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Thursday, January 31, 2013

剱岳 点の記 (映画) / Mt. Tsurugidake (film)



三角点。経度、緯度、標高の基準になる点のことで三角測量に用いる永久標識の事だが、本作はその三角点を前人未踏の山頂に設置して日本地図を完成させるべく、剱岳に挑んだ男たちの物語。原作はこれまでも『八甲田山死の彷徨』など、名山をテーマとした小説を書いてきた新田次郎の同名説。主演に浅野忠信、共演に香川照之、松田龍平など。

物語は日露戦争に日本が勝利を収めた明治39年を舞台に始まる。陸軍省参謀本部陸地測量部では日本地図の完成を急いでおり、最後の空白地点である剱岳の測量は柴崎芳太郎に任されることになった。一方、日本山岳会もヨーロッパ製の最新登山道具を身に付け、剱岳初登頂を狙っていた。『三角点の設置と測量』という本来の目的はいつやら隅に追いやられ、国家陸軍の威信をかけた剱岳征服は陸地測量部のみならず陸軍上層部の至上命令となっていた…。

柴崎ら測量士の一行が剱岳に頂きを目指すのは、未踏のその場所へ足跡を残すことか、日本山岳会よりも先に登ることか、それとも国家陸軍の名誉のためか。柴崎が言う。『俺達の目的は剱岳に登ることだけじゃない』。剱岳登頂の本来の目的を履き違えた陸軍幹部の圧力にも負けず、しかし剱岳の山頂制覇の向こうにある測量を全うしようとする柴崎のプロフェッショナル魂が観る者に伝わってくる。一方、登ること自体が目的と言う日本山岳会。国家陸軍による日本地図作成と登山愛好家は、単なる『仕事と趣味』以上の違いがあり、この全く異なる2つの要素を同じ土俵に上げて論じることに何の意味も見いだせず、史実はそうだとしても、脚本としては大胆なデフォルメしてもいいところかと思う。

雄大な剱岳を背景にした映像は非常に美しく畏怖の念すら覚える。しかし、わずかに挿入されるCGが余りにチープで興醒めする。また、宮崎あおい演じる柴崎の妻が発する空気感が映画全体の硬派な空気感と余りにかけ離れ過ぎて目に痛い。(SS)


製作: 2009年 日本 139分
監督: 木村大作 / Daisaku KIMURA
出演: 浅野忠信 / Tadanobu ASANO, 香川照之 / Teruyki KAGAWA, 松田龍平 / Ryuhei MATSUDA, モロ師岡 / Moro MOROOKA, 螢雪次朗 / Yukijiro HOTARU, 仲村トオル / Toru NAKAMURA, 宮崎あおい / Aoi MIYAZAKI, 小澤征悦 / Seietsu OZAWA, 鈴木砂羽 / Sawa SUZUKI, 笹野高史 / Takafumi SASANO, 石橋蓮司 / Renji ISHIBASHI, 井川比佐志 / Hisashi IGAWA, 夏八木勲 / Isao NATSUYAGI, 役所広司 / Koji YAKUSHO
ジャンル: ドラマ, ヒストリー
鑑賞方法: DVD

Monday, January 28, 2013

影の交渉人 ナニワ人情列伝

★☆

Amazon.co.jpで『影の交渉人』を検索する
全60作品が製作されるも諸般の事情で突然の打ち切りとなった『難波金融伝 ミナミの帝王』のコンセプトを受け継ぐ本作は、企画・原案・主演の竹内力と萩庭貞明監督の『ミナミの帝王』コンビによるシリーズ作品。竹内力がいつまでも『ミナミの帝王』のファンを待たせるわけにはいかないと思い自ら企画製作したこの作品は、いわゆる『ヤメ検』と言われる元検事の弁護士、城崎竜二がミナミを舞台にして、法律を武器に悪党を成敗するという人情物語。

メインキャストは、ヤメ検の城崎竜二(きざきりゅうじ)役で竹内力、その良き理解者である大阪府警杉山警部補に桂ざこば。脇役は製作がリキ・プロジェクトだけに『影の交渉人』の面々として山口祥行、城明男、大久保貴光、中野裕斗に勝矢といったリキ所属俳優が居並ぶ。なお、野村祐人はリキ事務所ではない。他では、梅沢富美男、下元年世、桑名正博、渋谷天外にアンドレと、『ミナミの帝王』出演陣がそのまんまスライドしたようなキャスティング。いずれ、60本も観て『ミナミの帝王』色に染まった頭の中を一度リセットしてから見始めた方が良さそうだ。

第1回目のストーリーは、とある美容外科医師殺人事件の容疑者として城崎が良く知る辛祥基が逮捕されたことに端を発する。事件の裏に潜む巨悪の匂いを感じ取った城崎は、杉山警部補と連絡を取りつつ、検察時代に捕らえ更生させた6人の元犯罪者達 − 『影の交渉人』を使って事件の真相を探り出す。そして、事件の背後に潜む悪徳不動産屋を突き止めるが、しかし本当の悪党は5年前に城崎が検察を辞める切っかけとなったある事件の重要参考人の男だった…。

城崎が検察を辞めるまでの経緯から始まるオープニングはチープなテロップが入るものの、竹内力もスーツにメガネで何とか検察官の風情を出しつつ、相当頑張った感じが出てる。城崎は元大阪地検特捜部所属。大手ゼネコンの贈収賄事件を追うも立件できずに辞めたようだが、何しろその辺のテーマがこの手の作品が扱うテーマにしては大きすぎて、今回のメインストーリーとのバランスが少し悪いような気がする。ヤメ検だけど何故辞めたかは説明しないというのも手だったのかなと。ただ、最後のキリ取り…じゃなくて巨悪をカタに嵌める手法は萬田銀次郎を彷彿とさせる雰囲気で、この辺りは『ミナミの帝王』ファンを喜ばせるフィニッシュ。少し乱暴な言い方だが、シリーズ長期化や漫画化を狙い気合を入れて製作はしたが、少し空回ったような第1作目。空回りといえば桂ざこばの演技も空回りし過ぎだが、それはさておき次作に期待したい。(SS)


製作: 2009年 日本 93分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
法律監修: 山之内幸夫
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 桂ざこば / Zakoba KATSURA, 山口祥行 / Yoshiyuki YAMAGUCHI, 城明男 / Akio JOE, 大久保貴光 / Takamitsu OKUBO, 中野裕斗 / Yuto NAKANO, 勝矢 / Katsuya, 野村祐人 / Yuto NOMURA, 下元年世 / Toshiyo SHIMOMOTO, 桑名正博 / MAsahiro KUWANA, 梅沢富美男 / Tomio UMEZAWA, 渋谷天外 / Tengai SHIBUYA, 伊達みきお(サンドイッチマン) / Mikio DATE, アンドレ / Andre, ぼんちおさむ / Osamu BONCHI, 金子舞優名 / Mayuna KANEKO
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

難波金融伝ミナミの帝王 #60 土俵際の伝説 / The King of Minami #60



2007年製作の本作は節目のシリーズ第60作目でシリーズ最終作。1992年にシリーズが開始されて以来15年。これがシリーズ最終話であるという事を全く感じさせないエンディングにも現れているように、本作のリリース時点ではシリーズ打ち切りは決まっていなかったようで、突然の打ち切りに多くのファンと同様、私も寂しい気持ちになった…。

しかし、この『難波金融伝 ミナミの帝王』シリーズは、チャンネルNECOや日本映画専門チャンネル、ファミリー劇場など多くのCS映画専門チャンネルで再放送されており、地上波でも平日昼間の放送にも関わらず二桁視聴率を取るという人気の高さを誇っている。絶対的な勧善懲悪ストーリーでは無いのだが、『弱きを助け強きを挫く』銀次郎が振りかざすのは『拳』ではなく『法律知識』ゆえに、みんなが好きなキャラクターになるもの当然。制作会社さえしっかりしていれば、原作の漫画のように100本は超えてきたかもしれない。取り巻きは舎弟の亮と探偵の美咲、沢木組長と広瀬はんと変わらず。債務者には竹内力の個人事務所であるRIKI PROJECTの所属俳優であり勝矢。悪党にはシリーズ2回目の登場となる木之元亮。伊藤えん魔がその声で独特の存在感を示している。その他では押谷かおりや井上晴美や大木こだまなど。

シリーズ最後の本作はヒューマンドラマ系ストーリー。元小結の岩竜こと大迫は妻と二人でちゃんこ屋を営んでいるが、客も少なく銀次郎の借金返済もままならぬ状態であった。そんな大迫はふとした縁から出身大学の相撲部顧問になり、Bクラスに甘んじる古巣の相撲部を鍛え直していた。そんな中、大学相撲部時代の先輩である柿本がモンゴル人力士を斡旋すると言い出すが…。

押谷かおり演じる元力士の妻が余りにも献身的過ぎて観てられない。そして、勝矢や伊藤えん魔演じる元力士達も、その体格といい声といい良く似あっており、キャスティングの妙が光る。銀ちゃん一流の金融屋らしいキリ取りテクニックは炸裂しないのだが、最後はもちろんハッピーエンドで終わる。ただし、エンディングを観る限りでは相撲部の試合結果はハッピーとはいかなかったようだ。(SS)


製作: 2007年 日本 77分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 西興一朗 / Koichiro NISHI, 岩崎ひろみ / Hiromi IWASAKI, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 宇野ポテト / Potato UNO, 井上茂 / Shigeru INOUE, 勝矢 / Katsuya, 押谷かおり / Kaori OSHITANI, 伊藤えん魔 / Enma ITO, 大河内浩 / Hiroshi OHKOUCHI, 大木こだま / Kodama OKI, 井上晴美 / Harumi INOUE, 木之元亮 / Ryo KINOMOTO, 山之内幸夫 / Yukio YAMANOUCHI
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

追伸: 長く続いたミナミの帝王もこれで終わりである。さすがに60作もレビューすると疲れるが、細かい出演者や名言、トリビア的なことも含めてもう少し掘り下げ、行く行くは本ブログから独立させたいと思っている。

難波金融伝ミナミの帝王 #59 仕組まれた結婚 / The King of Minami #59



2007年の一発目はシリーズ第59作目。取り巻きは舎弟の亮と探偵の美咲、沢木組長と広瀬はんと変わらず。債務者には芸人のバッファロー吾郎が木村明浩名義で出演。悪党にはシリーズ初登場の石丸謙二郎。端役にはいつもの宇野ポテト。今回も、というよりいつもだが、複数の銀次郎の債務者に突然降りかかる災難。しかしその災難の裏で画を描いている悪党は一つで、債務回収も兼ねて銀次郎が成敗に乗り出すというもの。

で、今回のテーマは『痴漢詐欺』と『結婚詐欺』。銀次郎の債務者である米屋の一人息子に突然舞い込んだ中国人との縁談話。登録していた結婚相談所からの紹介で、女を来日させ出会うのに50万が必要と言うので、銀次郎から借金して申し込むも、女の父親が倒れてその見舞金に50万、仕舞いには結婚するために150万と追い剥ぎ式に金を要求され…。一方、街でも評判の真面目な開業医に突如ふりかかった痴漢容疑。本人は頑なに否認するも、目撃者もおり容疑は固まりつつあったが、実は自称痴漢被害者とそのグルの目撃者によって開業医が嵌められていたのだった。結婚紹介詐欺と痴漢詐欺。二つの事件の裏で繋がる悪党父娘に銀次郎が迫る…。

痴漢は親告罪。告訴されたら裁判で勝つは事実上不可能であり、満員電車に揺られて通勤するサラリーマンにとっては決して対岸の火事ではない。私もサラリーマン時代に日本有数の満員電車である東西線に揺られて通勤していただけに、入れ込みつつ本作を観ていると、誣告罪(ぶこくざい)と呼ばれる痴漢詐欺に手を染めるエゲツない小娘に対して、銀次郎は少々手ぬるいというか優しいのではと思うが。バッファロー吾郎が芸人らしからぬ名演技を魅せる。少々派手が過ぎる部分もあるが、モテない金ない格好わるいという、冴えない男を好演している。(SS)


製作: 2007年 日本 77分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 西興一朗 / Koichiro NISHI, 岩崎ひろみ / Hiromi IWASAKI, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 宇野ポテト / Potato UNO, 木村明浩(バッファロー吾郎) / Akihiro KIMURA, 山田スミ子 / Sumiko YAMADA, みやなおこ / Naoko MIYA, 栃下有沙 / Arisa TOCHISHITA, 大久保貴光 / Takamitsu OKUBO, 坂本あきら / Akira SAKAMOTO, 石丸謙二郎 / Kenjiro ISHIMARU
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

難波金融伝ミナミの帝王 #58 銀次郎vs夜逃げ屋 / The King of Minami #58



2006年の最終作は夜逃げ屋と銀次郎との対決を描くシリーズ通算58作目。◯◯◯VS△△△と言えば、過去にシリーズ第7作目の『銀次郎vs整理屋』、第21作目の『銀次郎vs悪徳弁護士』とあるので、本作は『VSシリーズ』の第3弾となる、とは言ってもこれで最後の作品だが。舎弟の亮と探偵の美咲、沢木組長と広瀬はんは変わらず。債務者にはシリーズ第19作目の『保険金横領』以来の石井愃一に常連俳優の鍋島浩ら。悪党には青田典子。宇野ポテトに井上茂、立川貴博や徳田尚美といった端役常連はいつものとおり。

今回のキーワードは『夜逃げ屋』とその夜逃げ屋が仕掛ける『特定調停』。区役所に勤める松野はサラ金、闇金、カードに銀次郎の債務と、借金漬けの挙句に競艇狂いのどうしようもない男。いよいよクビの回らなくなった松野は表向きは不動産屋、裏では夜逃げを斡旋するKGプランニングを訪れる…。一方、医学部に入学した娘の学費を払う為、銀次郎から借金をした銭湯店主の山岸。銀行から1億もの借金をし健康ランドのオープン予定も娘のために後回しし、銀次郎の債務の利息返済に充てていた。しかし、そんな親の気も知らず娘はキャバクラでバイトを始め大学も休学してしまう。娘を医者にするという夢も希望も失った山岸は自暴自棄になり訪れた場所はKGプランニングだった…。自分の債務者の裏で夜逃げという画を書くKGプランニングをカタに嵌めるべく銀次郎が動き出す。

民事執行法第122条『温泉権の差し押さえ』。土地や建物とは別にその土地にある温泉には別に権利が発生するようで、このロジックを利用した銀次郎のキリ取りが炸裂する。しかも今回のキリ取りは2段ロケット方式。『夜逃げ屋』がドツボにはまる過程がなかなか面白い。阪神高速を爆走する銀次郎の愛車は変わらずブラバスチューンのSL。(SS)


製作: 2006年 日本 91分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 西興一朗 / Koichiro NISHI, 岩崎ひろみ / Hiromi IWASAKI, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 宇野ポテト / Potato UNO, 井上茂 / Shigeru INOUE, 鍋島浩 / Hiroshi NABESHIMA, 青田典子 / Noriko AOTA, 堀朱里(堀あかり) / Akari HORI, 森下じんせい / Jinsei MORISHITA, メッセンジャーあいはら / Messenger AIHARA, 石井愃一 / Kenichi AIHARA, 立川貴博 / Takahiro TACHIKAWA, 徳田尚美 / Naomi TOKUDA
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

Sunday, January 27, 2013

難波金融伝ミナミの帝王 #57 ブランドの重圧 / The King of Minami #57



2006年一発目のシリーズ第57作目。本作から取り巻きに変更があり、西興一朗演じる上坂亮(かみさかりょう)が真に変わって新たな銀次郎の舎弟となった。ここで歴代の舎弟を整理しておきたい。
・柳沢慎吾 - 坂上竜一。銀次郎にあこがれて門を叩いた最初の舎弟。
・大森嘉之 - 金子竜也。元警官。銀次郎からの借金が元で舎弟に。
・長江健次 - 田所純平。最初は悪党側での出演だったが改心して舎弟に。
・宮谷信也 - リョータ。
・古本新之輔 - 水城拓也。服装が派手でエゲツない一方、情に厚い。
・山本太郎 - 新庄公平。歴代で最も口答えの多い舎弟。
・桐谷健太 - 真。拓也には負けるが情に厚い男。
・西興一朗 - 上坂亮
これ以外の取り巻きはいつもの探偵の美咲、沢木組長と広瀬はん。悪党にはシリーズ第13作目の『詐欺師潰し』以来の出演となる萩原流行。債務者には池田政典と増田未亜。

今回の債務者は老舗フグ料理屋『福之屋』の暖簾を継いだ福田。今の時代には珍しく周防灘の天然物フグを使うなど、先代のキッチリとした仕事を継いだ福田だったが、今ではすっかり閑古鳥が鳴く始末で、銀次郎の借金に対して元金どころか利息返済も滞る状態。そこへ京阪土地開発から店の土地を譲って欲しいという申し出があったが、その裏ではディスカウントショップ『浪花魂心堂』の井伏が暗躍していた。『福之家』ののれんである商標登録を奪い、仕組まれた産地偽装で福田をカタに嵌める井伏。余りにも汚い手口で『福田屋』の土地を奪いとろうとする井伏に対して銀次郎は…。

塚本耕司さんという役者さん。過去にどこかの新人賞を獲ったようだが、関西弁が余り得意ではないようで、演技が萎縮してたような気がする。重要な役だっただけに少々残念。今回のキリ取りは1億だが、借金と利息にモロモロの手数料を除いた残りの8000万を債務者に渡す銀次郎。鉄の掟である『儲けは折半』を曲げたのだろうか。最後は洒落の効いたキリ取りでなかなかの爽快感。よく見ると銀次郎のオフィスが変更になったようだ。かなり広くなってすごしやすそう。(SS)


製作: 2006年, 日本, 88分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 西興一朗 / Koichiro NISHI, 岩崎ひろみ / Hiromi IWASAKI, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 宇野ポテト / Potato UNO, 井上茂 / Shigeru INOUE, 池田政典 / Masanori IKEDA, 増田未亜 / Mia MASUDA, 萩原流行 / Nagare HAGIWARA, 塚本耕司 / Koji TSUKAMOTO, 門田裕 / Yutaka KADOTA, 雪代敬子 / Keiko YUKISHIRO, 小林千絵 / Chie KOBAYASHI, 泉祐介 / Yusuke IZUMI, 谷広子 / Hiroko TANI, 高橋俊次 / Shunji TAKAHASHI, 松田正三 / Shouzo MATSUDA, 山之内幸夫 / Yukio YAMANOUCHI
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

難波金融伝ミナミの帝王 #56 野良犬の記憶 / The King of Minami #56



シリーズ通算56作目。取り巻きは、舎弟の真に探偵の美咲、沢木組長と広瀬はんといういつものメンバー。債務者には、真が言うところの『色ボケこいた完熟トマト』役の山村紅葉。悪党には、常連俳優の立川貴博と、シリーズ第32作『借金極道』以来2回めの悪役出演となる鶴田忍。その他では、桑原和夫、山田幸伸にトミーズ健と関西芸人もしっかり。

今回の債務者はとある下請け工務店の堀田社長。社会保険庁の独身寮建設工事で内装工事を請け負っていたが、工事完了後も元請けの横井建設が工事代金の3000万を支払ってくれない。挙句には内装仕様が違うなどと言い掛かりをつけられ、堀田は自殺寸前まで追い込まれていた…。一方、大貫ビルサービスの女社長で元社会保険労務士の桃代は、銀次郎の借金も滞り無く返済しており残りもあとわずか。しかし順調な経営のその実態は、就職困難者の雇用に対して国が支払う『特定求職者雇用開発助成金』を狙った詐欺のためのダミー会社だった。桃代は何故こんな詐欺をするようになったのか。その理由は、桃代が以前勤めていた横井建設にあった。横井社長は従業員に助成金詐欺の片棒を担がせながらそれがバレると容赦なく切り捨てた。桃代は資格を剥奪された上に、2年間の実刑まで喰らっていた…。

当時、問題が顕在化した社会保険庁の問題に絡めた時事ネタ系ストーリー。そして、下請けに金を支払わないという極悪建設会社。建設業界にいる私から観れば、請負契約下で工事代金の不払いなど聞いたことがないし、裁判にもならないはずだが、それはさておき『商事留置権』は実は身近な言葉。劇中では、トミーズ健が演じる謎のおっさんの解説が素晴らしく、留置権自体は非常に強力な権利であるが、鍵を渡すという行為は留置権を放棄するに等しいという判例もあるとエラい親切な解説。ちなみに、トミーズ健の出演はこれだけである。

最後の銀次郎のキリ取りは第26作目『追憶』でも使われた『時効停止』。今回は刑事訴訟法第254条『公訴の提起による時効の停止』をキーに、悪徳横井建設に鉄槌が下る。銀次郎の眉墨が太くなって台詞も少なめになってきた。山村紅葉の派手すぎる演技と台詞回しが火サス&土曜ワイドといった2時間ドラマの風情を本作へ持ち込んでいる。(SS)


製作: 2005年 日本93分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 桐谷健太 / Kenta KIRITANI, 岩崎ひろみ / Hiromi IWASAKI, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 宇野ポテト / Potato UNO, 山村紅葉 / Koyo YAMAMURA, 山田幸伸 / Yoshinobu YAMADA, 高山智浩 / Tomohiro TAKAYAMA, 立川貴博 / Takahiro TACHIKAWA, 鶴田忍 / Shinobu TSURUTA, 桑原和男 / Kazuo KUWAHARA, トミーズ健 / Tommies KEN, 本田清澄 / Kiyozumi HONDA, 江藤潤 / Jun ETO
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

Saturday, January 26, 2013

難波金融伝ミナミの帝王 #55 金になる経歴 / The King of Minami #55



製作がKSSからソフトガレージとなって初めての作品は、シリーズ通算55作目。取り巻きは、舎弟の真に探偵の美咲、沢木組長と広瀬はんといういつものメンバー。債務者には過去にも数回出演している前田五郎に2回めの出演となる久保晶。不義理な債務者に穂積ぺぺ。悪党には寺島進や峰岸徹といったベテラン俳優陣が出演している。端役常連の宇野ポテトと山之内幸夫はいつもどおり。しかし、宇野ポテトは方言指導兼端役、山之内幸夫は法律監修兼端役ということで、二人ともよう稼いでる。

銀次郎の債務者である宮田は借金まみれで自己破産までした男だが、沢木組長から紹介を受けた銀ちゃんの融資1000万を元に、キャバクラ店をオープンするまで復活した男。店も順調でトイチの利子もキッチリと返してきたが、元金が全く減らない事に文句を言い始め、仕舞いには沢木組に対する店のミカジメ料惜しさに、元マル暴の危機管理コンサルタントの元を訪れ、銀次郎の借金と沢木組のミカジメから逃れる事に成功する…。

不義理極まりない債務者の宮田が酷すぎて、本来悪党役の峰岸徹演じる元マル暴が霞む。というか、この元マル暴はやってることはまともで、別に悪くも何とも無いのだが、宮田の義理を欠いた行動が、沢木の親分や銀ちゃんの怒りを買ったのだろう。今回のロジックは民法162条『所有権の取得時効』。専有による時効取得を取り消す所有権移転登記でカタに嵌めようとするも、最後は意外なトリックでキッチリと締める。途中のシーンで爆弾が爆発するという、恐らくシリーズ最初で最後のCGを使ったっぽい映像があるが、あれもきちんとした伏線だったと思うと、改めて本シリーズの力のある脚本に頭が下がる。十三の狭い道も激走する銀ちゃんの愛車はいつものブラバスSL。(SS)


製作: 2005年 日本85分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 桐谷健太 / Kenta KIRITANI, 岩崎ひろみ / Hiromi IWASAKI, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 宇野ポテト / Potato UNO, 井上茂 / Shigeru INOUE, 保積ペペ / Pepe HODUMI, 島田洋八 / Yohachi SHIMADA, ふじいあきら / AKira FUJII, 寺島進 / Susumu TERASHIMA, 前田五郎 / Goro MAEDA, 峰岸徹 / Toru MINEGISHI, 久保晶 / Akira KUBO, 山之内幸夫 / Yukio YAMANOUCHI, 下元年世 / Toshiyo SHIMOMOTO
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

難波金融伝ミナミの帝王 #54 賠償金の行方 / The King of Minami #54

★★

2005年製作のシリーズ第54作目。一連のシリーズ作品の製作を担ってきたKSSだが、製作にクレジットされるのは本作が最後のようだ。銀次郎の取り巻きは、前作から登場した探偵の美咲に舎弟の真、ヤーさんの沢木組長と広瀬はんは変わらず。債務者にはシリーズ第23作目『長編版』以来の出演となる大沢あかね。と言っても当時は子役だったが。悪党にはシリーズ第16作目の『偽装結婚』でエゲツないスナックのママを演じていた春やすこが、今回もぼったくりスナックの欲の塊のような極悪ママを演じており、その片棒にシリーズ第40作目の『裏金略奪』以来の出演となる元プロボクサーの薬師寺保栄。

今回はこれといった金融屋的なテーマが無いヒューマンドラマ系ストーリー。石橋ラーメンといえば大阪一のラーメンと有名だったが、今ではすっかり味も落ち、店には閑古鳥が泣いている始末。店主の石橋は元一流ホテルの調理人でありながら、食中毒が原因で解雇されたのだが、銀次郎に借金をしてラーメン屋を始め、どん底から這い上がった男。しかし、ある日暴漢に金属バットで襲われ大怪我を負って以来、店には立っていない。犯人は分かっており、民事裁判で損害賠償金支払いの判決も確定していたが、欲の塊のような犯人の母親は賠償金を一切払おうとせず…。

春やすこ演じる守銭奴の女がやたら憎たらしく、またこういう役に春やすこがピッタリで、キャスティングが秀逸。最後のキリ取りは少々エゲツない詐欺まがいのような手法だったが、銀次郎一流の中途半端なガキに対する教育方法だろうか。最後は珍しく悪党を足蹴にした銀次郎の怒りの奥に、ミナミの鬼の優しい一面を垣間見ることが出来る。ブラバスSLのオープントップを閉めつつ真を置き去りにするラストが何だか格好いい。(SS)


製作: 2005年 日本82分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 桐谷健太 / Kenta KIRITANI, 岩崎ひろみ / Hiromi IWASAKI, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 宇野ポテト / Potato UNO, 佐藤正宏 / Masahiro SATO, 大沢あかね / Akane OSAWA, 吉岡毅志 / Takeshi YOSHIOKA, 牧田麗子 / Reiko MAKITA, 山本志づ世 / Shiduyo YAMAMOTO, ぼんちおさむ / Osamu BONCHI, 薬師寺保栄 / Yasuei YAKUSHIJI, 松澤一之 / Kazuyuki MATSUZAWA, 春やすこ / Yasuko HARU, 山之内幸夫 / Yukio YAMANOUCHI
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

難波金融伝ミナミの帝王 #53 破産の葬列 / The King of Minami #53



2005年一発目のシリーズ第53作目。舎弟の真にヤーさんの沢木組長と広瀬はんは変わらずだが、本作から探偵として岩崎ひろみ演じる美咲が登場。美咲が最後のシリーズ最後の探偵ということで、歴代の探偵を振り返っておきたい。記載は出演順(のはず)。
・竹内みどり - 矢吹麻子。唯一銀次郎と濡れ場を演じた。
・未來貴子 - 桃子。
・可愛かずみ - よしこ。
・いしのようこ - 坂井涼子。矢吹探偵事務所所員で麻子の助手。
・キョウヘイ - 中山太吾朗。唯一の男探偵助手。
・坂上香織 - なつみ。麻子の助手。
・川島なお美 - 速水翔子。
・岩崎ひろみ - 美咲。
ということで、美咲はこれまでの探偵には無いスクータースタイルで調査に奔走している。Mr. オクレがシリーズ第9作目の『破産 − 乗っ取り』以来の出演。と言ってもほんの数秒の出演の足軽級端役。また、新藤栄作も第25作目『消えない傷跡』に引続き悪党役で出演している。悪役で出演経験したことのある俳優さんが再出演する場合は、大体が再度悪役で出演するようだ。

今回はのテーマは『自己破産』。葬儀屋を営む父親を亡くした息子の仲田は、晩年の父親が銀次郎から借りていた1000万もの借金も同時に遺産相続することになった。その借金を返済するため葬儀屋を継いだ仲田だが、妻の父は昔、銀次郎に借金をしており、それが原因の一つで不慮の事故死を遂げていた。そんな過去の因縁に後ろめたさを感じていた舎弟の真は何かにつけて仲田の葬儀屋を手伝うのだが、銀次郎の債務とは別で2000万もの借金があることが分かった仲田は自己破産を斡旋する『破産屋』の元を訪れる…。

『自己破産』絡みのストーリーは過去にも幾つか取り上げられており、シリーズ第28作目の『金融屋殺し』では悪党が用いた手法であり、第41作目『闇の裁き』では銀次郎が悪党をカタに嵌めるために用いたキリ取りテクニックだ。今回は『自己破産』をするために返す気も無い借金を債務者にさせていた破産屋に対して、『免責不許可事由』を切り札に、銀次郎一流のキリ取りで魅せる。葬儀屋稼業の紹介や業界の裏話がちょくちょく出ているが、葬儀屋に対する差別的発言もあったりとして、観ていて気持ちの良いものでは無い。銀次郎の愛車は黒のブラバスSL『なにわ310な77-77』。(SS)


製作: 2005年 日本 86分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 桐谷健太 / Kenta KIRITANI, 岩崎ひろみ / Hiromi IWASAKI, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 宇野ポテト / Potato UNO, 井上茂 / Shigeru INOUE, 西山浩司, 牛尾田恭代 (潮田恭代) / Yasuyo USHIODA, 新藤栄作 / Eisaku SHINDO, 大西結花 / Yuka ONISHI, 太平シロー / Shiro TAIHEI, Mr.オクレ / Mr. Okure, 佐々木勝彦 / Katsuhiko SASAKI
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

Friday, January 25, 2013

難波金融伝ミナミの帝王 #52 闇の代理人 / The King of Minami #52



シリーズ第52作目。どうでも良いが、本作からDVDに収録されている映像のレターボックス(黒い余白)が狭くなり、モニターに映る映像サイズが実質大きくなった。舎弟の真と探偵の翔子、ヤーさんの沢木組長と広瀬はんも変わらず。久々のオカマ絡みのネタゆえに梅垣義明が自動的に出演。債務者役には螢雪次朗がオカマバー兼料理店のオーナーで出演。なお、螢雪次朗はシリーズでも一二を争う名作の第20作目『待つ女』に出演しており2回目の登場。その他では山田雅人も全作の第19作目『保険金横領』に続く2回めの出演だが悪党役は変わらず。というか、山田雅人には悪党役がよく似合う。

今回のテーマはシリーズではもはや使い古された感のある『連帯保証人』と『計画倒産』。梅子の先輩オカマの永山は、昔からの夢であったオカマバーと割烹料理店のオーナーになるため、銀行からの融資に加え銀次郎から借金をしていた。一方、印刷屋社長の桜井は銀行融資に加え銀次郎からの借金も抱えた上に印刷の仕事も無く、借金返済の工面に難儀していた。そんな時、両方を知る銀行の担当者から『夜逃げ資金』の融資ということで、オカマの永山を連帯保証人にするように勧められる…。

タイトルの『闇の代理人』とは、いささかダークなイメージを与えるが、内容を考えるとこのタイトルは再考すべきだろう。キリ取りのネタも尽きてきたのか、最後は少々強引な手法で悪党を型に嵌めた銀次郎。結婚詐欺の話しも有耶無耶のままエンディングを迎えており回収しきれていないし、シリーズとして倦怠期に入ってきたようなないような。債務者の一人である頭師佳孝はその昔、かの名優故三船敏郎に『この子役あり』と言わしめた俳優で、黒澤映画の主役も務めたことの有る男。それが今回の債務者役とは、ミナミの帝王も名を上げたものだ。銀次郎の愛車は黒のブラバスSL『なにわ310な77-77』。(SS)



製作: 2004年 日本 98
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 桐谷健太 / Kenta KIRITANI, 川島なお美 / Naomi KAWASHIMA, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 宇野ポテト / Potato UNO, 梅垣義明 / Yoshiaki UMEGAKI, 螢雪次朗 / Yukijiro HOTARU, 栗島瑞丸 / Zuimaro AWASHIMA, 池乃めだか / Medaka IKENO, 頭師佳孝 / Yoshitaka ZUSHI, 山田雅人 / Masato YAMADA
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

Thursday, January 24, 2013

難波金融伝ミナミの帝王 #51 恐喝(おどし)のサイト / The King of Minami #51



シリーズ第51作目。銀次郎の取り巻きは前作に引続いて真と翔子のコンビ。沢木組長と広瀬はんも変わらず。悪党役には故桑名正博にデビット伊東。桑名は斑に染めた金髪が良く似合うが出演シーンとしてはかなり少ない。また、テンダラーというコンビ芸人の浜本と白川が実際の仕事そのまま芸人役で出演している。端役ではいつもの宇野ポテトと井上茂、ヤクザ役ばかりの中野裕斗に加え、ここのところ急激に出演回数を増やしてきた稲盛誠。前作では極道役、その前は取り立てのキツイ借金取りの役だったが、今回は芸能プロダクションのマネジャーということで、長めの髪とヒゲをたくわえてしっかり役作りしているあたりが心憎い。いつも同じ風貌風情の宇野ポテトや井上茂は勉強してほしい。

今回のテーマはタイトルどおりで、当時流行っていた携帯の出会い系サイトを巡る『架空請求詐欺』と『名簿ビジネス』。出会い系サイトにハマっていた男は、遊ぶ金ほしさに銀次郎から金を借りていたが、身に覚えの無い出会い系サイトの使用料を請求され、不払いの際には会社や自宅に押し掛けると脅され、ツイツイ支払ってしまう。しかし、そうした架空請求に支払った金も100万を超えて、銀次郎への借金を返せなくなった男は姿を消してしまう。一方、その出会い系サイトでアルバイトをしていた銀次郎の債務者は、見知らぬ男に『良い儲け話がある』と言われ、サイト利用者の顧客リストを盗み出してしまうが…。

当時はそれなりに話題だった出会い系サイトのお話だが、ストーリーとしてはそんなに煮詰まっておらず、銀次郎のキリ取りにあった悪党も特に抵抗せず金を支払うという、些か迫力不足のラストシーン。前作に引続き消化不足の要素もあって、井上茂演じるデパートの主任に関する要素が回収されないままエンディングを迎えており、どんなに細かい伏線もラストまでしっかり回収するという、ミナミの帝王シリーズの伝統が失われている。桐谷健太演じる真の舎弟ぶりも板についてきた。北区天神橋出身の彼はバリバリの大阪人だが、私が聞くところ、彼の関西弁は不思議と神戸っぽい感じがする。銀次郎の愛車は黒のブラバスSL『なにわ310な77-77』。(SS)



製作: 2004年 日本 84分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 桐谷健太 / Kenta KIRITANI, 川島なお美 / Naomi KAWASHIMA, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 宇野ポテト / Potato UNO, 井上茂 / Shigeru INOUE, 浜本広晃(テンダラー) / Hiroaki HAMAMOTO, 白川悟実(テンダラー) / Satomi SHIRAKWA, 稲盛誠 / Makoto INAMORI, 友近 / Tomochika, 磯部公彦 / Kimihiko ISOBE, デビット伊東 / Debit ITO, エド山口 / Edo YAMAGUCHI, 桑名正博 / Msahiro KUWANA, 濱田佳菜 / Kana HAMADA, 関本聖 / Hijiri SEKIMOTO, 中野裕斗 / Yuto NAKANO
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

難波金融伝ミナミの帝王 #50 スペシャル 金貸しの掟 / The King of Minami #50

★☆

ミナミの鬼と呼ばれるトイチの萬田銀次郎を主人公とした『難波金融伝 ミナミの帝王』シリーズ。1992年に第1作目が製作されて以来かれこれ10年以上が経つが、2004年最初の作品は区切りの50作目となるシリーズ初の『スペシャル』と銘打たれた作品。製作はよみうりテレビとケイエスエスとの共同制作。また、過去に『スペシャル』と付いた作品はシリーズ第21作目の『ローンシャーク・・・追い込み』と第40作目『裏金略奪』があるが、この2作は『スペシャル劇場版』であって、『スペシャル』というのが本作が最初で最後のようだ。

不動の主役は劇中でも本当に不動となってきた竹内力演じる萬田銀次郎。探偵は前作までの山本太郎演じる公平が引退したのか何なのか居なくなり、本作から桐谷健太演じる真(しん)が新たな舎弟として登場。探偵はいつもの川島なお美演じる速水翔子。ヤーさんはゆうき哲也演じる沢木英雄組長と若頭に天田益男演じる広瀬昇一は変わらず。その他ではスペシャルらしく、宇野ポテト…じゃなくて、元宝塚の大輝ゆう、警察役で常連の大門正明や極道役がよく似合う麿赤兒に隆大介とてんこ盛り。ここまで個性の強い俳優が揃うと河野太郎が余りに普通の男に見えてしまうが、芸人の千原ジュニアや石田靖、シリーズ2回めの登場となる島崎俊郎はそこそこの存在感。

今回の銀次郎の相手は極道の面々。先代が亡くなった杉浦組を組長代行として仕切る姐さんとその下で極道金融を営む若頭。その若頭と跡目を巡って争う代行補佐。一方、四国で計画されているリゾートホテル開発とその地元対策に駆り出された極道の面々。銀次郎は自分の債務者を極道金融に相保証&根保証で借金漬けにされた挙句、臓器担保なる裏手法で海外に飛ばされてしまい、借金が回収不能となっていた。そんな中、沢木組長の紹介で件のリゾートホテル開発の地元対策費が入り用となった中井組長に5000万の用立てを頼まれた銀次郎。その5000万を中井組長に届けたその刹那、何者かにその金を強奪されてしまう…。

50回の節目でもあり、豪華な出演陣に久々の100分越え作品ということで、気合が入ったのだろうが、萬田銀行の金に極道の跡目争いと極道金融を絡めるも、キリ取り手法としては特に鮮やかでも知的でもなく、これといった特色は無い。また、臓器担保で海外に売り飛ばされた銀次郎の債務者や残された家族などの、多くの要素が未回収のまま終幕しており、少々不完全燃焼気味。共演の大輝ゆうは、流石は宝塚出身というか、華がある顔立ちにしてなお迫力があり、極道の姐さん役が良く似合う。とは言っても岩下志麻には敵わないけどね。銀次郎の愛車は黒のSLで変わらず『なにわ310な77-77』。翔子の愛車はまたもや変更でシルバーのBMW Z3。(SS)


製作: 2004年 日本 112分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 桐谷健太 / Kenta KIRITANI, 川島なお美 / Naomi KAWASHIMA, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 宇野ポテト / Potato UNO, 大輝ゆう / Yu DAIKI, 千原浩史(千原ジュニア) / Hiroshi CHIHIRO, 島崎俊郎 / Toshiro SHIMAZAKI, 石田靖 / Yasushi ISHIDA, 浪花勇二 / Yuji NANIWA, 山西惇 / Atsushi YAMANISHI, 大谷允保 / Mitshuho OTANI, 大門正明 / Masaaki DAIMON, 川野太郎 / Taro KAWANO, 隆大介 / Daisuke RYU, 麿赤兒 / Akaji MARO
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

Wednesday, January 23, 2013

ディパーテッド / The Departed



2002年の大ヒット香港ノワール「インファナル・アフェア (Infernal Affairs)」を元に、主演レオナルド・ディカプリオとマット・デイモン、共演にジャック・ニコルソンを据え、マーティン・スコセッシ監督で製作されたハリウッド版リメイク作品。マフィアに潜入した潜入捜査官と警察に潜入したマフィアの男。あらゆる意味で対照的な2人の男の数奇な人生を描く。なお、インファナル・アフェアは日本でもTBSとWOWOWの共同制作作品『ダブルフェイス』としてリメイクされている。

舞台はマサチューセッツ州ボストン。犯罪組織と繋がりを持つ自らの家族や親類と決別するべく警察官を志したレオナルド・ディカプリオ演じるビリー・コスティガン。片や、地元アイリッシュ系マフィアのボスである、ジャック・ニコルソン演じるコステロによって幼少期より育てられ、マフィアのスパイとなるべく州警察の一員となったマット・デイモン演じるコリン・サリバン。二人は同じ警察学校で学び、互いの存在を知らぬまま、共に優秀な成績で卒業するが、警察に入った後の職務は全く異なるものだった。ビリーは警察の悲願であるコステロを逮捕するために、潜入捜査官としてマフィアに送り込まれ、コリンはそのマフィアを撲滅のするための特別捜査班に抜擢される。立場は違えどお互いに警察とマフィアという正反対の立場を持つ二重生活を送るビリーとコリン。やがて、警察・マフィア共に組織に潜入する『ネズミ』の存在に気づき始める…。

歳を重ねて演技に益々円熟味が増してきたレオナルド・ディカプリオとマット・デイモンの演技が非常に秀逸。また、共演のジャック・ニコルソンやアンソニー・アンダーソンも素晴らしく、誰彼構わず口悪く罵るアンソニー・アンダーソン演じる警部は物語のキーでもある。しかし、本作の素晴らしさはやはり原作が持つ素晴らしいストーリーだろう。潜入捜査官と警察に潜入するマフィアという全く異なる二人を上手く対比しつつ、濃密で飽きさせない展開で152分という長丁場の映画であることを全く感じさせない。ラストシーンまで瞬きすることすら許さない最高のクライム・サスペンス。(SS)


製作: 2006年 アメリカ 152分
監督: マーティン・スコセッシ / Martin SCORSESE
製作: 
出演: レオナルド・ディカプリオ / Leonardo DiCAPRIO, マット・デイモン / Matt DAMON, ジャック・ニコルソン / Jack NICHOLSON, マーク・ウォールバーグ / Mark WAHLBERG, マーティン・シーン / Martin SHEEN, レイ・ウィンストン / Ray WINSTONE, ヴェラ・ファミーガ / Vera FARMIGA, アレック・ボールドウィン / Alec BALDWIN, アンソニー・アンダーソン / Anthony ANDERSON
ジャンル: サスペンス, クライム, R15+
鑑賞方法: Blu-ray

Monday, January 21, 2013

シベリア超特急 00・7 〜 汽車の中で悪霊が鳴く 〜/ Siberian Express 7

★☆

日本の映画史に残る名作である『シベリア超特急』シリーズ第7弾は、シリーズ第4弾に続く舞台作品である。タイトルの『00・7』がやや意味不明だが、当時は山下閣下の恋をテーマにしたシリーズ第6弾の製作が予定されており、かつ日本ユナイト映画時代の水野晴郎が宣伝担当をしていた『007シリーズ』のパロディとして『00・7』としたようだ。舞台のテーマとしては前回と同じで、映画版のキャストが集合しており、Version 1: 『ベルリンからの密使』と、Version 2『W佐伯大尉』の2回が上演され、セル作品としては2つの舞台の映像を水野晴郎が再構成した作品が『シベリア超特急 00・7』として発売されている。例によって演出、脚本、製作はマイク・ミズノ、監督は水野晴郎。もはやストーリーはどうでもいいだろうが一応アウトラインを書いておくと、光本幸子演じる平岡千鶴子外務大臣の就任パーティーにおける乾杯の刹那、ある老人が何者かによって殺害されてしまう。平岡外務大臣は62年前にシベリア超特急の車内で起きたある事件の事を語り始める…、というもの。

グダグダのオープニングは『007シリーズ』のオープニングに対するオマージュというか、そのまんまのモロパクリで、水野が襲いかかる悪漢をバタバタと切って倒すシーンから始まるが、本編とは全く関係がない。その後、前回の舞台と同様に安井昌二や小田切みきといった歴代の出演俳優陣に加え、何故か山城新伍が演技もクソもないフリートークで登場する。しかも、山城はエンドロールのクレジットで最上位に記載されており、益々理解不能。その後も唐突にザ・グレート・サスケが登場し、そのサスケが師匠と崇める謎のレスラー、シベリアタイガーとして水野が登場するなど、もはやシベリア超特急の世界観を完全に無視した暴走列車の展開。と、ここで油井昌由樹のナレータで再度シベ超ワールドに引きずり戻されるが、シリーズで佐伯大尉役を演じた西田和昭と竹田高利によるW佐伯大尉なるマニア向けギャグ、さらにチャイニーズ・エンジェルなるこれまたパクリの3人組のB級アクションをぶっ込んだりと、シリーズのコアなファンでも理解不能な、完全に方向性を失ったコメディ舞台となっており、前回にも増して真面目に『舞台』に取り組んでいる方々に失礼な作品。ここまでストーリー展開が薄っぺらだと、演技や台詞回しなどはどうでも良く、舞台としてもDVDとしても、果たしてお金を取って世の人に見てもらうレベルに達しているのか否かという、商用販売品としての根本が問われていると言っても過言ではないだろう。

Version 1 & 2と上演された舞台を観たわけでないので、本作を一括りにして断罪することは出来ないのだが、一人のシベ超ファンとして誤解を恐れずに言えば、DVDでリリースされた水野特別編集版という本作品に関しては、シリーズ最低作と断言できる。グダグダで粗雑な編集、唐突で繋がりを無視した展開と編集、スクリーンサイズの半分に切られた多くのシーン、BGMの音量調整が出来ておらず台詞が聞こえづらいという致命的なミス、更には、シベ超の意義根幹に関わる『反戦メッセージ』ですら乱暴で唐突に挿入されており、苦笑や冷笑を通り越し、もはや怒りのレベルにまで堕ちてしまっている。素人がiMovieで編集してもこれよりも綺麗な映像作品に仕上げられるだろう。

シベ超シリーズ不変の一本軸は『謎解きの面白さ』、『反戦メッセージ』と『ドンデン返し』であると思うのだが、『謎解きの面白さ』に関しては皆無。ドンデン返しは無理矢理。かろうじて『反戦メッセージ』が薄く織り込まれた本作は、シベ超シリーズというよりも、シリーズのスピンオフ作品くらいの位置づけで良いのではと思う。ただ一点、舞台冒頭で『俺関係ねぇーよ』と言い放った水野の台詞は、本作のみならず、シリーズ全体をとおして唯一と言って良い迫力のある台詞。その台詞さえも、他の出演者にかき消されてしまっているが。

シベ超を観る前はいつもドキドキというか、なんとも言えないワクワク感があったものだ。今回もその高揚感を持ちつつモニターの前に座ったが、ストーリーが展開するに連れて、そのワクワク感とは真逆の気持ちになってしまい少々後味が悪い。果たして本作を舞台と思っていいものか。子供の学芸会の出し物かと見間違う完成度の低さは、シベリア超特急のコアなファンでもおいそれと受け入れ難いものだが、しかしこれを許し、愛してこそ真のシベ超ファンと言えるのかもしれない。(SS)


製作: 2004年 日本 166分
監督: マイク・ミズノ / Mike MIZUNO
製作: 水野晴郎 / Haruo MIZUNO
ナレーター: 油井昌由樹 / Masayuki YUI
出演: 水野晴郎 / Haruo MIZUNO, 西田 和晃 (西田和昭) / Kazuaki NISHIDA, 光本幸子 / Sachiko MITSUMOTO, 安井昌二 / Shoji YASUI, 小田切みき / Miki ODAGIRI, 乾貴美子 / Kimiko INUI, 金濱夏世 / Natsuyo KANAHAMA, 竹田高利 / Takatoshi TAKEDA, 山城新伍 / Shingo YAMASHIRO, インゲ・ムラタ / Inge MURATA
ジャンル: ミステリー, 舞台
鑑賞方法: DVD

レビュー後記: シベリア超特急シリーズは、映画作品4作と舞台2作品の全6作品が製作された。シリーズ第1弾を観た時の衝撃は今でも忘れられない。この稀有な一連の作品を制作したマイク・ミズノこと水野晴郎氏は2008年6月10日15時05分、肝不全により死去。76歳であった

Friday, January 18, 2013

難波金融伝ミナミの帝王 #49 仮面の女 / The King of Minami #49



2003年製作のシリーズ第49作目。しかし、現実はさておき、作中でトイチの萬田銀行へ借金の無心へ来る人が良く来るものだと思う。舎弟の公平に探偵の翔子、ヤーさんの沢木組一家はいつものとおり。他では、債務者の鉄工所社長に河原崎健三、経営コンサルタントと称する詐欺師に夏樹陽子。常連の端役では井上茂、宇野ポテトに下元年世、ヤクザ役が多い河本タダオなど。なお、エンドクレジットでは夏樹陽子の七変化的な映像が出てくるのだが、彼女に対する何らかのサービスだろうか。

今回のテーマは手形詐欺。とある病院の理事長選挙に使う実弾として経営コンサルタントと称する女に2000万ほど預けると、当選した暁には3000万で返ってくるという余りにもうまい話。普通に考えてみればこんな儲け話に乗る訳が無いのだが、金を預かる詐欺師の女が3000万の手形を振り出すため、欲の皮が突っ張った連中はこぞって2000万を預けてしまうのだが、その手形は偽名で振り出されている上に、女は姿を消してしまう…。

最後のキリ取りでは、詐欺師を目の前にして『詐欺師の上前ハネるんがミナミの萬田や』と言い放ち、久々の常套文句『善意の第三者』を持ちだして、恐らくシリーズ最高キリ取り金額と成る3億5千万を回収することに。カタに嵌められた詐欺師を演じるのは夏樹陽子だが、詐欺師の顔と普段の顔のギャップをキッチリと演じており流石はプロだなと感心した次第。銀ちゃんの愛車SLは変わらず。翔子の愛車は再びBMWのZ3だが濃い緑色の別の車『なにわ300か68-09』(SS)


製作: 2003年 日本83分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 山本太郎 / Taro YAMAMOTO, 川島なお美 / Naomi KAWASHIMA, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 井上茂 / Shigeru INOUE, 宇野ポテト / Potato UNO, 河原崎健三 / Kenzo KAWARAZAKI, 里見まさと / Masato SATOMI, 影山英俊 / Hidetoshi KAGEYAMA, 中山美保 / Miho NAKAYAMA, 河本タダオ / Tadao KOMOTO, 野崎かずみ / Kazumi NOZAKI, 麻生えりか / Erika ASO, 木村栄 / Sakae KIMURA, 夏樹陽子 / Yoko NATSUKI, 下元年世
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

難波金融伝ミナミの帝王 #48 一千万の銃弾 / The King of Minami #48



2003年製作のシリーズ第48作目。公平、翔子に沢木組一家は変わらず。今となってはすっかり政治家風情のそのまんま東が債務者のロシアンクラブ店長として出演している。悪党にはその昔、かなりのやんちゃブリで名を馳せた宇梶剛士。ところで、シリーズの法律監修を行なっている山之内幸夫だが、本人が好きなのか否か端役として井上茂や宇野ポテトらと同様の常連俳優。本作では本職でもある弁護士役として出演している。

債務者を丸裸にして紐で縛り上げ、はちみつを体に塗りたくった挙句に山中に放置プレイという、いつにも増してヤクザまがいのキリ取りを見せる銀次郎のオープニングから始まる本作は、管理売春を行うロシアンクラブの経営権を利用した詐欺がテーマ。そのまんま東が演じる債務者の田端はロシアンクラブの経営権を買い取り、店の売上も順調だったのだが、しばらくすると警察の手入れがあり、田端は入国管理法違反と売春規制法で逮捕されてしまう。だが、裏で警察に賄賂を渡して手入れ情報を仕入れていたロシアンパブのオーナーが、警察による摘発と自らに手が及ぶのを事前に回避するために、田畑に経営権を売り渡したものだった。しかも、契約により店の経営権は売り渡す事が出来ないようになっており、何もかも失った田端はとんでもない行動に出る…。

ロシアに長くいた事のある私としては、出稼ぎにきた日本で売春をするロシア人が絡むストーリーに少々寂しい思いを抱いた。それはさておき、悪党役の宇梶剛士はシリーズに出演した歴代の悪党の中でも一二を争う迫力の持ち主。演技はさておき、声がデカく関西弁は素人の私からみても拙いが、銀次郎とのファースト・コンタクトではなかなかの迫力で魅せる。最後のキリ取りのロジックには養子縁組を用いており、同様の手法が今でも有効とは思わないが、まったく役所というところはいい加減なところだと思った次第。墨入りの眉毛が目立つようになってきた銀ちゃんの愛車はSL77-77で変わらず。(SS)


製作: 2003年 日本 86分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 山本太郎 / Taro YAMAMOTO, 川島なお美 / Naomi KAWASHIMA, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 宇野ポテト / Potato UNO, 井上茂 / Shigeru INOUE, 山之内幸夫 / Yukio YAMANOUCHI, そのまんま東 / Higashi SONOMANMA, 九十九一 / Hajime TSUKUMO, 村上ショージ / Shoji MURAKAMI, ティーアップ前田 / Teeup MAEDA, 草川祐馬 / Yuma KUSAKAWA, 大門正明 / Masaaki DAIMON, 宇梶剛士 / Tsuyoshi UKAJI, 都筑俊 / Toshi TUZUKI
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

探偵はBARにいる / The Detective is in the Bar



札幌在住の作家、東直己の原作小説バーにかかってきた電話を映画化した作品。主演の探偵『俺』に大泉洋、相棒兼運転手の高田に松田龍平を配し、探偵のモノローグ形式で綴るハードボイルド作品。札幌最大の歓楽街ススキノが舞台の本作は、設定が冬なため雪の札幌のシーンが多く出てくる。また、探偵役の大泉洋も北海道出身で、水曜どうでしょうなど、長らく道内で活動をしてきた俳優であるため、北海道人には嬉しい作品。

舞台はススキノ。この街を知り尽くした探偵の『俺』と相棒の高田はいつものとおり、行きつけのバー『ケラー・オオハタ』で酒を飲みつつ、オセロに興じていた。『俺』は特定の事務所を持たず、連絡手段はバーへの電話のみ。ある夜、『コンドウキョウコ』と名乗る女から仕事の依頼があった。奇妙な依頼だが、簡単な仕事だと踏んだ探偵は早速次の日に依頼を遂行するも、その直後、拉致された挙句に雪に埋められ危うく死にかけてしまう。怒りに燃える探偵だが再び『コンドウキョウコ』から依頼の電話が…。その奇妙な依頼をこなしつつも、自分を拉致した人間たちへの報復に燃える探偵。調査を進めると次々と不可解な事件が浮かび上がってきた。『コンドウキョウコ』とは誰なのか、それぞれの事件は繋がっているのか。事件は意外な形で結末を迎える…。

冒頭でハードボイルド作品と書いたが、随所にユーモアも織り交ぜつつ、ストーリーは展開していく。というより、かなりユーモアの量が多いのだが、だからといって決して笑い溢れる作品という訳ではなく、かなりハードな残虐シーンやアクションを混ぜつつ、ウィスキーとタバコの煙が漂うハードボイルド路線を堅実に保持する絶妙なバランスが秀逸。主演の大泉洋の演技や立ち振舞が観ていて安心でき、ノンビリとした相棒を演じる松田龍平との対比の妙が心地良い。探偵がいつも朝食を取る喫茶店の店員やバーのマスターなど、余計な説明が無いのも良いところ。ラストシーンでは、探偵から依頼者のモノローグ形式に変わって、事件の真相を一気に明かしてしまうところが、2時間サスペンス・ドラマのようで頂けないが、久々に面白い邦画を観たという感想は揺らがない。2013年5月に公開予定の続編が待ち遠しい。(SS)


製作: 2011年 日本 125分
原作: 東直己 / Naomi AZUMA『バーにkかってきた電話』
監督: 橋本一 / Hajime HASHIMOTO
出演: 大泉洋 / Yo OIZUMI, 松田龍平 / Ryuhei MATSUDA, 小雪 / Koyuki, 西田敏行 / Toshiyuki NISHIDA, 田口トモロヲ / Tomoro TAGUCHI, 波岡一喜 / Kazuki NAMIOKA, 有薗芳記 / Yoshiki ARIZONO, 竹下景子 / Keiko TAKESHITA, 石橋蓮司 / Renji ISHIBASHI, 松重豊 / Yutaka MATSUSHIGE, 片桐竜次 / Ryuji KATAGIRI, カルメン・マキ / Carmen MAKI, 吉高由里子 / Yuriko YOSHITAKA, 高嶋政伸 / Masanobu TAKASHIMA
ジャンル: サスペンス, アクション, ハードボイルド
鑑賞方法: DVD

Thursday, January 17, 2013

難波金融伝ミナミの帝王 #47 誘惑の華 / The King of Minami #47



シリーズ第47作目。冒頭に『これはフィクションであり実在の場所とは関係ありません。』というテロップが流れるが、知る限りではミナミの帝王 シリーズでは初の冒頭における断り書きかと思う。それに続いて『豊田新地』のシーンに移るのだが、これはまぁ西成区にある日本最大級の赤線地帯である『飛田新地』のことだろう。何故『豊田』なのかは意味不明だが、本作はこの飛田新地を舞台に展開する。ちなみにお遊びの料金は11,000円だそうで。舎弟の公平、探偵の翔子とヤーさんの沢木組一家はいつものとおり。なお、沢木組長は胃潰瘍で入院中のため、出演シーンは病院内のみ。また、ストーリーの理解が深まるので、飛田新地に関する基礎知識を事前に頭に詰め込んでおくことをお勧めする。

ということで、本作のテーマは飛田新地で働く女にハマる男にホストクラブにハマる女。そして極道とツルむ悪徳ホストクラブが今回の銀次郎のキリ取り対象者。悪徳ホストクラブは店に借金を作った女を何とかしようと、飛田新地の料亭組合に『ミテコ(18歳以下の女の子)』を紹介して弱みを握った挙句に、借金のカタとして女を売り飛ばしていた。一方、新地の女にハマる男は銀次郎の借金の返済に当てようとしていた自社ビル売却が上手く行かず困り果てていたが、翔子が調査を進めるとその裏には悪徳ホストクラブ関係者が暗躍していることを突き止める…。

ホストクラブ。私は行ったことはないのだが、何しろ焼酎の吉四六が1万円以上もする世界。『酒は原価で』が信条の私としては、ホストクラブで金を散財する、まして借金までして何百万もするボトルを入れる女の気持ちが全く理解できないのだが、こういう世界があるのも現実。そして飛田新地。こちらも行ったことは無いのだが、ホストクラブに入れあげた結果として飛田新地で働くことになった女の過程や、この街が持つ長い歴史が作り上げた独特のルールや考え方、そこに生きる人々が紹介されており、シリーズ第33作『商工ローン』で的屋稼業が紹介されたように、本作では飛田新地の様子が細かく描写されている。

銀次郎が最後のキリ取りに適用したロジックは民事再生法の個人再生手続きだが、本作を観ただけではよく分からず何となくモヤモヤ。見終わった後にググったところやっと理解できたが、簡単は話なので作中でもう少し説明してもいいかと思う。愛車は引続き新型SL。ピカピカに磨き上げられた黒いボディとワインレッドの内装が銀次郎によく似合う。(SS)


製作: 2003年 日本88分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 山本太郎 / Taro YAMAMOTO, 川島なお美 / Naomi KAWASHIMA, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 宇野ポテト / Potato UNO, ぼんちおさむ / Osamu BONCHI, 嘉門洋子 / Yoko KAMON, 島村晶子 / Akiko SHIMAMURA, 辻本晃良 / Akiyoshi TSUJIMOTO, 上野潤 / Jun UENO, 石倉英彦 / Hidehiko ISHIKURA, 岡崎二郎 / Jiro OKAZAKI
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

J・エドガー / J. EDGAR



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アメリカ連邦捜査局FBIの初代長官であるジョン・エドガー・フーバーの生涯を、監督クリント・イーストウッド、主演レオナルド・ディカプリオで映画化した作品。FBIの前身組織である司法省捜査局長官代行に若くして就任して以来、48年という長期にわたりFBIに君臨し続け、その間に変わった8人の大統領でさえも抑えることの出来なかった強大な権力を掌握した男の生涯を描く。

FBI長官のJ・E・フーバーは彼自身の回顧録の作成を行うため部下にタイピングを命じて過去の事件を語り出した。司法省に勤務していたフーバーは新設された急進派対策課を任される。その時に出会ったヘレンにプロポーズするも断られてしまうが、しかし、彼女は信頼出来るフーバーの個人秘書として生涯にわたって側に仕えることになる。その後、FBIの前身となる司法省捜査局の長官代行となったフーバーは、公私共に片腕となるクライド・トルソンと出会い、全国民の指紋情報の集約や科学的捜査手法の導入、逮捕権や武装化などを次々と導入し、自らが信じる国家の道徳と秩序を守るべく、理想の連邦捜査局を築き上げていく…。

フーバーが部下に回顧録をタイピングさせながら語るというダイアローグ形式で物語は進行するのだが、現在から過去とシーンが目まぐるしく展開する一方、殆どのシーンは非常に暗く、年老いたフーバーなのか若き頃のフーバーなのか判別できない時もあり、雑多で一本軸の無いストーリー展開が見ている者の理解を妨げる。だが、年老いたフーバーとクライド・トルソンを演じるレオナルド・ディカプリオとアーミー・ハマーの演技は素晴らしく、特殊メイクで誤魔化しただけの表面だけの演技とは一線を画している。特に、アーミー・ハマーのそれは秀逸で彼の役者魂が垣間見れる。そういう目で観れば、ナオミ・ワッツの演技は稚拙で少々残念。伝記としては素晴らしい映像作品といえるのだろうが、映画としては評価が別れる作品。(SS)


製作: 2012年 アメリカ 137分
監督: クリント・イーストウッド / Clint EASTWOOD
製作: 
出演: レオナルド・ディカプリオ / Leonard DiCAPRIO, ナオミ・ワッツ / Naomi WATTS, アーミー・ハマー / Armie HAMMER, ジュディ・デンチ / Judi DENCH, ジョシュ・ルーカス / Josh LUCAS, ジェフリー・ドノヴァン / Jeffrey DONOVAN
ジャンル: ドラマ, 伝記
鑑賞方法: Blu-ray

Monday, January 14, 2013

難波金融伝ミナミの帝王 #46 海に浮く札束 / The King of Minami #46



2003年製作のシリーズ第46作目。公平に翔子、沢木の親分と広瀬はんと、いつもの取り巻き。シリーズ第3話『金貸しの条件』で四国の悪徳金融会社社長を演じた本郷功次郎が2度めの出演を果たしているが、今回は人情に厚い漁業組合長の役。その他では山下真司が出演していた大映テレビの往年の名作『スクールウォーズ』で、天才ラガーマンの平山役をを演じた四方堂亘が悪徳建設会社とツルむ極道を演じている。しかし、この人は昔から顔が変わらない。

本作のテーマはシリーズ第43作目の『建設業と裏金』に似たような色合い。その43作目はマンションのデベロッパーの話だったが、今回は当時まだ増設工事を行なっていた頃の関西国際空港の埋め立て工事に関わる入札の談合やら漁業補償金やらにまつわるドロドロとした裏金の世界がテーマとなっている。

最後のキリとりに至る過程で翔子が違法な証拠収集に手を出しているが、黒いフェイクレザーのワンピースを着込んで夜に忍び込む様は、完全にキャッツアイの見過ぎだと思われる。また、悪党を型に嵌めるシーンはトリックがチープ過ぎるし、ストーリー全体としても冒頭の『現金用立て屋』のロジック以外は、銀次郎一流の知識もテクニックも少なく、少々迫力に欠ける。

ところで、銀次郎の愛車であるブラバスチューンのメルセデスSLが、前作までのR129型に代わってR230型の新型モデルに変更となった。色は黒でブラバスかAMGあたりのチューンかと思うのだが、本作の映像からは不明。(SS)


製作: 2003年 日本93
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 山本太郎 / Taro YAMAMOTO, 川島なお美 / Naomi KAWASHIMA, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 宇野ポテト / Potato UNO, 井上茂 / Shigeru INOUE, 山之内幸夫 / Yukio YAMANOUCHI, 塩野谷正幸 / Masayuki SHIONOYA, 四方堂亘 / Wataru SHIHODO, 西宮香織 (吉内里見) / Kaori NISHIMIYA (Satomi YOSHIUCHI), 山本竜二 / Ryuji YAMAMOTO, 加藤明日美 / Asumi KATO, 桂きん枝 / Kinshi KATSURTA, 入川保則 / Yasunori IRIKAWA, 本郷功次郎 / Kojiro HONGO, 芝本正 / Tadashi SHIBAMOTO
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

Sunday, January 13, 2013

難波金融伝ミナミの帝王 #45 詐欺の手口 / The King of Minami #45



2002年製作のシリーズ第45作目。本作はツタヤのポストレンタルで人気が高いのにレンタル準備枚数が少ないので、なかなか借りられない作品なのだが、後述する日活ロマンポルノ女優である風祭ゆきの往年のファンでも借りているのだろうか。銀次郎の取り巻きはいつものとおりで、舎弟は山本太郎演じる公平。探偵は川島なお美演じる翔子。沢木組長と若頭にゆうき哲也と天田益男。端役の井上茂、宇野ポテトに山之内幸夫もしっかり。今回の出演俳優陣に特筆すべき人はいないが、ただ、金融の社長に日活ロマンポルノの全盛期を支えた女優の一人でタランティーノの『キル・ビル』にも出演していた風祭ゆきが悪徳金融の女社長として出演している。

萬田銀行の上前をはねる3日で一割の『ミッカイチ』という高利貸しと、その高利貸しに指南する金主でかつ詐欺師が銀次郎のキリ取り相手。ミッカイチ金融の女社長は金主の詐欺師の指南を受け、銀次郎の債務者を詐欺に嵌めた挙句に、貸してもいない5000万の借金を背負わせる。一方、この債務者に対して3000万を融資した銀次郎だが、担保にした土地には譲渡担保の仮登記がされており、悪党詐欺師は銀次郎をも詐欺に嵌めようとしていた…。

シリーズでも一二を争う悪党のクソッタレ詐欺師が登場。これほどの悪党はシリーズ第2作目の『計画倒産』シリーズで登場した極悪証券マン以来じゃないだろうか。そして、ミッカイチ金融の女社長も極悪非道だが、その上前をハネる詐欺的キリ取りで魅せる銀次郎。『目には目を、詐欺には詐欺を』と言わんばかりの痛快な手法で最後を締める。タイトルどおり多くの詐欺の手口が紹介されているので、以下にまとめておきたい。

『カゴ抜け詐欺』: 関係のない建物に入り、そこの関係者のように見せかけて相手を信用させ、金品を受け取ると相手を待たせておきつつ、自分は建物から姿を消すという手口。
『トリック詐欺』: 偽物の宝石類や時計などを本物に見せるために、少しだけ本物を混ぜたり、盗んできたかのようにガラス片を混ぜたりするなどして、相手を騙す手法。
『贈答詐欺』: 詐欺師が連帯保証人やら借金に使用した印鑑を人に贈って、その本人が貰った印鑑を実印登録した時には、全てを押し付けられるというもの。
『二重担保詐欺』: 譲渡担保の仮登記申請を悪用した詐欺。金銭貸借契約で返済が滞った場合、差し押さえの対象にすると認めたものが担保だが、譲渡担保は返済より担保物件を譲り渡す事を前提としており、その仮登記には順位保全の順位があるため、先に登記をしたもの優先弁済の権利がある。
『訴訟詐欺』: 何ら請求権のない者が裁判所に訴訟を提起し、嘘の書類や証拠を提出したりして裁判所を欺いて判決やら決定やらを取得して、相手から金品を巻き上げること。

ネタバレで恐縮だが、最後のキリ取り前述の『訴訟詐欺』を使ったもので、裁判所から送付された債務の弁済命令書に対して、受け取った本人が2週間以内に異議申し立てをしなければ、その弁済命令書が有効と認められる制度を悪用して、相手が海外旅行で不在のうちに9000万の債務をでっち上げたという手口。

ということで、全編詐欺だらけの作品だが最後のキリ取りも痛快でスッキリと見終える事が出来た。最近、銀次郎の『フッ』という半笑いの顔で終わるエンディングが多く、相生橋のエンディングが少なくなってきたのは気のせいだろうか。愛車のブラバスチューンSLと翔子の白のアルファロメオは変わらず。(SS)


製作: 2002年 日本 87分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 山本太郎 / Taro YAMAMOTO, 川島なお美 / Naomi KAWASHIMA, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 山之内幸夫 / Yukio YAMANOUCHI, 宇野ポテト / Potato UNO, 井上茂 / Shigeru INOUE, 平井昌一 / Shoichi HIRAI, 浅見小四郎 / Koshiro ASAMI, 風祭ゆき / Yuki KAZAMATSURI, 芦川誠 / Makoto ASHIKAWA, ベーブルース高山 / Bay-blues TAKAYAMA, 相澤一成 / Kazunari AIZAWA, 黒部進 / Susumu KUROBE
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

スーパー・チューズデー ~正義を売った日~ / The Ides of March



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監督ジョージ・クルーニー、製作総指揮レオナルド・ディカプリオというビッグネームだけでも話題十分の本作は、スーパー・チューズデーと呼ばれるアメリカ大統領予備選を舞台に描いた作品。見方によってはサスペンスという向きもあろうが、魑魅魍魎が跋扈する政治の世界に、理想を持って疾走する若き選挙スタッフ、大統領候補を担ぎあげる『選挙屋』にマスコミも絡めた、大統領選挙を闘う人々を描いたヒューマン・ドラマというところだろう。原題は『The Ides of March』。主演にライアン・ゴズリング、監督のジョージ・クルーニーが大統領候補のモリス役としても出演。

民主党予備選の最有力候補であるペンシルベニア州知事のマイク・モリス陣営は、多くの代議員確保がかかるオハイオ州予備選を目前に控えていた。モリス陣営の選挙を取り仕切るのは、ポール・ザラと若き広報官のスティーヴン・マイヤーズ。ポールは政策や理想よりも『選挙屋』として、モリスを如何に当選させるかに苦心していたが、スティーブンはモリスが掲げる理想を信じつつ、広報官として辣腕を振るっていた。そんなある日、スティーヴンはライバルの共和党陣営から引き抜きの依頼を受ける…。

この手のヒューマン・ドラマでは良くあるのだが、舞台としては別に大統領選挙でも社長候補戦でも良く、ストーリーとしては単純で深みは無い。がしかし、アメリカ大統領選挙予備選という、映画にするにはお誂え向きの舞台の上で大統領候補、選挙参謀とスタッフ、ライバル陣営にマスコミという泥臭い人間関係をテンポよく描いており、最後はそれなりに気持ちよく見終える事ができる。(SS)


製作: 2012年 アメリカ 101分
監督: ジョージ・クルーニー / George CLOONEY
製作: レオナルド・ディカプリオ / Leonard DiCAPRIO
出演: ライアン・ゴズリング / Ryan GOSLING, ジョージ・クルーニー / George CLOONEY, フィリップ・シーモア・ホフマン / Philip Seymour HOFFMAN, ポール・ジアマッティ / Paul GIAMATTI, マリサ・トメイ / Marisa TOMEI, ジェフリー・ライト / Jeffrey WRIGHT, エヴァン・レイチェル・ウッド / Evan Rachel WOOD
ジャンル: ドラマ, サスペンス
鑑賞方法: Blu-ray

リンカーン弁護士 (映画) / The Lincoln Lawyer (film)

★★

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マイクル・コナリー原作の『刑事弁護士ミッキー・ハラーシリーズ』第1作目である同名小説を原作とした法廷サスペンス。日本での配給界会社は日活だが、そのせいか否か、特段派手な宣伝も行われず話題にも登らなかったと記憶する。

タイトル通りに高級車リンカーンを事務所代わりにしている弁護士のミックは、良く言えば法廷での戦い方を熟知した敏腕弁護士。しかし、検察や警察から言わせると、報酬次第で汚いテクニックを使うことも辞さない汚い弁護士だ。そんなミックの元へ、資産家の御曹司ルイスの女性レイプ殺人未遂容疑の弁護の依頼が。簡単な裁判に高額報酬と踏んだミックだったが、調査を進めると依頼人の嘘や過去に犯したであろう罪が次々と露見する。そして、更に調査を進めるとミック自身が依頼者の仕組んだ巧妙な罠に嵌められていた事に気付く…。

ポップな画作りと音楽でオープニングを迎えるためか、当初はカジュアルな作品かと思ったが、その実はかなりハードボイルド系の秀逸な法廷サスペンスドラマ。ストーリー展開や謎解き、法廷サスペンス特有の時系列展開の中に、観る者をトリックに嵌める罠もしっかり入れ込み、最後まで飽きずに見られる。法を武器に戦う弁護士としては最後の力技は少々反則っぽいが、家族を守るためなら致し方無いだろう。原作は未読だが恐らく映画を超える面白さと想像して間違いない。 ミック役のマシュー・マコノヒーにマリサ・トメイやジョン・レグイザモなどキャスティング秀逸で、続編が待ち遠しい。(SS)


製作: 2012年 アメリカ 119分
監督: ブラッド・ファーマン / Brad FURMAN, 
製作: 
出演: マシュー・マコノヒー / Matthew McCONAUGHEY, マリサ・トメイ / Marisa TOMEI, ライアン・フィリップ / Ryan PHILLIPPE, ジョシュ・ルーカス / Josh LUCAS, ジョン・レグイザモ / John LEGUIZAMO, マイケル・ペーニャ / Michael PENA, フランシス・フィッシャー / Frances FISHER, ボブ・ガントン / Bob GUNTON, ブライアン・クランストン / Bryan CRANSTON, ウィリアム・H・メイシー / William H. MACY
ジャンル: 法廷, サスペンス
鑑賞方法: DVD

Saturday, January 12, 2013

デンジャラス・ラン / Safe House

★☆

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『デンジャラス・ラン』と邦題が付けられた本作は、南アフリカにある『隠れ家 ― Safe House』と呼ばれるCIAの秘密施設に、ある凶悪犯罪者が連行されてくるところから始まる。ちなみに、原題は『Safe House』。主演の凶悪犯罪者トビン・フロスト役に名優デンゼル・ワシントン。新米のCIAエージェント、マット・ウェストン役にライアン・レイノルズを迎え、本作に似た色のジェイソン・ボーン・シリーズのスタッフが送る、アクション・サスペンス作品。

アフリカ大陸の最南端、南アフリカ共和国にあるCIAの隠れ家の管理人である新米CIAエージェントのマットは、退屈極まりない管理人の仕事に辟易していた。そんなある日、隠れ家にある男が連行されてくることに。彼の名はトビン・フロスト。CIA史上最高のエージェントとして、敵の洗脳および心理戦では最高レベルの技術を持ちながら、10年前にCIAと決別した後は、各国の機密情報売買などの犯罪に手を染めたため、各国の情報組織から追われている。そのトビン・フロストがCIAの尋問チームによって隠れ家に収容されたその刹那、極秘の隠れ家が何者かに襲撃される。尋問チームは襲撃犯によって壊滅、マットはたった一人で拘束されたトビンを引き連れて決死の脱出と襲撃犯からの逃亡を試みる…。

オープニングのツカミ、隠れ家への襲撃からその後の逃亡と、息をつく暇もないとは言わないが、良いテンポで展開しそれなりの緊張感をもって中盤から後半へなだれ込む。意図的な粗めの画像処理のせいだろうか、緊張感が増幅されているように感じる。歳を重ねたデンゼル・ワシントンの重厚な演技が元CIAエージェントという役に良くハマっており、共演の若いライアン・レイノルズとの対比が良く効いているが、『CIA史上最高のエージェントで心理戦のエキスパート』と散々煽りながら、実際そのようなシーンは少なく期待していた向きには残念なストーリー。ロバート・パトリックが前半に出演しているが、歳を重ね太ったせいか、CIAの尋問チームという汚れ役にはもはや不向きかと。個人的な想像とは異なるし、続編を匂わせているかのようなエンディングで最後は少々切れが悪いが、アクション・サスペンスとしてはほどほどの秀作。(SS)


製作: 2012年 アメリカ 115分
監督: ダニエル・エスピノーサ / Daniel ESPINOSA
製作: 
出演: デンゼル・ワシントン / Denzel WASHINGTON, ライアン・レイノルズ / Ryan REYNOLDS, ヴェラ・ファーミガ / Vera FARMIGA, ブレンダン・グリーソン Brendan GLEESON, サム・シェパード / Sam SHEPARD, ルーベン・ブラデス / Ruben BLADES, ノラ・アルネゼデール / Nora ARNEZEDER,ロバート・パトリック / Robert PATRICK
ジャンル: CIA, サスペンス, アクション
鑑賞方法: Blu-ray

Friday, January 11, 2013

難波金融伝ミナミの帝王 #44 男たちの過去 / The King of Minami #44



シリーズ第44作目。公平に翔子、沢木組長と広瀬はん等の取り巻きは変わらず。初代舎弟の柳沢慎吾から大森嘉之や古本新乃輔、初代探偵の竹井みどりに未來貴子など、銀次郎の取り巻きも幾人も変わりつつ、主演の竹内力の風貌も変わるほど10年ほどの年月も流れた。思えば長く観てきたもんだ。本作ではA級やらビッグネームの出演者はいないのだが、代わりに、詳しくは知らないが観たことはある、というような2時間ドラマの脇役系俳優が多数出演している。

今回は金融に絡んだこれといったテーマは特に無く、当時世間を賑わせていたピッキング強盗に極道と悪徳金融を絡めつつ、元極道で今はたこ焼き屋を営む任侠道に生きる男を中心とした極道系ヒューマンドラマストーリー。確かに銀次郎は金を貸してるが、話しが極道の話しだけに銀ちゃんの出る幕も少ない。こうなったら金貸しの話なのか極道なのかというところだが、結局最後は危ない橋を渡りつつも極道からキリ取る…。

別に変な話では無いんだが、まぁ今回のストーリーは『ミナミの帝王』でなくても誰でも良かったですわ。才谷ゆきこという女優さんが出演しているが、顔立ちやスタイルがもう少しという惜しい感じが可愛らしく、10年遅く生まれていたらAKBあたりで活躍しているかもしれない。そして、改めて思ったが、川島なお美という女は、自分がどのポーズで立ち振る舞うと最も美しく見えるのかというのを知っている。愛車?もちろんブラバスチューンSLの77-77。(SS)


製作: 2002年 日本 87
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 山本太郎 / Taro YAMAMOTO, 川島なお美 / Naomi KAWASHIMA, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 宇野ポテト / Potato UNO, 井上博一 / Hirokazu INOUE, 辻沢杏子 / Kyoko TSUJISAWA, 西守正樹 / Masaki NISHIMORI, 大河内浩 / Hiroshi OKOUCHI, 片桐竜次 / Ryuji KATAGIRI, 金山一彦 / Kazuhiko KANAYAMA, 板尾創路 / Itsuji ITAO, 末成由美 / Yumi SUENARI, 成瀬正孝 / Masataka NARUSE, 才谷ゆきこ / Yukiko SAITANI
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

難波金融伝ミナミの帝王 #43 裏切りの報酬 / The King of Minami #43

★☆

シリーズ第43作目。ツカミのショートストーリーでは前作のラッシャー板前に引続きたけし軍団の松尾伴内が登場。宇野ポテトとの絡みでオープニングロールを迎えるのが、しかし50万くらいで女房を捨てて女と逃げるかね。取り巻きは公平と翔子にヤーさんは沢木組一家と変わらず。本シリーズでは珍しくたけし軍団のみならず、コント山口君と竹田君の竹田高利にコント赤信号の小宮孝泰と、関東芸人がこぞって出演している。

本作のテーマは『建設業と裏金』。まったくもってこの業界と裏金を描かせたらキリがないというか幾らでも書けるというか。話は至極簡単で、悪徳デベロッパーがマンションの建設プロジェクトに請負業者として参加できるというのを餌に、建設業者から協賛金名目で裏金を集め、その金は工事代金の一部として請求させるという手法。ここまでならよくある話なのだが、悪徳デベロッパーは協賛金を建設会社から集めるだけ集めて、実際の仕事は発注しないというから手に負えない。悪どい上にモラルの欠片も無い悪徳デベロッパー。嵌められた連中の債務を回収すべく銀ちゃんが動くが、今回は『文化財保護法第58条』という奇策で対抗する…。

『シベ超2』を観たので竹田君の稚拙な演技は分かっていたが、如何せん彼の似非関西弁が酷すぎる。ここまで酷いのなら関西弁ではなく敢えて標準語で挑んだほうが良かったかと思う。そして、演技のレベルでは竹田君と双璧を成す小宮孝泰。別に悪くないストーリーの本作だがキャスティングに少々難あり。相変わらず『なにわ33む77-77』SLは市中を激走している。(SS)


製作: 2002年 日本 85分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 山本太郎 / Taro YAMAMOTO, 川島なお美 / Naomi KAWASHIMA, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 宇野ポテト / Potato UNO, 竹田高利 / Takatoshi TAKEDA, 大出俊 / Shun OIDE, 市川勇 / Isamu ICHIKAWA, 小宮孝泰 / Takayasu KOMIYA, 酒井雅代 / Masayo SAKAI, 松尾伴内 / Bannai MATSUO, 山之内幸夫 / Yukio YAMANOUCHI
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

難波金融伝ミナミの帝王 #42 絆 ー KIZUNA ー / The King of Minami #42



2002年一発目はシリーズ第42作目。銀次郎、公平&翔子に沢木の親分と広瀬はんといつもの面々。馬渕英俚可が台湾から出稼ぎに来た売春婦を演じている。今回の債務者というか銀ちゃんのカウンターパートはシリーズ初期の頃にドブネズミ刑事として出演していた丹古母鬼馬二。ヤクザな風体だがしかし固い商売をする運送会社社長を演じている。その他では、笑福亭鶴光に西川弘志とシリーズに出演経験のある関西芸人が出演している。

数作ぶりにヒューマンドラマに振った本作は、店外デートが売りのクラブで働く台湾人売春婦に惚れてしまった運送会社社長が主人公。惚れた台湾人を台湾へ帰国させるためにバンスの清算金600万円を作るべく、銀次郎から借金をして偽造ハイカの売買に手を染める運送会社社長だったが、仕入れた偽造テレカには裏があった…。ちなみに、ハイカとはハイウェイカードのことで今は使用されていない。50000円で額面58000円とお得感が強かったが、高額故に偽造カードが問題となったものだ。

ツカミのショートストーリーはさておき、運送会社の社長、台湾クラブ、京都のクラブママに台湾人売春婦と、当初は軽い繋がりの各要素が最終的に銀次郎のキリ取りに結実していく様はいつも通りだが、本作では脚本にいつもより深みが感じられ、シリーズでも一二を争うドラマとなった。最後のキリ取りにおけるオカマ連中はご愛嬌か。

シリーズでは泥臭い刑事を演じてきた丹古母鬼馬二だが、本作では筋の通った運送会社社長の役を見事に演じると共に、これまた台湾人を完璧に演じきった馬渕英俚可が対面するラストシーンは、観ている者の涙を誘うだけではなく、銀次郎のキリ取りを差し置いて本作の最高の山場シーンとなった。愛車はいつものSL『なにわ33む77-77』。(SS)

製作: 2002年 日本 96分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 山本太郎 / Taro YAMAMOTO, 川島なお美 / Naomi KAWASHIMA, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 宇野ポテト / Potato UNO, 丹古母鬼馬二 / Kibaji TANKOBO, 馬渕英俚可 / Erika MABUCHI, 笑福亭鶴光 / Tsuruko SHOFUKUTEI, 西川弘志 / Hiroshi NISHIKAWA, 荻島真一 / Shinichi OGISHIMA, ラッシャー板前 / Rashaer ITAMAE, 蟷螂襲 / Shu TORO
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

Thursday, January 10, 2013

難波金融伝ミナミの帝王 #41 闇の裁き / The King of Minami #41



シリーズ第41作目。シリーズ開始から10年が経ち銀次郎の顔にも流れた年月が現れてきたと同時に少々肥えて迫力が出てきたなぁ〜と感じるジャケット写真。公平に翔子、沢木の親分と広瀬はんはいつも通り。今回の悪党役には関西芸人界の大御所オール巨人が起用されており、饒舌な語りと舞台慣れしたユルイ演技だが、その他の出演者が面白い。別に狙ってキャスティングした訳ではないだろうが、一時TVに出まくっていた関西芸人のぜんじろう、好色一代女でレコード大賞を受賞した内田明理、更にはピンクレディーの増田惠子と、その時代を風靡した『あの人は今タレント』が多く出演している。

本作は違法金利で暴利を貪る金融業者に対して『過払い金返還請求訴訟』やら『民法378条の滌除(てきじょ)』やらと、法律を武器に正義の味方を装いつつ、裏で悪徳金融業者と手を結んで債務者を丸裸にする悪徳弁護士が敵役。『過払い金返還請求』はシリーズ前作でも出てきたが、日本語として聞きなれない『滌除』とは簡単に言えば不動産の所有者によって抵当権者が望む望まざるに関わらず、抵当権が抹消されてしまうという制度。

民法により抵当権が設定されている不動産の第三取得者である所有者は滌除を行使する権利を有しており、所有者は抵当権者の意思にかかわらずその抵当権を抹消する権利がある。しかも滌除行使のための提供金額は、抵当権者の債務額に関わらず、所有者が自ら任意に決められる上に、提供額が第一順位抵当権者の債権額より少ない場合は、第二順位以降の抵当権者の取り分はゼロで第一順位者が総取りするという凄い制度。なお、2003年の法改正で『抵当権消滅請求制度』となり、滌除制度自体は消滅した。と、ここまで書いて何だが詳しくはWEBで調べられたし。で、この悪徳弁護士の滌除の行使に対する銀ちゃんの対抗手段は民放384条による滌除の拒否『増加競売』と債務者の『自己破産制度』を利用した鮮やかな逆転劇。

銀次郎の逆転劇はここ数作の流れらしく、派手さはないが品がある鮮やかな切り取りで一見の価値有り。ちなみにこの『滌除』だが『ナニワ金融道』に取り上げられて一時有名になった制度らしく、『ミナミの帝王 』との確執はこの辺が発端か。そろそろブラバスチューンSL以外の銀次郎の愛車が観たい。(SS)


製作: 2001年 日本 84分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 山本太郎 / Taro YAMAMOTO, 川島なお美 / Naomi KAWASHIMA, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 宇野ポテト / Potato UNO, 井上茂 / Shigeru INOUE, 佐藤蛾次郎 / Gajiro SATO, 内田明里 / Akari UCHIDA, オール巨人 / All Kyojin, 櫻木健一 / Kenichi SAKURAGI, 増田恵子 / Keiko MASUDA, ぜんじろう / Zenjiro, 山本竜二 / Ryuji YAMAMOTO, 鍋島浩 / Hiroshi NABESHIMA, 山之内幸夫 / Yukio YAMANOUCHI
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

難波金融伝ミナミの帝王 #40 スペシャル劇場版 #2 裏金略奪 / The King of Minami #40



本シリーズでは作品に付与された番号は"No."ではなく何故か"Ver."を使用している。バージョンというのはある作品の『翻訳バージョン』やら『完全バージョン』という風に"版"として当てるのが本来なので使い方が間違っているのだが、本シリーズも40作に達し水戸黄門とまでは行かずとも、ある程度決まった型のストーリーが完成してきており、"Ver."もこれはこれで良いのかと思えてきた。

ということで、本作はシリーズのVer.40でスペシャル劇場版の第2作目となる作品。なお、本作の質とは全く関係ないのだが、ミナミの帝王 公式サイトでは、本作の作品紹介ページがスペシャル劇場版の第1作目であるVer.21の『ローンシャーク・・・追い込み』の作品紹介の文を丸々コピペで思いっきり間違っているのが、公式サイトとしてどうなのかと。公平に翔子、沢木の親分と広瀬はんはいつも通り。スペシャル劇場版ゆえか、二宮さよ子、越路静香、北見敏之に梅沢富美男といったビッグネームが起用されているが、通算4作目の登場となる島田洋七、清水圭や、ツカミのショートストーリーでは前田五郎などの関西芸人もしっかりと出演。

今回のテーマというかストーリーの中心になるのは、大阪の老舗料亭が貯め込んだ裏金の3億円。何年もかけ脱税して貯め込んだだけに表には出せない金だが、そんな裏金がヤクザに掠め盗られただけに手に負えない。沢木の親分も昔からの馴染みにしていた料亭であり、料亭の女将や沢木組長に裏金奪回を頼み込まれた銀ちゃんが遂に動き出す…。

ヤクザから金を奪い返すというストーリーであり、特に本作では翔子もヤクザに誘拐監禁されてしまうというハードな展開だけに、必然的に沢木組の面々が大活躍している。銀次郎の本業である金貸しとはだいぶ離れているが、ここはスペシャル劇場版ということでまぁ良いか。愛車はいつものブラバスチューンSL『なにわ33む77-77』。翔子の愛車はBMW Z3から赤のアルファロメオにチェンジ。相生橋のエンディングが終わった後に、『そういえばあの金は回収したんかいな?』とモヤモヤしていたのどが、伏線も金もキッチリ回収する萬田銀次郎だけに、エンディングロールに被せてそのモヤモヤもキッチリと回収してくれた。(SS)


製作: 2001年 日本 90分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
製作: 
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 山本太郎 / Taro YAMAMOTO, 川島なお美 / Naomi KAWASHIMA, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 宇野ポテト / Potato UNO, 二宮さよ子 / Sayoko NINOMIYA, 越路静香 / Shizuka KOSHIJI, 島田洋七 / Yoshichi SHIMADA, 清水圭 / Kei SHIMIZU, 薬師寺保栄 / Yasuei YAKUSHIJI, 北見敏之 / Toshiyuki KITAMI, 梅沢富美男 / Tomio UMEZAWA, 山口美也子 / Miyako YAMAGUCHI, 前田五郎 / Goro MAEDA
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

難波金融伝ミナミの帝王 #39 騙しの方程式 / The King of Minami #39



シリーズ第39作目。銀次郎の舎弟と探偵は公平に翔子。沢木の親分と広瀬はんも変わらず。シリーズ第11作目『欲望の街』以来の出演となる笹野高史がシリーズ通算2回目の債務者として登場している。その他では第15作目『堕ちる女』以来の木下ほうか、など懐かしい面々も出つつ、悪党には良く見ると結構悪顔の清水紘治、優顔の立川貴博に山口仁。ツカミのショートストーリーでは『国東慕情』が聞ける。

今回のテーマは『相保証』なるもの。本来は二人の債務者に対して金融屋が双方の債務の保証させるものだが、今回の場合はクラブのママが保証人を紹介する代わりに、全く知らない人物の債務の保証人にさせられるという仕組みで、故にある日突然見知らぬ債務者の借金が降り掛かってくる場合も。ママは手数料を取って小遣い稼ぎをし、金融屋は金貸しで儲ける一方、債務者は一人コケたら皆コケるという怖い仕組み。そんな仕組みに嵌ったのが銀次郎の債務者である日本舞踊の家元である柴山。芝山は日本舞踊の世界で名声を得るために裏金を使おうとするが、日本舞踊の周りに巣食う詐欺師に騙された挙句に『相保証』の日掛け債務も被らされてしまう…。当時は日掛け債務の利率は年率109.8%が法的に認められていたようだが、この日掛け屋の裏に潜むまともな金融屋との関係に目をつけた銀次郎は『貸金業規制法』『出資法』『利息制限法』と銀ちゃん一流の法知識を駆使しつつ『過払い金返還請求』をキーワードにタイトル通りの知的な方程式で悪党からキッチリとキリ取る。

『アコギな商売は街金に任してもらわな困りまんな』とは銀ちゃんの台詞だが、切り取り手法を見る限りでは、萬田銀行の方がまともに見えてくる。ここのところ強引な切り取り手法は鳴りを潜め、代わりに知的な金融手法が冴えているようだ。お隣の兵庫県城崎温泉(きのさきおんせん)に逃げ込んだ家元を追うべく、どこぞの高速道路を疾走している銀ちゃんの愛車はいつものブラバスチューンSL『なにわ33む77-77』。(SS)


製作: 2001年 日本 91分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 山本太郎 / Taro YAMAMOTO, 川島なお美 / Naomi KAWASHIMA, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 井上茂 / Shigeru INOUE, 宇野ポテト / Potato UNO, 天宮良 / Ryo AMAMIYA, 笹野高史 / Takashi SASANO, 清水紘治 / Koji SASANO, 山口仁 / Jin YAMAGUCHI, 斉藤林子 / Rinko SAITO, 立川貴博 / Takahiro TACHIKAWA, 木下ほうか / Hoka KINOSHITA, 押谷かおり / Kaori OSHITANI, 里吉萌亜 / Moa SATOYOSHI, 谷広子 / Hiroko TANI
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

Wednesday, January 9, 2013

難波金融伝ミナミの帝王 #38 極道金融 / The King of Minami #38



シリーズ第38作目の本作は、18歳の時からソープで働く女をして『いっぺん染み付いた汚れは簡単に落ちるもんやない。きれいな水で泳ぐも人生。汚れた水で泳ぐも人生や』と、中々含蓄のある台詞で始まる。舎弟は公平、探偵は翔子。ヤーさんは沢木の親分と広瀬はん。梅子が第23作目の長編版以来となる久々の出演。債務者と悪党には野上正義、ベンガル、赤塚真人に渡辺裕之といったビッグネームが名を連ねる一方、長原成樹や和泉修らの関西芸人もしっかり。

ヒューマンドラマ風情を全面に押し出した前作と異なり、本作では極道におかまにチンピラに怪しげな『事件師』と多様な人間が絡みつつの少々雑多なストーリー展開。『事件師』とは被害者を言葉巧みに取込む役を負う者で、今回は極道金融の裏で暗躍し債務者の保険金受取人を変更する念書を書かせたり、権利書の名義を書き換えさせたりと、債務者をドツボに嵌めまくる…。最後のキリトリは久しぶりに力づくでは無い知的なキリ取りでほどほどに高品質。

TVの2時間サスペンスものでは脇役が多い赤塚真人のオカマの演技がなかなか秀逸。加えて、渡辺裕之と竹内力の相対するシーンはそれなりの迫力で、少々雑な展開に厚みを持たせている一方、ベンガルは事件師にぴったりと、キャスティングの妙が光る。シリーズも40作目を間近にして、眉間に皺を寄せつつどかっとソファーに座る銀ちゃんの姿が多くなり、いよいよ台詞も少なめになってきた。どうでも良いが、本作公開時から12年経った現在の川島なお美を見ると、顔の違いというか目元周りが違いすぎて驚く。愛車はブラバスチューンSL。(SS)


製作: 2001年 日本 91分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
製作: 
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 山本太郎 / Taro YAMAMOTO, 川島なお美 / Naomi KAWASHIMA, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 梅垣義明 / Yoshiaki UMEGAKI, 赤塚真人 / Makoto AKATSUKO, 野上正義 / Masayoshi NOGAMI, 里見まさと / Masato SATOMI, 長原成樹 / Seiki NAGAHARA, 和泉修 / Shu IZUMI, ベンガル / Bengal, 渡辺裕之 / Hiroyuki WATANABE, 里吉萌亜 / Moa SATOYOSHI
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

難波金融伝ミナミの帝王 #37 劇場版XVII プライド / The King of Minami #37



21世紀最初の作品は、シリーズ第37作目にして劇場版第17作目。なお、劇場版としてローマ数字の通し番号が付与された作品は本作が最後のようだ。いつものように『◯◯詐欺』とか『△△商法』といったものをテーマにせず、代わりにタイトル通り、人間のプライドと親子をテーマとしたヒューマンドラマ仕立てとなっている。舎弟と探偵は変わらず公平と翔子。ヤーさんもいつもの沢木組長と広瀬はんだが出演シーン後半に集中しており少なめ。久しぶりに『国東慕情』がパチンコ屋のシーンでバックに流れている。そのパチンコ屋のシーンで電話応対した男の声は宇野ポテトの声に聞こえたが、気のせいでは無いはずだ。

今回の債務者はその件の元プロ野球選手で『8:30の男』と呼ばれた山村。山村はかつて野球賭博に狂った挙句に、いろんな所から借金を重ね銀次郎の債務者でもあったが、今は完済しタクシー運転手をしつつ地元の少年野球チームの監督をしている。山村にはチームで特に注目している選手がいたが、その少年の父親が多額の借金で引越ししなければならないためチームを抜けるという。山村は少年の野球選手としての将来に期待するあまり、借金を肩代わりすべく再び銀次郎の元を訪れる…。メインストーリーの合間にパラパラと撒かれた伏線も、銀ちゃんの最後のキリトリに合わせて回収され、最後は切れの良いハッピーエンド。ヒューマンドラマとは言い過ぎだろうが、ホロッとするいい話になった。

ベテラン俳優の苅谷俊介はイモ演技だが、対する山田辰夫のそれは強く印象に残る。借金踏み倒して夜逃げした挙句に逆切れするという観ていて反吐が出るほど嫌な男だが、こういう役を演じさせたら最高に似合う役者に一人だ。車は変わらずブラバスチューンの77-77。銀ちゃんのスーツがヤバいくらいにケバいのが少々目に痛い。(SS)


製作: 2001年 日本 90分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
製作: 
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 山本太郎 / Taro YAMAMOTO, 川島なお美 / Naomi KAWASHIMA, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 井上茂 / Shigeru INOUE, 苅谷俊介 / Shunsuke KARIYA, 宮川大助 / Daisuke MIYAGAWA, 山田辰夫 / Tatsuo YAMADA, 山本奈々 / Nana YAMAMOTO, 岡田啓人 / Keityo OKADA
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

Monday, January 7, 2013

難波金融伝ミナミの帝王 #36 劇場版XVI 借金セミナー / The King of Minami #36



シリーズ第36作目は劇場版第16作目。前作に引続き舎弟に公平、探偵には川島なお美演じる速水翔子に沢木組一家の面々と変わらず。今回のテーマは占いやら祈祷やらで弱い者を騙す『霊感商法』に手を染める悪徳坊主。『困った時の神頼み』が精々の自分にとっては、祈祷師やら僧侶やらにすがる人の気持が全く分からないのだが、こういう類の人は騙されたら最後、ケツの毛まで抜かれるのが落ちというのが相場だが、本作でもご多分に漏れず。銀次郎の債務者の一人はパントマイマーでリアル芸人の中村有志。YouTubeで見られる彼のパントマイムは必見。

ということで『霊感商法』に騙され、ケツの毛まで抜かれる債務者は東大阪で江戸時代から続く旅館の社長。一見、悪徳坊主が発する言葉は藁にもすがる旅館社長を救う言葉に聞こえるが、実はその裏で旅館の内情や弱みを徹底的に調べあげ、最終的には高価な壺やら皿やらを購入させるというもの。もう一つのキーワードは『債権譲渡』。クラブのママから低利で借金した連中が、期限を過ぎると同時にママからの『債権譲渡』を受けたという取り立て屋から10日で3割の『トサン』という暴利でキリ取られる。銀次郎が翔子と調べを進めると『霊感商法』と『債権譲渡』は裏で繋がっていることが分かる…。

ただの壺に100万や200万を払うという常人には理解し難い行動も、本人がそこに価値を認めて支払っているだけに、警察沙汰になりにくい巧妙な手口。これにヤクザまがいの金貸しがくっつけば、最強の悪徳商法になり得るのが『霊感商法』。しかし、そこはミナミの鬼と呼ばれる銀次郎。銭ゲバ坊主相手に爽快なキリトリで魅せる。相も変わらぬセクシーさで攻める川島なお美だが、シュワルツネッガーばりの極太葉巻は幾らなんでも似合わなすぎる。愛車は変わらずブラバスチューンのSL。井上茂&宇野ポテトは今回はお休みのようだ。(SS)


製作: 2000年 日本 89分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
製作: 
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 山本太郎 / Taro YAMAMOTO, 川島なお美 / Naomi KAWASHIMA, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 渋谷天外 / Tengai SHIBUYA, 青山知可子 / Chikako AOYAMA, 伊藤敏八 / Binpachi ITO, 中村有志 / Yuji NAKAMURA, 山本昌平 / Shohei YAMAMOTO, 伊藤洋三郎 / Yozaburo ITO, 千野弘美 / Hiromi ITO, 大木こだま / Kodama OKI, 上方よしお / Yoshio KAMIGATA
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD