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Thursday, June 19, 2014

パイオニア / Pioneer



ノルウェー北海で発見された石油を陸上へ輸送するための海底パイプライン工事で起こった実際の事件を元に製作されたノルウェー製・深海サスペンスムービー。監督も俳優も事件のことも全く知らないのだが、『深海』という人が本能的に恐れる海の底で実際に起きた事件を元に描かれた作品で、しかも舞台は石油パイプラインとくれば、もう観ずにはいられない。

80年代前半。莫大な石油とガスが北海で発見されたノルウェーは、世界で最も豊かな国になろうとしていた。ノルウェー政府は輸送用パイプラインの敷設を行い、最後に海底500メートルでパイプラインを接続する重要プロジェクトを開始した。海底500mというかつて誰も経験したことのない深海作業であり、実際の作業に先立ち入念な地上訓練が行われた。やがて地元ノルウェーのプロダイバーであるペッターとクヌートの兄弟がプロジェクト最初のダイバーに抜擢され、初の深海実験ダイブが行われた。作業は順調に進んでいたが、弟のペッターが気を失った刹那、兄クヌートを巻き込む爆発死亡事故が起きてしまう。自分はなぜ気を失ってしまったのか。事故の本当の原因は何なのか。上層部の説明に納得がいかないペッターは、自ら事件の真相を調べ始めた…。

最初に行っておきたいのが、『深海ミステリー』というのはこういう作品のことではないということ。配給会社からしてみれば、面白くも無い映画にもキャッチなコピーを付けて売りださねばならないのだろうが、本作に深海ミステリーとはもはや嘘と断言してもいい。で、若干ネタに触れるが、ストーリーの核は、当時は誰も成し得ていなかった深さにおける潜水作業で実験的に使用された呼吸用ガスを巡るダイバーと機材チームのイザコザ話ということになろうかと思うが、コピーでは『巨大な石油ビジネスと政府の陰謀』という感じで、Xファイル的な陰謀論置き換えられているのもやり過ぎ。事件の事も良くわからないので、本作を観ても脚色と事実の境界がどこなのかは分からないが、いずれにせよ何が目的で何が結論なのかが全然分からず、ストーリの山場もなく、意味不明のまま観終わってしまった。(SS)

製作: 2014年 ノルウェー 106分
監督: エーリク・ショルビャルグ / Erik Skjoldbjarg
製作: クリスティアン・フレデリク・マルティン / Christian Fredrik Martin
出演: アクセル・へニー / Aksel HENNIE, ウェス・ベントリー / Wes BENTLEY, スティーヴン・ラング / Stephen LANG, ステファニー・シグマン / Stephanie SIGMAN, アーネ・ダール・トルプ / Ane Dahl TORP, ヨルゲン・ラングヘーレ / Jrgen LANGHELLE, ジョナサン・ラパリア / Jonathan LaPAGLIA
ジャンル: サスペンス
鑑賞方法: DVD

Tuesday, June 10, 2014

鉄子の旅 全6巻



『鉄道ファン』。時に『テツ』やら『鉄ヲタ』と称される鉄道好き。テツ自体はかなり古くから存在するようだし、特にオタク性も高くない一般的な趣味(だと個人的には思っている)だが、ある時から急に市民権を得たというか、認知度が上がったのには、本作も幾ばくかの影響を及ぼしているかもしれない。『鉄子の旅』は小学館の『月間IKKI』に連載された漫画で、旅の案内人として、旧国鉄時代からJR・私鉄に至るまで日本の全ての駅に降り立ったという横見浩彦が毎回企画する鉄道の旅を、菊池直恵の作画で描くノンフィクション漫画。

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基本的な展開としては、鉄ヲタの中でも『神』に近いとされる横見が鉄道の旅を企画して、その横見と対極にある鉄道に興味のない漫画担当の菊池と毎回日本中の鉄道を訪れるというもので、時折ゲストが来たりすることもあるが、この2名に小学館の編集者を加えた3名が通常の旅メンバー。『列車に乗り駅を降りる』こと、それ自体が『旅の目的』である横見。一方、菊池(というか、テツ以外の人)は鉄道による移動は旅の移動の『手段』の一つでしかすぎず、おのずと両者の意見は異なることになるのだが、この辺りの考え方の違いに対する驚きや、二人の掛け合いやらが毎回のお約束である。しかし、鉄道はあくまで移動手段であってそれ自体を楽しむ術を知らない菊池が、漫画としてなるべく面白くなるように作画しても、その底辺にある考え方の違いはレールのようにどこまで行っても交わることが無いため、鉄道好きな視点からみるとそのストーリー展開は少々棘々しさが感じられる。しかも、ストーリーが進むに連れて菊池が徐々に鉄道好きになっていって…というような甘い展開ではなく、むしろ回を追う毎に菊池の棘が益々鋭くなっていくのだが、まぁそこが本作の面白いところであり狙いでもあるのかなと思う。

なお、撮り鉄・完乗・鉄道模型・音鉄などなど、いろいろあるが、横見が降り鉄というか駅ヲタなため、本作の方向性もほぼ駅に主眼がおかれており、全てのテツが楽しめるかといえばそうでもない。ノンフィクションを標榜するのなら、乗った車両の詳しい情報や風景写真などもフィーチャーすると、もう少し濃くなったような気がするが。既刊全6巻に加えて、連載終了後のコラムや読み切りなどを含めた鉄子の旅プラスの実質全7巻。なお、横見企画の旅に5年間付き合った結果、体力の限界ということで筆を置いた菊池に代わり、ほあしかのこ作画による新・鉄子の旅も既刊全5巻が発行されている。(SS)

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初版発行: 2004年
原作: 横見浩彦
作画: 菊池直恵

探偵はBARにいる 2 ススキノ大交差点/ The Detective is in the Bar 2




大ヒットした前作に続くシリーズ2作目は、同じく東直己の探偵はひとりぼっちを原作に、私立探偵『俺』と相棒の高田の活躍を描く。主演は前作に引続き、北海道出身の大泉洋と、相棒役に松田龍平。共演に尾野真千子、ゴリ、渡部篤郎など。今回も探偵の本拠地であるバー『ケラー・オオハタ』、『缶ピースと胃腸薬』や、喫茶店『モンデ』などなど、シリーズのファンなら説明不要のアイテムはそのままで、前作同様の面白さを期待させる。

東日本最大の歓楽街ススキノ。探偵が足繁く通うオカマバーのマサコちゃんはいつも大胆なマジックで探偵や仲間のオカマ達を驚かせていた。そんなマサコちゃんは皆にそそのかせれて冗談半分で出場したマジック大会で全国優勝してしまうのだが、記念パーティーの翌日に何者かに殺害されてしまう。しかし、警察の捜査も進展少なく、探偵がススキノの住人達に聴きこみを行ったところ、マサコちゃんが事件当夜にカリスマ政治家の橡脇と会っていたとの情報が入る。探偵は早速、地元暴力団や橡脇の支持団体の調査を始めるがそんな中、何者かによる尾行に気付いた探偵は、とある雑居ビルで逆にその尾行者を捕らえるも、それは気鋭の美人バイオリニストの河島弓子だった…。

昔、千葉の房総で特急列車に乗る前に『カニ味噌』とビールを買ったのだが、どうにもこうにもこのカニ味噌が美味しくない。良く良くパッケージをみると『カニ味噌風味噌』と書いてあった。『カニ味噌』と『カニ味噌風味噌』とは似て非なるものなのだ。それはさておき、本作はハードボイルド風ごった煮作品といったところで、前作よりもややコメディー方面に強めに振った感があるも、終盤にかけては大泉洋が格好良く見えてしまうハードボイルド風作品に仕上がっている。個人的には大倉山ジャンプ台と室蘭での銃撃戦についてはやり過ぎ感が強く頂けないのだが、それでも格好良さと面白さの間の微妙な細い線のような独特の雰囲気や、早くもなく遅くもない微妙なスピード感はいずれも心地よく、最後まで気持ちよく見られる。ただ、原作を読んでいないので何とも言えないところもあるが、ストーリの核心である殺人事件の謎を解き明かすきっかけや、その後の短絡的な展開などは脚本が良く練れていないとも感じた。作中の季節設定は晩秋といったところだが、季節外れの真夏日が続く6月に見てしまったので、紅葉や初雪のシーンなど北海道ならではの季節感を出したシーンがしっくりと入ってこなかったのが少々残念。本作の出来とは無関係だが。(SS)


製作: 2013年 日本 119分
原作: 東直己 / Naomi AZUMA『探偵はひとりぼっち』
監督: 橋本一 / Hajime HASHIMOTO
出演: 大泉洋 / Yo OIZUMI, 松田龍平 / Ryuhei MATSUDA, 尾野真千子 / Machiko ONO, 田口トモロヲ / Tomoro TAGUCHI, 波岡一喜 / Kazuki NAMIOKA, 松重豊 / Yutaka MATSUSHIGE, 片桐竜次 / Ryuji KATAGIRI, 篠井英介 / Eisuke SHINOI, ゴリ / Gori, 矢島健一 / Kenichi YAJIMA, 筒井真理子 / Mariko TSUTSUI, 渡部篤郎 / Atsuro WATABE, マギー / Maggy
ジャンル: サスペンス, アクション, ハードボイルド
鑑賞方法: DVD