなかったのだろうか。

FBIの心理分析官だったテリー・マッケイレブは2年前、連続殺人犯のコード・キラーを追跡中に心臓発作で倒れてしまい犯人を捕り逃してしまう。その後、心臓移植手術を行い一命を取り留めたテリーはFBIを退職して隠居生活を送っていたが、そんな彼の前にある日、グラシエラと名乗る女性が突然現れ、自分の姉を殺害した犯人を探してほしいとテリーに依頼する。しかし、FBIを引退し静かな生活を送っていたテリーは彼女の依頼を断るが、彼女はテリーの心臓がその殺された姉のものであると伝える。自分の心臓に絡む事件だけに、テリーは自分なりに事件の調査を行うべく警察へ足を向けたが、更に捜査を進めると意外な事実が発覚する…。

撮影当時で既に72歳という高齢は見た目にも誤魔化せず、心臓病で2年前に引退したFBI捜査官をイーストウッド自身が演じるのは少々無理があるが、本作が持つ落ち着いた雰囲気と急がず無理をしない大人のスピード感で展開するストーリーに何気にマッチしているのは監督としてのイーストウッドの手腕か。所轄の刑事が見つけられなかった事実を次々と発見していくテリーだが、正直なところ"テリーが気付いた"というよりも"所轄刑事の捜査が杜撰だった"というのが正しいところ。所轄刑事を必要以上にバカっぽく描いているのはそんな理由からだろう。こうした設定やテリー自身に絡んでくる色恋話などが、前述した落ち着いた雰囲気とスピード感にマッチしていないのが残念なところ。(SS)


製作: 2002年 アメリカ 110分
原作: マイケル・コナリー / Michael CONNELLY『我が心臓の痛み (原題: Blood Work)』
監督: クリント・イーストウッド / Clint EASTWOOD
製作: クリント・イーストウッド / Clint EASTWOOD
出演: クリント・イーストウッド / Clint EASTWOOD, ジェフ・ダニエルズ / Jeff DANIELS, ワンダ・デ・ヘスース / Wanda De JESUSティナ・リフォード / Tina LIFFORD, ポール・ロドリゲス / Paul RODRIGUEZ, ディラン・ウォルシュ / Dylan WALSH, アンジェリカ・ヒューストン / Angelica HUSTON
ジャンル: サスペンス, ドラマ
鑑賞方法: Blu-ray

Friday, March 7, 2014

脳男 (映画)



江戸川乱歩賞を受賞した首藤瓜於による脳男の映画化作品。原作は未読ながら興味を惹かれる造語のタイトルが気になっていた。監督は瀧本智行。主演はジャニタレの生田斗真。個人的にジャニタレは余り好きではないのだが、この方はジャニーズにしては珍しく、アイドルというよりも俳優風情が強い感じがするのは自分だけだろうか。共演は江口洋介、松雪泰子、二階堂ふみなど。

刑事の茶屋は無差別連続爆破事件の容疑者が潜伏していると思われる倉庫へ踏み込んだものの、そこに居たのは身元不明の男一人だけで、彼以外の者を取り逃がしてしまう。連続爆破事件の共犯者と思われるこの男は、名を鈴木一郎と名乗ったが、その犯行の異常性から精神鑑定を受けることになった。しかし、鑑定を進めるにつれ、一切の感情を表へ出さない鈴木に興味をもった鑑定医は彼の過去を調べ始めた。すると、彼は天才的な頭脳と驚異的な肉体を併せ持ちながら、呼吸以外の自発的行動を取ることが全く出来ず、『脳男』と呼ばれていたことが分かった…。

猟奇的な連続殺人犯の犯行動機がよく分からない。共犯者も含めてその辺に説明不足と曖昧さがあるが、別に主人公ではないので、省略されててもストーリーの核にはあまり影響ないのかもしれない。映像的には多量の火薬を使った爆破シーンの映像処理が秀逸で日本映画には珍しい。にも関わらず、登山のシーンにおける映像処理は非常にチープで興醒めする。こういう細かいところの品質が全体印象に与える影響は小さくないと思う。脳男の存在には無理を感じないしリアル感も十分あるが、幾ら無痛症だとしてもあんなに派手に車に轢かれたら幾らなんでも死んでしまうだろう。最後の山場にああいうアンリアル感満載のシーンを入れ込むあたりが本作の脚本レベルを示しているが、勧善懲悪では片付けられない脳男の存在が圧倒的にユニークで、原作の質の高さに救われている。(SS)


製作: 2013年 日本 125分
原作: 首藤瓜於 / Urio SHUDO『脳男』
監督: 瀧本智行 / Tomoyuki TAKIMOTO
出演: 生田斗真 / Toma IKUTA, 松雪泰子 / Tomoko MATSUYUKI, 江口洋介 / Yosuke EGUCHI, 二階堂ふみ / Fumi NIKAIDO, 太田莉菜 / Rina OTA, 染谷将太 / Shota SOMEYA, 勝矢 / KAtsuya, 甲本雅裕 / Masahiro KOMOTO光石研 / Ken MITSUISHI小澤征悦 / Seietsu OZAWA, 石橋蓮司 / Renji ISHIBASHI, 夏八木勲 / Isao NATSUYAGI
ジャンル: クライム, サスペンス, アクション
鑑賞方法: DVD

Tuesday, March 4, 2014

ストロベリーナイト - アフター・ザ・インビジブルレイン (TV)



誉田哲也の姫川玲子シリーズ作品「シンメトリー」および「感染遊戯」より、5本の短編を原作としたスペシャルドラマ。タイムライン的にはタイトル通りで、劇場版のストロベリーナイトのその後、姫川はんの刑事達のそれぞれを描いたショートドラマ集。姫川が主役の『アンダーカヴァー』、菊川の『東京』、葉山の『沈黙怨嗟 / サイレントマ―ダー』、井岡と日下の『左だけ見た場合』と勝俣の『推定有罪 / プロバブリィギルティ』の5話で構成されている。

それぞれのあらすじはここでは割愛するが、相互関連は無く葉山と勝俣のストーリーが薄く交差するぐらいで、基本的には登場人物が変わらないだけの全く別物のドラマとなっている。ドラマのパイロット版から連続ドラマ、そして映画版と見てきたが、映画版のラストにおける姫川班の解散は少々唐突だったし、下世話なところでは姫川と菊川の行く末も気になるところ。しかし、そうしたファンの気持をフォローアップする意図は本作は全く織り込まれていない。

ショートドラマだけに、各話とも短くポンポンと進んでいくが、そんな中でも菊川が主人公の『東京』は短いながらも、濃い人間ドラマを詰め込んだ秀逸作。かと思えば、姫川の『アンダーカヴァー』は、一体何をやりたかったのか良く分からない作品で、ドラマ品質のばらつきが大きい。『ストロベリーナイト』シリーズ次作までの繋ぎならまだしも、仮にシリーズ最終作だとしたら少々寂しい感じがした。(SS)

製作: 2012年 日本 127分
監督: 佐藤祐市 / Yuichi SATO
原作: 誉田哲也 / Tetsuya HONDA「インビジブルレイン」
出演: 竹内結子 / Yuko TAKEUCHI, 西島秀俊 / Hicetoshi NISHIJIMA小出恵介 / Keisuke KOIDE遠藤憲一 / Kenichi WATANABE, 生瀬勝久 / Katsuhisa NAMASE, 武田鉄矢 / Tetsuya TAKEDA, 國村隼 / Jun KUNIMURA, キムラ緑子 / Midoriko KIMURA, 竜雷太 / Raita RYU, 光石研 / Ken MITSUISHI, 大高洋夫 / Hiroo OTAKA, 入江雅人 / Masato IRIE, 杉本哲太 / Tetta SUGIMOTO
ジャンル: TV, サスペンス
鑑賞方法: DVD

Thursday, February 27, 2014

ジャンゴ 繋がれざる者 / Django Unchained



イングロリアス・バスターズ以来となるクエンティン・タランティーノ監督作品は、アメリカ南北戦争直前の19世紀半ばを時代背景に黒人奴隷制度をタランティーノ流に描いたバイオレンス西部劇。主演にジェイミー・フォックス、共演にはイングロリアス・バスターズに引き続きタランティーノ作品連続出演となる、クリストフ・ヴァルツや常連のサミュエル・L・ジャクソン、レオナルド・ディカプリオなど。

南北戦争直前のアメリカ南部。賞金稼ぎのドクター・キング・シュルツの当面のターゲットはお尋ね者のブリトル3兄弟だが、その顔を知る黒人奴隷のジャンゴを見つけると、シュルツは彼の鎖を解いてブリトル兄弟追跡へと共に出発した。やがてある農場で3兄弟を見事に始末したシュルツはジャンゴの腕を認め、賞金稼ぎのパートナーにすることに。そんなある日、シュルツはジャンゴから妻がいて生き別れになったことを聞かされる。奴隷市場での取引記録を調べた結果、妻はミシシッピーのキャンディ・ランドにいることが判明。シュルツはジャンゴと共にキャンディー・ランドから妻を助け出すことを決意する…。

タランティーノ作品ではもはや驚かないが、とにかく序盤から強烈なバイオレンスシーンが炸裂。血糊というか血の吹き出し方がとにかく大袈裟でキル・ビルを思い出す。加えて、歌謡曲っぽいキャッチなメロディーの使い方も今までのタランティーノ作品同様で期待を裏切らない。足に鎖を巻く黒人奴隷や生死をかけて強制的に闘わされる格闘奴隷の描き方など全く手加減なく、見ているこちらも心が痛くなるが、こうしたところも容赦なく描いているのが本作のいいところで、中途半端では面白くなかったはず。ジェイミー・フォックスはもちろん、共演のレオナルド・ディカプリオ、クリストフ・ヴァルツおよびサミュエル・L・ジャクソンの演技が秀逸で、特にサミュエル・L・ジャクソン演じる黒人の皮を被った白人主義者の執事は悪ノリが過ぎて憎悪を覚えるほど。黒人奴隷制度というアメリカの黒い歴史を取り上げた作品でありながら徹底して勧善懲悪。展開に少々強引さを感じつつも、最後は気分スッキリという典型的娯楽映画で、2時間半を超える作品ながら全くそれを感じさせないスピード感とストーリー展開に脱帽。(SS)


製作: 2012年 アメリカ 165分
監督: クエンティン・タランティーノ / Quentin TARANTINO
出演: ジェイミー・フォックス / Jamie FOXX, クリストフ・ヴァルツ / Christph WALTZ, レオナルド・ディカプリオ / Leonardo DiCAPRIO,  ケリー・ワシントン / Kelly WASHINGTON, サミュエル・L・ジャクソン / Samuel L. JACKSON
ジャンル: アクション, ヒストリー, 西部劇, R15+
鑑賞方法: Blu-ray

Monday, February 24, 2014

ナイルの宝石 / The Jewel of the Nile



前作ロマンシング・ストーン 秘宝の谷の続編はシリーズ第2作目。監督はルイス・ティーグ、制作兼主演にマイケル・ダグラスとヒロインのキャスリーン・ターナーや共演のダニー・デヴィートも前作に引続きで変わらず。

前作の冒険で手に入れた大金を元にジャックはついに夢の豪華ヨットを手にし、ジョーンと共に世界一周の旅に出た。ある日、寄港した街で催されたパーティーに出席したジョーンは、アフリカのある国の独裁者オマーから彼自身の伝記の執筆依頼を受ける。楽しいが刺激の無いヨットの旅に飽き始めていたジョーンはその話を受けて単身アフリカへ旅立つ。そんな時、ジャックのヨットが何者かによって爆破されてしまう。命は助かったジャックだが、居合わせたタラクという男によってオマーの仕業と知ったジャックもジョーンの後を追うようにアフリカへと向かう…。

前作同様にストーリーの設定や展開がとにかくユルく、アドベンチャーとコメディーの隙間を縫うかのような作品だ。また、前作は宝石を追うアドベンチャーだったが、本作はお宝ではなくジャックがジョーン救う旅ための冒険なので、前回にも増してロマンス色が強め。シリーズとしては軸がブレブレで別の作品のようになってしまった。その為か否か、アクションも貧乏臭く、特に物語中盤のヌビア族との出会いとジョーンを巡る戦いのくだりは、単なる尺稼ぎのための小話という感じで白けてしまった。(SS)

製作: 1986年 アメリカ 106分
監督: ルイス・ティーグ / Lewis TEAGUE
製作: マイケル・ダグラス / Michael DOUGLAS
出演: キャスリーン・ターナー / Cathleen TURNER, マイケル・ダグラス / Michael DOUGLASダニー・デヴィート / Danny DeVITO
ジャンル: アドベンチャー, アクション
鑑賞方法: Blu-ray

Sunday, February 23, 2014

ロマンシング・ストーン 秘宝の谷 / Romancing the Stone

★★

宝探し系ジャングル・アドベンチャー作品の草分けといえば1981年に公開されたインディー・ジョーンズ・シリーズが思い出されるが、こちらも似たような路線の映画か。インディーよりは少々大人向けだが、ハチャメチャな展開はハリウッド娯楽映画の面目躍如。監督はジェイムズキャメロン。主演兼製作にマイケルダグラス。ヒロインにはキャスリーンターナー。

人気女流小説家のジョーンの元へコロンビアからの郵便物が届けられる。郵便物の中身は宝の地図だが、その地図を巡ってジョーンの姉が誘拐されてしまう。地図と引き換えに姉の命を助けるためジョーンはコロンビアへと向かうが、地図を狙う悪党から命を狙われるハメになり…。

それにしても『秘宝の谷』とは何とも安易なネーミング。そもそも秘宝があったのは谷ではなかったし。それはさておき、主人公はジャングルの中で濁流に飲み込まれたり、今にも崩れ落ちそうな吊り橋を渡ったり、ガンアクションからカーアクションとこの手の映画で考えられるシーンがテンコ盛りだが、何となく緊張感が無いユルい作品。インディー・ジョーンズは息つく暇も無いジェット・コースター・ムービーだったが、それとは趣の異なる心地良いテンポのアクション・アドベンチャーに仕上がっており、安心して見られる。(SS)


製作: 1984年 アメリカ 106分
監督: ロバート・ゼメキス / Robert ZEMECKIS
製作: マイケル・ダグラス / Michael DOUGLAS
出演: キャスリーン・ターナー / Cathleen TURNER, マイケル・ダグラス / Michael DOUGLASダニー・デヴィート / Danny DeVITO
ジャンル: アドベンチャー, アクション
鑑賞方法: Blu-ray

悪の教典 (映画)



貴志祐介の同名小説の映画化作品。ハーバード大卒のイケメン人気高校教師でありながらその内面はサイコキラーという男が主人公のホラー・サスペンスである。監督は三池崇史、主演に伊藤英明。なお、原作は上下巻で850頁超という大作なので、この手のサイコ・サスペンス小説にありがちな、殺人者の過去や深層心理を深堀りした記述が多いかと推測するも、原作は未読である。

都内の私立高校に勤める蓮実聖司はハーバード大を卒業した天才でイケメンで有能である生徒の人気者だが、その実態は冷酷なサイコキラーであり、蓮実にとって有害となる人間は躊躇なく殺害される。ある時、蓮実に好意を持っている女子生徒の安原とキスをしているところをクラスの不良生徒に見られてしまう。蓮実は合理的解決方法として不良生徒を殺害するが、その男子生徒の携帯電話を持っていることを安原が知ったことから、学校での飛び降り自殺に見せかけ安原を殺害する。しかし、その現場に女子生徒が偶然居合わせてしまい、しかもその日は学園祭の準備でクラスの生徒全員が学校に残っていた。窮地を脱するために、蓮実は校内の残る者全員の殺害を選択した…。

サイコキラーが手にするショットガンが、全く躊躇なく、そして外すことなく一発で生徒を殺害していく。何しろこの殺戮シーンが後半の1時間近くを占めるので、その手が好きな向きにはおあつらえ向きと言える。しかし、サイコキラーである蓮実の深層心理に関しては深く描かれておらず、殺害目的があやふやなままであり、結果的にはこのことが殺害シーンを単調なホラー映像と成り下げている。そういう意味ではカラスを無意味に殺すシーンが多少のヒントになりそうだが、個人的にはそのシーンに矛盾を感じる。また、天才的殺人者という設定でありながら、最後の殺戮を他人に擦り付けようとするロジックは余りにも幼稚で破錠しているし、ラストにおける殺害された者の生存を伺わせるシーンに至ってはもはや本当にホラー。最後のコマは『to be continued』なのだが、続編ありという意味では無いと思う。(SS)


製作: 2012年 日本 129分
原作: 貴志祐介 / Yusuke KISHI 『悪の教典』
監督: 三池崇史 / Takashi MIIKE
出演: 伊藤英明 / Hideaki ITO, 二階堂ふみ / Fumi NIKAIDO, 染谷将太 / Shodta SOMEYA, 林遣都 / Kento HAYASHI, 山田孝之 / TAkayuki YAMADA, 平岳大 / Takehiro HIRA, 吹越満 / Mitsuru FUKIKOSHI, 小島聖 / Hijiri KOJIMA
ジャンル: サスペンス, ホラー, R15+
鑑賞方法: Blu-ray

Friday, February 21, 2014

ハゲタカ (映画)

★☆

NHKの制作の大ヒットドラマ『ハゲタカ』の映画版作品である本作は、TV版と同様に、真山仁の経済小説ハゲタカバイアウトおよびレッドゾーンの3作品を原作とした経済ドラマである。TV版が非常に秀逸な作品であっただけに期待が高まるが、同じNHK制作の『外事警察』はTV版に比べて映画版の方がイマイチだっただけに本作はどうだろうか。主演は引続き大森南朋と柴田恭兵。共演に玉山鉄二。栗山千明や松田龍平もTV版に引続き出演している。

かつて日本を買い叩く「ハゲタカファンド」の辣腕マネジャーとして一世を風靡した鷲津は、一向に変わることのない閉鎖的な日本市場に見切りをつけ、海外で生活を送っていた。そんな時、日本を代表する自動車メーカーであるアカマ自動車の役員として迎えられていた芝野が鷲津の元を訪れ、アカマ自動車の救済を求めてきた。アカマ自動車は中国政府系ファンドのブルー・ウォール・パートナーズによる買収の危機にさらされていた。芝野の依頼を一度は断った鷲津だが、ブルー・ウォール・パートナーズの代表、劉一華の記者会見をみたのち、アカマ自動車からの正式な要請に答える形で「ホワイトナイト」としてブルー・ウォール・パートナーズと対峙することを決意する…。

映画版ということで、TV版を見ていなくても掴めるようなストーリー展開になっているのは間違いない。また、本作のメインストーリーは鷲巣と劉一華との対峙であり、芝野やアナウンサーの三島は脇に添えられた役どころと言っても過言では無いだろうが、TV版を見ていない人にはこの3者の過去の関係についての前知識が全く無いため、はてなマークが頭の中にグルグル回ったまま本作を鑑賞し続けたに違いない。

TV版では良く練られたファンドのスキームを充分に堪能することが出来たが、本作では所謂『リーマン・ショック』の翌年に公開された作品のため、どうしてもリアル経済に倣ったストーリーになってしまい、特に鷲津が劉一華を潰すためのロジックが稚拙に感じられた。そういう意味では、松田龍平演じる旅館の若旦那をTV版に続いて出演させるべき理由が見当たらないし、根本的なところでは、鷲津がアカマ自動車のホワイトナイトを引き受ける明確な動機が不明確。劉一華の最後も意味不明で、あらゆる意味で映画版はTV版を超えることが出来なかったと感じた。(SS)


製作: 2009年 134分 日本
原作: 真山仁 / Jin MAYAMA 「ハゲタカ」「バイアウト」「レッドアウト」
監督: 大友啓史 / Keishi OTOMO
出演: 大森南朋 / Nao OMORI, 柴田恭兵 / Kyohei SHIBATA, 松田龍平 / Ryuhei MATSUDA, 栗山千明 / Chiaki KURIYAMA, 嶋田久作 / Kyusaku SHIMADA, 志賀廣太郎 / Kotarou SHIGA, 中尾彬 / Akira NAKAO, 玉山鉄二 / Tetsuji TAMAYAMA, 高良健吾 Kengo KORA遠藤憲一 / Kenichi ENDO
ジャンル: サスペンス 
鑑賞方法: DVD

Tuesday, February 18, 2014

ストロベリーナイト シーズン1 (TV) #2 / Strawberry Night Season 1 (TV) #2



前回に引続き、第6話から最終話まで。

第6話「感染遊戯」
★★☆ 製薬会社勤務のエリート社員が自宅前でメッタ刺しに殺害された。被害者の着衣のボタンから犯人のものとおぼしき指紋が検出された一方、自宅の呼び鈴からは指紋が見つからなかった。姫川は犯人の狙いを被害者ではなく、旧厚生官僚として薬害感染問題に深く関与していた被害者の父親だったのではないかと睨み捜査を開始する…。

1話完結。捜査員の葉山の心の葛藤、姫川の勘働き、菊川の後輩に対する思いなど、姫川班の捜査官の人間ドラマがバランスよく描かれている。協働する所轄の捜査官に加藤あいを配して、それなりに役割を与えているのだがその必要はあったのか疑問。

第7 - 8話「悪しき実」
★★★ 右半身だけ死後硬直が早く解けた男性の変死体が発見された。通報者は恋人の女性と思わるが行方不明。男性のアパートからは13個の木片と私設私書箱の鍵が見つかる。手掛かりが乏しいなか、姫川は私設私書箱の中から多くの暴力団関係者の写真を見つけ、さらに全員が殺害されていることが判明する…。

右半身と左半身で死後硬直具合が異なるという変死体、ツカミの殺害シーンと行方をくらました被害者の恋人。姫川の推理を軸としたストーリー展開が素晴らしく、不幸な女性を演じる木村多江の好演が光る。謎解きと人間ドラマのバランスが秀逸な良作だが、一方で13人の暴力団関係者が殺害された事件の真相が置き去りになっているのが、心に引っ掛かる。

第9 - 第11話「ソウルケイジ」
★★★ 多摩川の土手で血まみれの左手首が発見された。被害者の手首は大工の高岡のものであり、高岡の工場から致死量を超える血液が発見されたことを考慮して死体損壊遺棄事件として捜査が進められた。一方、高岡の過去を調べていくと、高岡は従業員の三島を他人でありながら我が子のように育てていたこと、そして三島の父親はかつて高岡が働いていた工事現場で転落死していた事を突き止める…。

初の3話構成作品。血まみれの手首、高岡の過去と三島との関係など、二転三転する展開はスピード感があり、3話に分けられていても長くは感じない。ただ、登場人物が多くてかつ裏があり複雑なので名前を覚えないと面白さが半減するかもしれない。最終話らしい面白さだが、明らかになった真相が少々腑に落ちないのは自分だけだろうか。


刑事モノとして「謎解きの面白さ」を素直に味わえる作品。原作そのものが持つ面白さとそれを削ぐこと無く脚色されたストーリー、姫川班およびそれを取り巻く癖のある捜査官達との人間群像と秀逸な配役、テレビでよく表現出来たなと思う凄惨な映像の処理、それぞれのバランスが秀逸で、久々にフジテレビ謹製ドラマの面白さを充分に堪能出来た。全11話は「シーズン1」という体でリリースされているが、恐らくシーズン2などは無さそうである。ただ、原作はまだ続いているようなので、「踊る―」シリーズのようなフジテレ看板作品に育てるべく、シーズン2の制作を期待したい。(SS)


製作: 2012年 日本
演出: 佐藤祐市 / Yuichi SATO, 石川淳一 / Junichi ISHIKAWA 
原作: 誉田哲也 / Tetsuya HONDA「シンメトリー」「感染遊戯」「ソウルケイジ」 
出演: 竹内結子 / Yuko TAKEUCHI, 西島秀俊 / Hicetoshi NISHIJIMA小出恵介 / Keisuke KOIDE宇梶剛士 / Tsuyoshi UKAJI, 丸山隆平 / Ryuhei MARUYAMA, 渡辺いっけい / Ikkei WATANABE, 遠藤憲一 / Kenichi WATANABE, 高嶋政宏 / Masahiro TAKASHIMA, 生瀬勝久 / Katsuhisa NAMASE, 武田鉄矢 / Tetsuya TAKEDA, 滝藤賢一 / Kenichi TAKITO, 津川雅彦 / MasahikoTSUGAWA, 北見敏之 / Toshiyuki KITAMI, 杉本哲太 / Tetta SUGIMOTO, 滝藤賢一 / Kenichi TAKITO, 小木茂光 / Shigemitsu OGI, 石黒賢 / Ken ISHIGURO, 加藤あい / Ai KATO, 木村多江 / Tae KIMURA, 杉本哲太 / Tetta SUGIMOTO, 濱田岳 / Gaku HAMADA
ジャンル: サスペンス
鑑賞方法: DVD
エピソード: 
 第1話 「シンメトリー」
 第2話 「右では殴らない」
 第3話 「右では殴らない2」
 第4話 「過ぎた正義」
 第5話 「選ばれた殺意~過ぎた正義」
 第6話 「感染遊戯」
 第7話 「悪しき実」
 第8話 「悪しき実~嗚咽」
 第9話 「ソウルケイジ」
 第10話 「檻に閉じ込められた親子~ソウルケイジ」
 第11話 「こんなにも人を愛した殺人者がいただろうか~ソウルケイジ」

ストロベリーナイト シーズン1 (TV) #1 / Strawberry Night Season 1 (TV) #1



誉田哲也の姫川玲子シリーズ3作品「シンメトリー」、「感染遊戯」および「ソウルケイジ」を原作としたフジテレビ制作の連続TVドラマシリーズ。原作とは異なり、姫川玲子シリーズの映像化作品は全て「ストロベリーナイト」というタイトルが付けられ、それぞれの原作タイトルとは異なる。主演は竹内結子。「パイロット版」と称する初回作のスペシャルドラマ版の共演俳優に加えて、新たに小出恵介や丸山隆平といった新メンバーが加わっている。一話完結となっているのは「シンメトリー」と「感染遊戯」のみで、他のエピソードは複数回の放送で完結する。


第1話「シンメトリー」
★★★ 100人以上の死傷者を出した電車と自動車の接触事故から10年後の同じ線路上で、体の中心から縦に真っ二つとなった死体が発見される。被害者は列車事故を引き起こした男だった。自殺と他殺の両面で捜査が進められる中、事故当時、ある女子高生を必死に助けようとした駅員がいたことを姫川は知る…。

初回放送に相応しい完成度の高い作品。ここれほどの内容が小一時間ほどのテレビドラマに収められた事に驚く。火サスや土曜ワイドは見習ってほしい。縦に真っ二つになった死体や列車事故のシーンなど、テレビ作品としては描くのが難しい凄惨なシーンを非常に上手く処理をしている。

第2 〜 3話「右では殴らない」
★★ 劇症肝炎で亡くなったと思われる男性3人を司法解剖した結果、いずれの死体からも違法薬物が発見された。薬物を利用した連続殺人事件の可能性を疑った姫川は薬物テロも視野に入れて捜査を開始、被害者はいずれもオンラインゲームサイトの会員である事が判明。ゲーム内で被害者3人に共通する人物に関する調査を進めると、思いもよらない人物に突き当たる…。

2話連続作品。一見何の関係も無さそうな被害者の死体に共通する一点を突破口として、姫川が次々と紡ぎだす謎解きは素直に面白い。ラストは少々やり過ぎでありリアル感が削がれるが、観ている方としてはすっきり。ただ、同じすっきりさせるのなら、犯人の最終的な扱いの方こそ明らかにしてほしかった。

第4 〜 5話「過ぎた正義」
★☆☆ 強姦殺人などの重大な罪を犯したにも関わらず、少年法や精神鑑定結果により短期間の刑期で出所していた3人の男が立て続けに謎の死を遂げた。3つの事件内容や関係者に一切の共通点が無いなかで、姫川はこれら全ての犯人が警視庁の倉田捜査官に逮捕されていた事に気付く…。

2話連続作品。謎解きというよりも、登場人物の心の葛藤を描くことに重きを置いた展開であることは重々承知だが、3人の男の死の謎こそが姫川の初動のきっかけであるにも関わらず、結末に至るまでその真相解明が欠如しているのが全く腑に落ちない。冗長な展開でスピード感に乏しく一話に纏めた方が良かったかもしれない。



製作: 2012年 日本
演出: 佐藤祐市 / Yuichi SATO, 石川淳一 / Junichi ISHIKAWA 
原作: 誉田哲也 / Tetsuya HONDA「シンメトリー」「感染遊戯」「ソウルケイジ」 
出演: 竹内結子 / Yuko TAKEUCHI, 西島秀俊 / Hicetoshi NISHIJIMA小出恵介 / Keisuke KOIDE宇梶剛士 / Tsuyoshi UKAJI, 丸山隆平 / Ryuhei MARUYAMA, 渡辺いっけい / Ikkei WATANABE, 遠藤憲一 / Kenichi WATANABE, 高嶋政宏 / Masahiro TAKASHIMA, 生瀬勝久 / Katsuhisa NAMASE, 武田鉄矢 / Tetsuya TAKEDA, 滝藤賢一 / Kenichi TAKITO, 津川雅彦 / MasahikoTSUGAWA, 北見敏之 / Toshiyuki KITAMI, 杉本哲太 / Tetta SUGIMOTO, 滝藤賢一 / Kenichi TAKITO, 小木茂光 / Shigemitsu OGI, 石黒賢 / Ken ISHIGURO, 加藤あい / Ai KATO, 木村多江 / Tae KIMURA, 杉本哲太 / Tetta SUGIMOTO, 濱田岳 / Gaku HAMADA
ジャンル: サスペンス
鑑賞方法: DVD
エピソード: 
 第1話 「シンメトリー」
 第2話 「右では殴らない」
 第3話 「右では殴らない2」
 第4話 「過ぎた正義」
 第5話 「選ばれた殺意~過ぎた正義」
 第6話 「感染遊戯」
 第7話 「悪しき実」
 第8話 「悪しき実~嗚咽」
 第9話 「ソウルケイジ」
 第10話 「檻に閉じ込められた親子~ソウルケイジ」
 第11話 「こんなにも人を愛した殺人者がいただろうか~ソウルケイジ」

Mr & Mrs スミス / Mr & Mrs Smith



ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーが初共演。「殺し屋」という本業を互いに隠しつつ結婚した夫婦の闘いと愛の結末を描いた、アクション・コメディ作品。監督は「ジェイソン・ボーン・シリーズ」のダグ・リーマン。

コロンビアで知り合ったジョン・スミスとジェーンは恋に落ちて結婚。ジョンは建設工事関係でジェーンはITエンジニアと、互いに仕事に忙しい日々を送りつつ、ニューヨークでごく普通に暮らしているが、実は二人の本業は「殺し屋」。互いの秘密を隠しつつ偽りの結婚生活を送っていた。そんなある日、ジョンの元へ新たな殺害の依頼が舞い込む。標的はベンジャミン・ダンツ。FBIによる移送中に殺害をしてくれとの注文付きだった。一方、ジェーンの元にも新たな殺しの依頼が。その標的はベンジャミン・ダンツだった…。

ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーの共演ということで、とにかく画面に華がある。そして普通に見える夫婦が実は互いに殺し屋というツカミの良い脚本もあって、見始めこそワクワク感があったのだが、それも最初だけ。コメディーに強く振ったストーリーにも関わらず全く笑えないし、かと言ってアクションシーンも火薬量が多いだけで完全にリアル感が欠如しているためか、観ている者を白けさせてしまう。どっちつかずの中途半端な作品になってしまい、せっかくの豪華な俳優陣が全く活きていない寂しい作品になってしまった。ただ、二人のプロモーション映像と見間違うようなスタイリッシュなシーンが多い構成なので、ブラピ&アンジー好きの向きにはお勧め。(SS)


製作: 2005年 アメリカ 118分
監督: ダグ・リーマン / Doug LIMAN
出演: ブラッド・ピット / Brad PITT, アンジェリーナ・ジョリー / Angelina JOLIE
ジャンル: アクション, ロマンス, コメディー
鑑賞方法: Blu-ray

Tuesday, February 11, 2014

ダブルフェイス

★☆


2002年の大ヒット香港ノワールインファナル・アフェア」は、既にハリウッドでディパーテッドとしてリメイクされているが、本作はその日本版リメイク作品。TBSとWOWOWによる共同制作ドラマなので、正確には「映画」ではない。ストーリーは前半の「潜入捜査編」とそれに続く「偽装警察編」の2部構成となっている。

舞台は神奈川県横浜市。神奈川県警の森屋は地元の暴力団組織である織田組にて潜入捜査を行う捜査官。長期にわたる潜入捜査に苦しむ森屋だが、織田組を壊滅させるまでは潜入捜査は終わらないと上司から言明させられていた。そしてついに森屋は織田組による麻薬取引の現場と日時を掴む事に成功。県警のよる一掃作戦が実行されることになったが、取引現場を押さえる寸前のところで捜査情報が漏れたため、作戦は失敗する。織田組もまた県警内部に構成員を潜入捜査官として送り込んでいたのだった…。

インファナル・アフェアおよびディパーテッドは、既に鑑賞済みなのでストーリーは理解済みだったが、ディパーテッド同様に原作をなぞるかのような展開で、もう少し大胆なアレンジを加えても良いんじゃないかなとも思うが、オリジナルの完成度が高過ぎてもはや手が出せないのかもしれない。潜入捜査官としての苦悩や心の葛藤を醸しだす西島秀俊の好演技が光る。(SS)


製作: 2012年 日本 WOWOW TBS
監督: 羽住英一郎 / Eiivhiro HAZUMI
出演: 西島秀俊 / Hidetoshi NISHIJIMA, 香川照之 / Teruyuk KAGAWA, 角野卓造 / Takuzo KAKUNO, 小日向文世 / Fumiyo KOHINATA, 伊藤かずえ / Kazue ITO, 伊藤淳史 / Atsushi ITO, 平田満 / Mitsuru HIRATA, 堀部圭亮 / Keisuke HORIBE, 高橋光臣 / Mitsuomi TAKAHASHI, 和久井映見 / Hidemi WAKUI, 蒼井優 / Yu AOI, 田中要次 / Youji TANAKA, 北見敏之 / Toshiyuki KITAMI
ジャンル: サスペンス, アクション
鑑賞方法: DVD

Wednesday, February 5, 2014

藁の楯 (映画)



木内一裕の同名小説を三池崇史監督で映画化した作品。原作者の「木内一裕」と言われても?だが、「きうちかずひろ」と書かれて思い出した人は多いかもしれない。本作はビー・バップ・ハイスクールで有名なきうちかずひろの小説家デビュー作である。主演に大沢たかお、共演に松嶋菜々子、藤原竜也など。

「この男を殺して下さい。名前・清丸国秀。お礼として10億円お支払いします。」という衝撃的な全面広告が主要新聞に一斉に掲載された。広告掲載主は政財界の大物として知られていた蜷川。7歳になる蜷川の孫娘を暴行の上に殺害遺棄した清丸の首に10億円もの賞金が掛けられたのだ。この日から金に目のくらんだ日本中の一般市民から命を狙われる羽目になった清丸は危うく殺されかけ、逃亡潜伏先の福岡で自ら警察に出頭した。警視庁は清丸の身柄を送検すべく、銘苅、白岩のSP2名と捜査一課の刑事を護衛に付けた。だが、懸賞金に目が眩み清丸の命を狙わんとする者はもはや警察内部にまでも広がっていた…。

ストロベリーナイトなど、しばらく刑事モノ作品の鑑賞が続いていたので、いささか食傷気味ではあったが、そんな気持ちはオープニングのツカミである、件の全面新聞広告とその後のスピード感のある展開により軽く吹き飛ばされた。原作小説が持つオリジナリティ溢れるストーリーは斬新で非常に面白い。それだけに、後半に向けて気持ちが高まるも、突如現れた個人タクシーあたりから急速に違和感を感じ始める。そして、その後のプロセスを一切省いてラストの警視庁前へとなだれ込む乱暴な展開。これまで保持してきたリアリティーの糸もぷっつりと切れ、まさに「尻すぼみ」という言葉が相応しい作品。また、超憎たらしい悪役を見事に演じきった藤原竜也の演技が秀逸な一方、岸谷五朗の舞台ばりの大げさな動きがどうしても捜査一課の敏腕刑事には見えず少々残念。(SS)


製作: 2013年 日本 125分
監督: 三池崇史 / Takashi MIIKE
原作:木内一裕  / Kazuhiro KIUCHI「藁の楯」 
出演: 大沢たかお / Takao OSAWA, 松嶋菜々子 / Nanako MATSUSHIMA岸谷五朗 / Goro KISHITANI伊武雅刀 / Masatou IBU永山絢斗 / Kento NAGAYAMA藤原竜也 / Tatsuya FUJIWARA,  山崎努 / Tsutomu YAMAZAKI本田博太郎 / Hakutaro HONDA長江健次 / Kenji NAGAE四方堂亘 / Wataru SHIHUDO, 山口祥行 / Yoshiyuki YAMAGUCHI本宮泰風 / Yasukaza MOTOMIYA坂田雅彦 / Masahiko SAKATA中野裕斗 / Yuto NAKANO勝矢 / Katsuya
ジャンル: サスペンス, アクション
鑑賞方法: Blu-ray

Monday, February 3, 2014

ストロベリーナイト (TV) / Strawberry Night (TV)



誉田哲也原作の姫川玲子シリーズ第1作目「ストロベリーナイト」の初映像化作品はフジテレビ製作の2時間ドラマ。本作は「パイロット版」として2010年に制作され、2012年には連続ドラマ化と映画化もされた。主演に竹内結子でフジテレビ制作と、少々薄っぺらい刑事ドラマを想像するのだが、その期待は良い意味で完全に裏切られる。

女性でノンキャリアにも関わらず警視庁捜査一課十係主任に異例のスピード出世を果たした姫川玲子。そんな彼女のもとへブルーシートに包まれた男の死体が公園の溜め池のほとりで発見されたと一報が入った。発見された死体は丁寧に包まれていた一方、人目につきやすい公園に無造作に置かれたいた。現場の状況に違和感を感じる姫川は、以前監察医から報告を受けた全く別の事件である「脳の溶けた死体」とのかすかな繋がりを感じていた…。

一連の姫川玲子シリーズ映像化作品で一番最初に観たのは「映画版作品」 だったのだが、やっぱりシリーズ初回作である本作から見た方が良かったと後悔。初回作を見たことにより、姫川とその部下、癖のある登場人物やチームに起こった事件などを理解しつつ、映画版のストーリーと人物群像劇でモヤモヤっとなっていた部分がやっと理解できた。その映画版とは異なり、猟奇殺人などのシーンで放送上制約の多いTVドラマとしては非常に上手く映像化しているなと感心する。仮に映画で同じ映像を表現するのならもっと直接的で派手な映像になっただろうが、迫力を失うこと無くTV放送に耐えられる映像として仕上げた製作陣の辣腕に脱帽。ラストシーンは如何にもTV的なカジュアル感が出たが、久々に重厚で良質な刑事サスペンス・ドラマを観た。(SS)

製作: 2010年 日本 106分
監督: 佐藤祐市 / Yuichi SATO
原作: 誉田哲也 / Tetsuya HONDA「ストロベリーナイト」 
出演: 竹内結子 / Yuko TAKEUCHI, 西島秀俊 / Hicetoshi NISHIJIMA宇梶剛士 / Tsuyoshi UKAJI, 桐谷健太 / Kenta KIRITANI渡辺いっけい / Ikkei WATANABE, 遠藤憲一 / Kenichi WATANABE, 高嶋政宏 / Masahiro TAKASHIMA, 生瀬勝久 / Katsuhisa NAMASE, 武田鉄矢 / Tetsuya TAKEDA, 津川雅彦 / Masahiko TSUGAWA, 林遣都 / Kento HAYASHI, 国仲涼子 / Ryoko KUNINAKA
ジャンル: TV, サスペンス
鑑賞方法: DVD

Friday, January 31, 2014

ストロベリーナイト (映画) / Strawberry Night (film)



誉田哲也のインビジブルレインを原作としたフジテレビ制作の映画作品。そもそもは単発の2時間スペシャルで発表後、視聴率が良かったためか否か、連続ドラマ版の放送が開始され、その後映画版である本作が発表されたようだ。原作も主人公である「姫川玲子」シリーズとして既に5作品がリリースされているが、シリーズ1冊目のタイトルであるストロベリーナイトのタイトルがTVから映画へと続く一連の映像作品のタイトルに採用されている。と、ここまで書いた前知識はすべて本作鑑賞後に調べたもので、実はTVドラマの事や警察モノであることさえ知らなかったため、本当に真っ白な状態で鑑賞した。

暴力団、龍崎組組員である小林の刺殺遺体が発見された。遺体の左目には縦に切りつけられたキズ、部屋の壁の特徴的な血しぶきなどから、直近で起こった2つの暴力団員殺人事件との類似性が指摘された。警視庁は暴力団の内部抗争の線と連続殺人事件の両面から捜査を開始した。一方、捜査一課の姫川は小林殺しの犯人は「柳井健斗」であるという密告電話を受けるが、その事を相談した上司から「この件には一切触れるな!」と強い指示を受ける。あくまで事件の真実を追い求める姫川は、単独で捜査を開始した…。

主人公の姫川玲子は、何か血なまぐさい過去を持つも、リーダーとして捜査班を自ら率いるほどなので、仕事の出来る刑事だというのは想像に容易だが、その「過去」は、殺人事件の重要関係者であり、よりによって暴力団組長である男に、車の中で抱かれてしまうほどのモノなのだろうか。武田鉄矢扮する勝俣なるベテラン刑事が唐突に出てきて、汚れ仕事みたいな事を裏で淡々とこなしているようだが、どういう事だろう。目玉焼きの乗ったカレーは、わざわざ真上からクローズアップするほど意味があるのか。あらかじめTVドラマを見ていなくても理解できるストーリーであり作品の質は高い。ただ、やっぱりTVドラマを見てた方が楽しめたかなと。最後のヤマ場である記者会見のシーンでは展開に現実感が全く無くかなり無理を感じる。脚本次第でどうにでもなったはずで残念。(SS)


製作: 20012年 日本 127分
監督: 佐藤祐市 / Yuichi SATO
原作: 誉田哲也 / Tetsuya HONDA「インビジブルレイン」
出演: 竹内結子 / Yuko TAKEUCHI, 西島秀俊 / Hicetoshi NISHIJIMA大沢たかお / Takao OSAWA小出恵介 / Keisuke KOIDE宇梶剛士 / Tsuyoshi UKAJI, 丸山隆平 / Ryuhei MARUYAMA, 三浦友和 / Tomokazu MIURA, 渡辺いっけい / Ikkei WATANABE, 遠藤憲一 / Kenichi WATANABE, 高嶋政宏 / Masahiro TAKASHIMA, 生瀬勝久 / Katsuhisa NAMASE, 武田鉄矢 / Tetsuya TAKEDA, 菅田俊 / Shun SUGATA, 金子賢 / Ken KANEKO, 鶴見辰吾 / Shingo TSURUMI, 石橋蓮司 / Renji ISHIBASHI, 津川雅彦 / MasahikoTSUGAWA
ジャンル: サスペンス
鑑賞方法: Blu-ray