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Monday, January 21, 2013

シベリア超特急 00・7 〜 汽車の中で悪霊が鳴く 〜/ Siberian Express 7

★☆

日本の映画史に残る名作である『シベリア超特急』シリーズ第7弾は、シリーズ第4弾に続く舞台作品である。タイトルの『00・7』がやや意味不明だが、当時は山下閣下の恋をテーマにしたシリーズ第6弾の製作が予定されており、かつ日本ユナイト映画時代の水野晴郎が宣伝担当をしていた『007シリーズ』のパロディとして『00・7』としたようだ。舞台のテーマとしては前回と同じで、映画版のキャストが集合しており、Version 1: 『ベルリンからの密使』と、Version 2『W佐伯大尉』の2回が上演され、セル作品としては2つの舞台の映像を水野晴郎が再構成した作品が『シベリア超特急 00・7』として発売されている。例によって演出、脚本、製作はマイク・ミズノ、監督は水野晴郎。もはやストーリーはどうでもいいだろうが一応アウトラインを書いておくと、光本幸子演じる平岡千鶴子外務大臣の就任パーティーにおける乾杯の刹那、ある老人が何者かによって殺害されてしまう。平岡外務大臣は62年前にシベリア超特急の車内で起きたある事件の事を語り始める…、というもの。

グダグダのオープニングは『007シリーズ』のオープニングに対するオマージュというか、そのまんまのモロパクリで、水野が襲いかかる悪漢をバタバタと切って倒すシーンから始まるが、本編とは全く関係がない。その後、前回の舞台と同様に安井昌二や小田切みきといった歴代の出演俳優陣に加え、何故か山城新伍が演技もクソもないフリートークで登場する。しかも、山城はエンドロールのクレジットで最上位に記載されており、益々理解不能。その後も唐突にザ・グレート・サスケが登場し、そのサスケが師匠と崇める謎のレスラー、シベリアタイガーとして水野が登場するなど、もはやシベリア超特急の世界観を完全に無視した暴走列車の展開。と、ここで油井昌由樹のナレータで再度シベ超ワールドに引きずり戻されるが、シリーズで佐伯大尉役を演じた西田和昭と竹田高利によるW佐伯大尉なるマニア向けギャグ、さらにチャイニーズ・エンジェルなるこれまたパクリの3人組のB級アクションをぶっ込んだりと、シリーズのコアなファンでも理解不能な、完全に方向性を失ったコメディ舞台となっており、前回にも増して真面目に『舞台』に取り組んでいる方々に失礼な作品。ここまでストーリー展開が薄っぺらだと、演技や台詞回しなどはどうでも良く、舞台としてもDVDとしても、果たしてお金を取って世の人に見てもらうレベルに達しているのか否かという、商用販売品としての根本が問われていると言っても過言ではないだろう。

Version 1 & 2と上演された舞台を観たわけでないので、本作を一括りにして断罪することは出来ないのだが、一人のシベ超ファンとして誤解を恐れずに言えば、DVDでリリースされた水野特別編集版という本作品に関しては、シリーズ最低作と断言できる。グダグダで粗雑な編集、唐突で繋がりを無視した展開と編集、スクリーンサイズの半分に切られた多くのシーン、BGMの音量調整が出来ておらず台詞が聞こえづらいという致命的なミス、更には、シベ超の意義根幹に関わる『反戦メッセージ』ですら乱暴で唐突に挿入されており、苦笑や冷笑を通り越し、もはや怒りのレベルにまで堕ちてしまっている。素人がiMovieで編集してもこれよりも綺麗な映像作品に仕上げられるだろう。

シベ超シリーズ不変の一本軸は『謎解きの面白さ』、『反戦メッセージ』と『ドンデン返し』であると思うのだが、『謎解きの面白さ』に関しては皆無。ドンデン返しは無理矢理。かろうじて『反戦メッセージ』が薄く織り込まれた本作は、シベ超シリーズというよりも、シリーズのスピンオフ作品くらいの位置づけで良いのではと思う。ただ一点、舞台冒頭で『俺関係ねぇーよ』と言い放った水野の台詞は、本作のみならず、シリーズ全体をとおして唯一と言って良い迫力のある台詞。その台詞さえも、他の出演者にかき消されてしまっているが。

シベ超を観る前はいつもドキドキというか、なんとも言えないワクワク感があったものだ。今回もその高揚感を持ちつつモニターの前に座ったが、ストーリーが展開するに連れて、そのワクワク感とは真逆の気持ちになってしまい少々後味が悪い。果たして本作を舞台と思っていいものか。子供の学芸会の出し物かと見間違う完成度の低さは、シベリア超特急のコアなファンでもおいそれと受け入れ難いものだが、しかしこれを許し、愛してこそ真のシベ超ファンと言えるのかもしれない。(SS)


製作: 2004年 日本 166分
監督: マイク・ミズノ / Mike MIZUNO
製作: 水野晴郎 / Haruo MIZUNO
ナレーター: 油井昌由樹 / Masayuki YUI
出演: 水野晴郎 / Haruo MIZUNO, 西田 和晃 (西田和昭) / Kazuaki NISHIDA, 光本幸子 / Sachiko MITSUMOTO, 安井昌二 / Shoji YASUI, 小田切みき / Miki ODAGIRI, 乾貴美子 / Kimiko INUI, 金濱夏世 / Natsuyo KANAHAMA, 竹田高利 / Takatoshi TAKEDA, 山城新伍 / Shingo YAMASHIRO, インゲ・ムラタ / Inge MURATA
ジャンル: ミステリー, 舞台
鑑賞方法: DVD

レビュー後記: シベリア超特急シリーズは、映画作品4作と舞台2作品の全6作品が製作された。シリーズ第1弾を観た時の衝撃は今でも忘れられない。この稀有な一連の作品を制作したマイク・ミズノこと水野晴郎氏は2008年6月10日15時05分、肝不全により死去。76歳であった

Monday, December 3, 2012

シベリア超特急 5 〜 義経の怨霊、超特急に舞う〜 / Siberian Express 5



本作は『シベリア超特急 5』でシリーズ第5弾ではあるが、前作は舞台であり、次作のシリーズ第6弾は水野晴郎の急逝により宙に浮いたまま、また、第7弾も舞台作品であることから、映画第4弾であり且つ実質シリーズの最終作となる。監督はマイク・ミズノ。製作・原作・脚本・主人公は水野晴郎。西田和晃は変わらず。大物ゲストとしては本作が最後の出演映画となってしまった故岡田眞澄。歌舞伎界から片岡某の二人、宝塚からは西條三恵が佐伯大尉の妹役として出演している。それにしても、シリーズを通して歌舞伎役者や宝塚出身者などが出演が目立つが何故だろうか。特に、本作では片岡某やら尾上某やら大量出演している。彼らはシベ超を役者キャリアにおけるステップアップの一つとでも考えているのだろうか。

ということで、物語の舞台はいつも通り。一応書いておくと、第二次世界大戦開戦前夜の1941年。ヒットラーとの会談を終えた山下泰文日本陸軍大将と佐伯大尉は、モスクワ駅からシベリア鉄道に乗り込んだ。そんな二人に『満州里到着までの7日間で、とある地図を確保せよ』との緊急伝令が入電した。そして、その地図とは源義経の秘宝のありかを描いた古地図のことだった。しかし、この古地図を探しているのは山下閣下だけでは無かった。そして、この古地図を巡ってお約束の密室殺人事件が発生する…。

本作はボンちゃんが二役で演じる淀川長治のパロディーから始まる。映画全体の展開を知った今となっては意味が無いとは言わないが、ハッキリ言ってしょーも無いシーンで意味不明である。しかし、この冒頭シーンの完成度が本作全体の方向性を如実に物語っているようだ。その他では、宙を舞うロープや列車上での格闘などいつも通りで、過去名作へのオマージュはヒッチコックのみならず西部劇の名作『駅馬車』にまで及ぶ。しかし、圧巻はシリーズ第2作以来の階段落ちである。万里の長城を落ちるこの階段落ちは圧巻とは書いたが、一言で言えばやり過ぎであり、もはや万人が持ち得る『笑いのツボ』の向こうにある事は否めない。

予算の配分が間違っているというのは言いすぎだろうか。お約束の『出演者紹介』シーンにおけるモスクワ駅のセットは相当に造り込まれており、ベニヤ板臭は微塵も臭わない。過去のシリーズにおいては、くま川鉄道あたりのSL走行をそれっぽく魅せたと思われる蒸気機関車の走行シーンだが、本作ではCGでそれを表現している。CGと言っても『シベ超』らしさ溢れるCGで、それ自体が何ら本作に対してリアリティーを与えている訳ではないが。また『一切揺れない車両』として過去に散々ツッコまれた車両のセットは、本作では『カメラワーク』および稲川素子事務所派遣の国際女優さん達が頑張って『揺れる車内を歩く演技』をしたことにより、疾走するシベリア鉄道車内を表現している。しかし、車両の幅があり過ぎて鉄道車両らしさを失ったのが残念。しかし、私が本作で最も酷評したいのは、高品質なセットやCGなどのいわゆる『見てくれ』部分に予算をかけておきながら、キャスティングも含めた作品の『中身』を手薄にした挙句、コメディー色を相当に強めた作品として仕上げてしまったことだ。本作はB級と言われながらもミステリー作品であり、絢爛豪華なエンターテイメントであったはずなのに、それが低俗なコメディー作品に落ちぶれていると言わざるを得ない。しかもコメディー作品として評価しても中途半端。個人的にはシベ超らしさという意味ではシリーズ第2作目が頂点にある作品で、映画作品としては第3作目が頂点かと思う。鑑賞し終わった後に、引退するタイミングを間違えた年老いたプロスポーツ選手の老獪さとは違う情けないプレーを観たかのようで、一人のシベ超ファンとして幾ばくかの寂しさを感じた。

今回の本編開始前のテロップは『最後に登場する真犯人の名と続くどんでん返しは決して人に話さないで下さい』というもの。はいはい。誰にも言いませんよ。スターウォーズ風のエンディングロールから『ドンデン返し』と続き、DVD版では最後にNG集も追加されている。

かつて、ポルシェのCMコピーに『最新のポルシェが最高のポルシェだ』というのがあったが、これを鑑みるに『最新のシベ超が最高のシベ超』とはならなかったようで残念だ。本作はこれまでシベ超作品を観たことの無い初心者にはお勧めできない。これはコアなファンが過去のシリーズ作品を十分に消化して、やっと到達できる悟りの境地にそびえ立つ霊峰のようなものだ。(SS)


製作: 2004年 日本 134分
監督: マイク・ミズノ / Mike MIZUNO
製作: 水野晴郎 / Haruo MIZUNO
ナレーター: 油井昌由樹 / Masayuki YUI
出演: 水野晴郎 / Haruo MIZUNO, 西田 和晃 (西田和昭) / Kazuaki NISHIDA, 片岡愛之助 / Ainosuke KATAOKA, 片岡進之介 / Shinnosuke KATAOKA, 西條三恵 Mie SAIJO, 中野良子 / Ryoko NAKANO, 岡田眞澄 / Masumi OKADA, ガッツ石松 / Guts ISHIMATSU, 佐藤允 / Makoto SATO, 淡島千景 / Chikage AWASHIMA, ニコラス・ペタス / Nicholas PETTAS, 片岡未来 / Mirai KATAOKA, 中村福助 / Fukusuke NAKAMURA, 大槻ケンヂ / Kenji OTSUKI
ジャンル: ミステリー
鑑賞方法: DVD

シベリア超特急 4 〜 監督殺人事件 〜/ Siberian Express 4



不朽の名作『シベリア超特急』シリーズ第4弾は何と舞台である。本作は2003年1月18日に新宿シアターアプルで上演された最初で最後の1度限りの舞台版をDVDにしたものだ。例によって演出、脚本、製作はマイク・ミズノ、監督は水野晴郎である。シベ超を生の舞台にして、しかも一度限りの公演とはマイク・ミズノも思い切った事をやったものだが、これをそのままシリーズ第4弾DVDとして発売してしまうあたりに、エンターテイナーでありプロデューサーでもあるマイク・ミズノの力量の向上を感じる。

本作のストーリーは少々トリッキーで面白い。端的に言うと『シベリア超特急 4』の製作を開始しようとしていた矢先、監督の水野が何者かによって殺害されてしまう。そして、この殺人事件の謎を解き明かすべく『シベ超 4』の制作スタッフは台本通りに『シベ超4』を演じることにした…、というもの。冒頭に宇津井健、内藤武敏や三田佳子などが出演しており、基本的には前作までの出演者がそのまま横滑りしているように見えるが、はっきり言ってこの御三方は出演者というよりも、舞台冒頭に水野とフリートークをかましているだけで、何らかの役を演じているわけではない。その他では新たな大物として丹波哲郎が本人役で参加するも、こちらもユルユルの演技とは程遠いもの。

ということで、本作をもって舞台と評するのは真面目に『舞台』に取り組んでいる方々に失礼かと思う。と言うのも、水野以外の役者陣は真面目に本舞台に取り組んでいるのに、肝心の主役の水野が台詞を忘れていると思われるシーンがあるのだ。周りの役者がそれをフォローしつつ上手く笑いに変えているが、おかげで舞台上に一流処を揃えておきながら、ストーリー展開は二の次になってしまい、舞台としてはほぼ破壊されたと言ってもいいだろう。私は何も台詞を発するだけで笑いを取る水野の『超棒読み』や『超々自然体』の演技を批判している訳ではない。台詞もロクに覚えずに一発勝負の『舞台』に上がってきた役者としての水野の取り組みを批判しているのだ。ちなみに、真柄加奈子も台詞忘れをしており、舞台袖のスタッフに次の台詞を促されている。

とは言うものの、そんな舞台も『シベ超』というフィルターを通して観てみると全てがそれらしく、本物の役者が演じる真剣な演技と水野のそれとの大きなギャップ、そしてそれが誘発する笑い。コメディー方面に強めに振った謎解きの面白さとお約束の反戦メッセージ。そして、最後にはお約束の『ドンデン返し』も準備されており『シベ超』らしい極上のエンターテイメントに仕上がった。

見終わった後にふと不思議な感じに襲われた。今、私が観たのは舞台なのかトークセッションなのか学園祭の出し物なのか…。『シベリア超特急 4を観たんだ』と自分自身に強く念じる事を強くおすすめする。さもなければ、この舞台作品を観たことすら忘れてしまうだろう。(SS)


製作: 2003年 日本 132分
監督: マイク・ミズノ / Mike MIZUNO
製作: 水野晴郎 / Haruo MIZUNO
ナレーター: 油井昌由樹 / Masayuki YUI
出演: 水野晴郎 / Haruo MIZUNO, 西田 和晃 (西田和昭) / Kazuaki NISHIDA, 三田佳子 / Yoshiko MITA, 宇津井健 / Ken UTSUI, 内藤武敏 / Taketoshi NAITO, 光本幸子 / Sachiko MITSUMOTO, 丹波哲郎 / Tetsuro TANBA, 真柄佳奈子 / Kanako MAGARA, やべきょうすけ / Kyosuke YABE, 安井昌二 / Shoji YASUI, 小田切みき / Miki ODAGIRI, 渡辺雄作 / Yusaku WATANABE, 金濱夏世 / Natsuyo KANAHAMA
ジャンル: ミステリー, 舞台
鑑賞方法: DVD

Friday, November 30, 2012

シベリア超特急 3 ~ 60年目の悪夢 ~ / Siberian Express 3



邦画の名作『シベリア超特急』のシリーズ第3弾は、密室殺人事件や反戦というシリーズ・テーマに変わりはないものの、舞台も時代も総取替して臨んだ意欲作。今回は現代の瀬戸内海を航行する豪華客船が舞台だが、60年前にシベリア鉄道で起きた事件がダイアローグ形式で語られる展開で、シベリア鉄道車内で起きる殺人のトリックの中身も併せて鑑みるところ、シリーズ第1作目と2作目を足して2で割ったような作品だろうか。なお、本作は息子の不祥事で芸能活動を自粛していた三田佳子の復帰作であり、宇津井健、大浦みずきや内藤武敏などベテラン・ビッグネームが普通に出演しているあたりから、本作のネームバリューもそれなりに築かれたという事を感じさせる。

舞台は2002年。瀬戸内海上を航行する豪華客船上で大富豪の宮城伝蔵が主催する船上パーティーが開催されていたが、その最中にパーティーの参加者が殺されてしまう。殺害された時刻は3:14。そういえば宮城伝蔵が60年前にシベリア鉄道で遭遇したある殺人事件も同じ3:14に起きたものだった。そして、宮城伝蔵はその当時の話を静かに語りはじめた…。一方、その60年前のシベリア鉄道では、ヒットラー、ムッソリーニおよびスターリンとの会談を終えた山下奉文日本陸軍大将がシベリア鉄道で日本へ帰国する途中であった…。

『ヒットラーもスターリンも何を考えているのか分からぁん』という山下閣下の棒読み台詞、回を追う毎に洗練される人物紹介。考え込んでいるのか居眠りしているのか、はたまた死んでいるのか判別不能な閣下の演技。テグス丸見えの宙を舞うロープなど、過去の名作に対する数々のオマージュと定番シーンは本作でも健在。しかし今回はもっと凄い隠し玉が用意されている。冒頭の超長回しは本シリーズではすっかり定番となった手法だが、ここに凄まじい急降下爆弾が仕込まれている。時間でいうと本編開始後9:30の辺りで監督のマイク・ミズノが画面背後に見切れているのである。黄色いトレーナーを着ているマイク・ミズノはまさに特典映像のメイキングでみた監督そのものである。これを世間では大NGとかトンデモなどと評しているようだが、私はそうは思わない。これは『シベ超』を心から楽しんでもらおうとの狙いを持って意図的に織り込まれたマイク・ミズノ一流のエンターテイメントだろう。そしてその仕掛けに囚われた有名人を含む多くの人が、ネタとしてWEBやらTVやらラジオやらで喋りまくっている。私もそんな一人だが、この見切れのシーンに大笑いしてマイク・ミズノの仕掛けた罠に嵌まりつつ、監督としての力量の向上を感じるのだった。

今回の本編開始前のテロップは『瀬戸内海事件の真相とラスト二つのドンデン返しは決して人に話さないで下さい』との事だが、もはや『本作を観たことを決して誰にも喋ってはいけません』と言われているようなものだ。しかし、この前フリで『シベ超』のコアなファンを煽っておきながらの余りに普通過ぎるドンデン返しには全く納得出来ない。シリーズも3作目にきてマイク・ミズノとしては練に練った真面目な『ドンデン返し』なのだろうが、これでは笑いも何もないだろう。もちろん、それを良しと観る向きもあるのだろうが、私は『シベ超』が『シベ超』である所以をマイク・ミズノ自ら捨てたようなものと感じ、エンディングロールを観ながら盛り上がる私の高揚感をすっかり台無しにされ、久々に胸糞が悪くなった。(SS)


製作: 2001年 日本 111分
監督: マイク・ミズノ / Mike MIZUNO
製作: 水野晴郎 / Haruo MIZUNO
ナレーター: 油井昌由樹 / Masayuki YUI
出演: 水野晴郎 / Haruo MIZUNO, 西田 和晃 (西田和昭) / Kazuaki NISHIDA, 三田佳子 / Yoshiko MITA, 宇津井健 / Ken UTSUI, 大浦みずき / Mizuki OOHRA, 内藤武敏 / Taketoshi NAITO, アガタ・モレシャン / Agathe MORECHAND, 真柄佳奈子 / Kanako MAGARA, 大塚ちひろ / Chihiro OTSUKA
ジャンル: ミステリー 
鑑賞方法: DVD

シベリア超特急 2 ~ 菊富士ホテル殺人メロディ ~ / Siberian Express 2



シリーズ第1作目にしてもはや伝説となった『シベリア超特急』のシリーズ第2弾は、舞台をシベリア鉄道の車内から満州里(マンチュウリ)付近にある菊富士ホテルの3階に移し、例の如く密室殺人事件とそれを解決へと導く山下大将の活躍、そしてマイク・ミズノ監督渾身の反戦メッセージを描く。寺島しのぶ及び第7回国民的美少女コンテストグランプリの須藤温子の映画デビュー作でもあり、両名とも素晴らしい作品をデビュー作に選んだと思うが、鈴木保奈美の『刑事物語』のように『黒い歴史』になければと切に願う次第。それにしても出演者が非常に豪華である。淡島千景、草笛光子、光本幸子、二宮さよ子、加茂さくらに長門裕之とよくまぁ集めたものだが、この辺は前作のキャスティングを反省したマイク・ミズノの成長が見られるところだ。なお、水野晴郎の自画自賛によると、前述の俳優陣に対して出演依頼をする際、台本を見せずにお願いしたところ『水野さんのが造る映画だと楽しそぉー』ということで全員快諾したそうだ。俳優陣は前作を観たのだろうか。

舞台を列車車内からホテルの室内に移しただけで、密室殺人事件をテーマにした物語の基本線は前作と変わっていないが、物語は当時の事件関係者のキーパーソンが現代にて、取材の記者に対して語るダイアローグの形で展開される。時代は第2次世界対戦開戦前夜の1941年。ヒットラーとの会談を終えた山下奉文日本陸軍大将はシベリア鉄道で日本へ帰国する途中だったが、何者かにより鉄道が爆破されたため、満州里近くの菊富士ホテルへ急遽宿泊することになった。山下大将以外も含めて見るからに癖のありそうな宿泊者達。そして謎の殺人事件が発生する…。

冒頭における菊富士ホテルへチェックインのシーンにおける登場人物の紹介や、『ヒットラーは信用できんぞ!』『スターリンは何を考えているか分からぁん』『何とか戦争だけは回避させなければいかんなぁ』という山下大将の棒読み台詞など、自らの前作に対するセルフ・オマージュ。そして宙を舞うロープ、画面分割や人物目線のカメラワークなどなど過去の名作に対する数々のオマージュに溢れているのも前作同様。

本作における私のお気に入りのシーンの一つは山下大将がナイフを持つシーンだ。どう贔屓目に観ても山の如く動かない山下大将が持つナイフに、被害者役を演じる長門裕之自らが刺されに向かっている。まるで、晩年のジャイアント馬場の十六文キックに向かって引き寄せられる若手レスラーのようだ。一方、水野晴郎の駄々を捏ねる子供のような演技を補うべく獅子奮闘の演技で役者魂を見せた長門裕之は称賛に値する。そして、それを上回るシーンは殺人事件の犯人という嫌疑を掛けられ、軍人らしく自決を迫られた山下大将が頭部に引き金を掛けた後に発する『やめたぁ〜』という台詞である。名だたる女優陣が魂を込めて作り上げた緊迫感あるシーンを一瞬で完膚無きまでに崩すこの名セリフは後世まで語られるに違いない。それにしても、水野晴郎の『超棒読み』と『超々自然体の演技』は本作でも健在だが、歌舞伎役者の中村福助も水野に負けじと甲高い声と緊張感の無い演技で魅せており、水野の稚拙な演技を上手くボカしている。

今回の本編開始前のテロップは『真相は三つの逆転のあと判明しますが決して人に話さないで下さい』というもの。もはや日本語がおかしいがまぁ良いだろう。『絢爛豪華なエンターテイメント、そして加えてサスペンスの面白さ、そして最後に流れる戦争反対のテーマ(水野晴郎談)』をじっくりと堪能して欲しい。もう何があっても驚かないつもりで観たが、最後に大波のように襲いかかる『どんでん返し』は、ダイアローグで語られるという本作の基本設定そのものでさえ木端微塵にするほどの強力な破壊力。マイク・ミズノを堪能し、耐え、許し、受け入れる覚悟が出来ているか否か、鑑賞前に自己確認する事を強くお勧めする。(SS)


製作: 2001年 日本 111分
監督: マイク・ミズノ / Mike MIZUNO
製作: 水野晴郎 / Haruo MIZUNO
ナレーター: 油井昌由樹 / Masayuki YUI
出演: 水野晴郎 / Haruo MIZUNO, 西田 和晃 (西田和昭) / Kazuaki NISHIDA, 淡島千景 / Chikage AWASHIMA, 草笛光子 / Mitsuko KUSABUE, 光本幸子 / Sachiko MITSUMOTO, 寺島しのぶ / Shinobu TERASHIMA, 二宮さよ子 / Sayoko NINOMIYA, 加茂さくら / Sakura KAMO, 中村福助 / Fukusuke NAKAMURA, 須藤温子 / Atsuko SUDO, 尾上松也 / Mtsuya ONOE, 長門裕之 / Hiroyuki NAGATO, 安井昌二 / Shoji YASUI
ジャンル: ミステリー 
鑑賞方法: DVD

シベリア超特急 ~ 悪魔が乗った殺人列車 ~ / Siberian Express



邦画を語る上でこの作品だけは避けては通れない、という名作は数多く有る。例えば名作シリーズの『男はつらいよ』は、定番ながらも飽きのこない展開と銀幕を彩る名だたる名優達の演技で大衆の人気を掴んでいるものだ。

さて、シリーズ全6作が製作された『シベリア超特急』は名シリーズに成り得るか否か。私の見解は、本シリーズこそ邦画を語る上で避けては通れない名作シリーズだと断言したい。観る度にいい意味でも悪い意味でも裏切られ、満を持して友達に紹介するも逆に『何てことしてくれるんだ!』と凄まれたり、本作を観た後に貴重な時間の損失してしまった事を悔やむ時もある。私の妻は何度一緒に観ようと頼んでも決して観てくれない。それでも、何故か愛して止まないこの名作『シベリア超特急』シリーズの記念すべき第1作目を紹介したい。

物語の舞台は第二次世界大戦開戦前夜の1941年。ヒットラーとの会談を終えた山下泰文日本陸軍大将は、外務省の青山一等書記官と佐伯大尉を連れ、満州経由で日本へ帰国するためシベリア鉄道の車内ですごしていた。しかし、イルクーツクを出発し満州へ向かう車内で殺人事件が発生した。自らのコンパートメントで山の如くじっと推理を巡らせる山下大将。しかし、そんな山下大将を嘲笑うかのように二番目、三番目の殺人が発生し、そして凶弾は山下大将自身へ向けられる…。

巷における本作の評価はいわゆる『B級映画』と言われるもので、ググれば総じて酷評レビューが多い一方、麻薬的な面白さを感じているレビューワーも多く、評価が別れる作品であるのは間違いない。しかし、冷静に考えてみると、本作よりも予算と時間を掛け、流行のアイドルやタレントを起用して華やかに製作される邦画作品群の中で、一体幾つの作品が本作よりも娯楽作品として面白いと言えるだろうか。一体幾つの作品が本作よりも世の中に伝えたいメッセージを織り込んでいると言えるだろうか。監督・脚本・演出を担当したマイク・ミズノの手腕は、デビュー作であるという事を差し引いても二流であるのは確かだろう。しかし、この不完全さこそが本作の魅力であり、そして ―私の勝手な想像だが― その不完全さを補うべくスタッフ一丸となった努力の結晶によって、この稀有の作品が産まれたに違いない。

しかし、とは言っても本作が『B級』であることは否めない事実だ。走行中のシベリア鉄道が舞台であるが、画面は一切の揺れを感じさせないし、列車の屋根で格闘するシーンではセットの端が見切れてバレバレであったり、山下大将が銃で狙われるシーンなどは、かたせ梨乃や菊池隆則などの『本物』の俳優のみならず、稲川素子事務所から借りてきた三流外国人俳優までもが緊張感のある表情で役を演じているのに対し、水野晴郎だけが超自然体の普段顔で緊迫したシーンが台無しだったりするが、これに関しては、どんな時でも動じない日本陸軍の高級幹部という設定を完璧に演じ切っている可能性もあり、評価は難しい。とにかく、アラを探しだすとキリがないのだが、こうしてアラを探すのもまた本作を観る上での楽しみと言うべきか。

しかし、本作を『B級』たる位置付けにしている最大の要素は、水野晴郎の『超棒読み』と『超々自然体な演技』に尽きる。そして、監督のマイク・ミズノ自ら、俳優としての水野晴郎の実力を過信し、この個性派俳優を起用する事に固執してしまったことが、本作を『B級』たる位置に貶めている決定的な要因なのではないだろうか。それにしても不可解なのは、DVDの本編終了後にかつて日テレの金曜ロードショーで水野が行なっていたような作品解説が特典映像として流れるのだが、ここでの滑舌ぶりは演技時のそれとは比べものにならないほどであることだ。自分の作品を自分自身で高評価しているのだから気分もいいだろう。だが、この饒舌さをほんの少しでも演技に回せればと思うのは私だけだろうか。

そんな作品解説とは人が変わったような滑舌の悪い水野晴郎のナレータから始まる本作は、『この映画はクレジットが出たあとある事が二度起こりますので、決してお友達に話さないで下さい』というテロップが流れて本編が始まるのだが、見終わった後に『これは話したくても話せる訳が無い』と思うに違いない。類似したテロップを流したり宣伝コピーに使う作品は過去に山ほどあったが、その何れも軽々と凌駕するマイク・ミズノ一流の『世界初の2回のどんでん返し(水野晴郎談)』を堪能し、そして見終わった後に押し寄せる独特の虚脱感にクタクタになるまで浸かってほしい。(SS)


製作: 1996年 日本 93分
監督: マイク・ミズノ / Mike MIZUNO
製作: 水野晴郎 / Haruo MIZUNO
ナレーター: 油井昌由樹 / Masayuki YUI
出演: 水野晴郎 / Haruo MIZUNO, 西田 和晃 (西田和昭) / Kazuaki NISHIDA, 占野しげる / Shigeru SHIMENO, かたせ梨乃 / Rino KATASE, 菊池隆則 / Takanori KIKUCHI,  アガタ・モレシャン / Agathe MORECHAND, インゲ・ムラタタ / Inge MURATA, シェリー・スェニーエリック・スコットフランク・オコーナー, フィリップ・シルバースティン
ジャンル: ミステリー 
鑑賞方法: DVD