スウェーデンの作家、故スティーグ・ラーソンのデビュー作かつ絶筆作であるミレニアムは『ドラゴン・タトゥーの女』『火と戯れる女』『眠れる女と狂卓の騎士』からなる三部作である。Wikipediaによると第5部まで構想があったようだが、作者の急逝により、残りの出版はその目処が立っていない模様。本作はシリーズ第1部である『ドラゴン・タトゥーの女』を原作とした作品。なお、ダニエル・クレイグ主演のハリウッドリメイク版ではなく、スウェーデンで2009年に発表されたオリジナル版である。
スウェーデンの実業家ヴァンネルストレムの名誉毀損裁判。被告は左翼系雑誌『ミレニアム』発行者のミカエル。ミカエルはヴァンネルストレムの不正は事実だと確信しているが裁判の結果は有罪であった。一方、そのミカエルの身辺調査をする女調査員がいた。依頼者は大企業の前会長ヘンリック・ヴァンゲル。調査員は背中にドラゴンのタトゥーを入れた女、リスベット・サランデル。身辺調査結果からミカエルを信に値すると判断したヴァンゲルは36年前に突如失踪した玄孫のハリエット・ヴァンゲルの事件調査をミカエルに依頼する。しかし、事件発生から既に長い時が経っており、調査はミカエルの予想通り困難を極めた。ところが1通のEメールが調査を急転させる。そのメールの発信者は『スズメバチ』と名乗った…。
153分と物理的に長い作品だが見終わって感覚的な長さは感じない。むしろ、詳細不明のまま残された様々なファクターにより、もっと観たいという欲求さえ感じる。とにかく謎解きの面白さが素直に表現されていて心地良い。よくあるトリック自体が複雑難解で考えすぎて面白くない、という訳ではないから、観ているこちらも一緒に考える事ができる。R15+というから猟奇的シーンが散発するのかと思ったが、最大の理由は観ていて嫌悪感さえ覚えるレイプシーンだろう。ここまでの表現が必要だったのかと思うが、原題は『女を憎む男』であり、原作者の意図を汲んだのだとも感じる。
少女失踪事件の調査というテーマとしては暗く、どんよりした冬のスウェーデンの映像が多いが、適度なスピード感、天才的な活躍をみせるリスベット、テンポの良い謎解きの展開が、観ている者にむしろ軽快感さえ与える。特にリスベットに関してはその役の設定や背景、演じる俳優のノオミ・ラパスも素晴らしく釘付けになる。惜しむらくは何故か調査の最終段階のみを端折っているために尻すぼみになっている事だが、ハリウッド以外で久しぶりに観たサスペンスの秀作であることに疑いの余地はない。(SS)
原題: Man Som Hatar Kvinnor / (Men Who Hate Women)
製作: 2009年 スウェーデン, ドイツ, デンマーク 153分
監督: ニールス・アルデン・オプレヴ / Niels Arden OPLEV
製作: ソーレン・スタルモス / Sren STRMOSE
出演: ミカエル・ニクヴィスト /Michael NYQVIST, ノオミ・ラパス / Noomi RAPACE
ジャンル: R15+, サスペンス, ミステリー
鑑賞方法: IMAGICA BS
製作: ソーレン・スタルモス / Sren STRMOSE
出演: ミカエル・ニクヴィスト /Michael NYQVIST, ノオミ・ラパス / Noomi RAPACE
ジャンル: R15+, サスペンス, ミステリー
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