シリーズ第3作目は舞台を青森から長崎の五島列島へ移し、東京で殺人を犯した男の家族が住む民宿に張り込みというか住み込みながら捜査を進める片山を、五島列島の美しい風景を背景に描く。シリーズも3作目になり脚本も熟れてきたようで、前作まであった妙なギコチなさも無く、安心して見られるようになった。沢口靖子のデビュー作で主題歌も彼女のものだが、19歳の彼女はまさに天真爛漫の明るさとはち切れんばかりの笑顔で、映画全体に明るさを加えている。今回のヒロインは星由里子なのだろうが、その実は沢口靖子も加えたダブルヒロインというのが正解だろう。相も変わらずのくたびれた服装に短足の片山刑事は今回もそれなりに暴れているが、前作よりも蟷螂拳の動きが洗練されたと思うのは気のせいか。得意のハンガーヌンチャクも披露するが、加えて小さいフラフープも武器として登場する。また、悪党との対決シーンでは途中スローモーションが入っているのだが、どうみてもマジである。つまり、殺陣師やスタントマンがやっている風には見えず、かつ空パンチ・キックでも無く、武田鉄矢の役者根性が垣間見える良いシーンだ。その対決からラストシーンに掛けては、刑事という立場をすっかり忘れているのか否か、殺人犯に対しても彼一流の気遣いを忘れない片山の優しさが、吉田拓郎の音楽も相まって画面をとおしてジンワリ心に染みてくる。
ボケに笑いに涙も切なさも全部テンコ盛りにした脚本だが、バランスよく最後まで安心して見られる良作。決して格好良くはないが、しかし気の優しいヒーローが誕生したようだ。(SS)
製作: 1984年 日本 107分
監督: 杉村六郎 / Rokurou SUGIMURA
製作:
出演: 武田鉄矢 / Tetsuya TAKEDA, 星由里子 / Yuriko HOSHI, 沢口靖子 / Yasuko SAWAGUCHI, 夏木陽介 / Yosuke NATSUKI, 木之元亮 / Ryo KINOMOTO, 木暮実千代 / Michiyo KOGURE, ハナ肇 / Hajime HANA, 関口宏 / Hiroshi SEKIGUCHI
ジャンル: ドラマ, アクション, コメディ
鑑賞方法: DVD
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