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Thursday, February 27, 2014

ジャンゴ 繋がれざる者 / Django Unchained



イングロリアス・バスターズ以来となるクエンティン・タランティーノ監督作品は、アメリカ南北戦争直前の19世紀半ばを時代背景に黒人奴隷制度をタランティーノ流に描いたバイオレンス西部劇。主演にジェイミー・フォックス、共演にはイングロリアス・バスターズに引き続きタランティーノ作品連続出演となる、クリストフ・ヴァルツや常連のサミュエル・L・ジャクソン、レオナルド・ディカプリオなど。

南北戦争直前のアメリカ南部。賞金稼ぎのドクター・キング・シュルツの当面のターゲットはお尋ね者のブリトル3兄弟だが、その顔を知る黒人奴隷のジャンゴを見つけると、シュルツは彼の鎖を解いてブリトル兄弟追跡へと共に出発した。やがてある農場で3兄弟を見事に始末したシュルツはジャンゴの腕を認め、賞金稼ぎのパートナーにすることに。そんなある日、シュルツはジャンゴから妻がいて生き別れになったことを聞かされる。奴隷市場での取引記録を調べた結果、妻はミシシッピーのキャンディ・ランドにいることが判明。シュルツはジャンゴと共にキャンディー・ランドから妻を助け出すことを決意する…。

タランティーノ作品ではもはや驚かないが、とにかく序盤から強烈なバイオレンスシーンが炸裂。血糊というか血の吹き出し方がとにかく大袈裟でキル・ビルを思い出す。加えて、歌謡曲っぽいキャッチなメロディーの使い方も今までのタランティーノ作品同様で期待を裏切らない。足に鎖を巻く黒人奴隷や生死をかけて強制的に闘わされる格闘奴隷の描き方など全く手加減なく、見ているこちらも心が痛くなるが、こうしたところも容赦なく描いているのが本作のいいところで、中途半端では面白くなかったはず。ジェイミー・フォックスはもちろん、共演のレオナルド・ディカプリオ、クリストフ・ヴァルツおよびサミュエル・L・ジャクソンの演技が秀逸で、特にサミュエル・L・ジャクソン演じる黒人の皮を被った白人主義者の執事は悪ノリが過ぎて憎悪を覚えるほど。黒人奴隷制度というアメリカの黒い歴史を取り上げた作品でありながら徹底して勧善懲悪。展開に少々強引さを感じつつも、最後は気分スッキリという典型的娯楽映画で、2時間半を超える作品ながら全くそれを感じさせないスピード感とストーリー展開に脱帽。(SS)


製作: 2012年 アメリカ 165分
監督: クエンティン・タランティーノ / Quentin TARANTINO
出演: ジェイミー・フォックス / Jamie FOXX, クリストフ・ヴァルツ / Christph WALTZ, レオナルド・ディカプリオ / Leonardo DiCAPRIO,  ケリー・ワシントン / Kelly WASHINGTON, サミュエル・L・ジャクソン / Samuel L. JACKSON
ジャンル: アクション, ヒストリー, 西部劇, R15+
鑑賞方法: Blu-ray

Monday, February 24, 2014

ナイルの宝石 / The Jewel of the Nile



前作ロマンシング・ストーン 秘宝の谷の続編はシリーズ第2作目。監督はルイス・ティーグ、制作兼主演にマイケル・ダグラスとヒロインのキャスリーン・ターナーや共演のダニー・デヴィートも前作に引続きで変わらず。

前作の冒険で手に入れた大金を元にジャックはついに夢の豪華ヨットを手にし、ジョーンと共に世界一周の旅に出た。ある日、寄港した街で催されたパーティーに出席したジョーンは、アフリカのある国の独裁者オマーから彼自身の伝記の執筆依頼を受ける。楽しいが刺激の無いヨットの旅に飽き始めていたジョーンはその話を受けて単身アフリカへ旅立つ。そんな時、ジャックのヨットが何者かによって爆破されてしまう。命は助かったジャックだが、居合わせたタラクという男によってオマーの仕業と知ったジャックもジョーンの後を追うようにアフリカへと向かう…。

前作同様にストーリーの設定や展開がとにかくユルく、アドベンチャーとコメディーの隙間を縫うかのような作品だ。また、前作は宝石を追うアドベンチャーだったが、本作はお宝ではなくジャックがジョーン救う旅ための冒険なので、前回にも増してロマンス色が強め。シリーズとしては軸がブレブレで別の作品のようになってしまった。その為か否か、アクションも貧乏臭く、特に物語中盤のヌビア族との出会いとジョーンを巡る戦いのくだりは、単なる尺稼ぎのための小話という感じで白けてしまった。(SS)

製作: 1986年 アメリカ 106分
監督: ルイス・ティーグ / Lewis TEAGUE
製作: マイケル・ダグラス / Michael DOUGLAS
出演: キャスリーン・ターナー / Cathleen TURNER, マイケル・ダグラス / Michael DOUGLASダニー・デヴィート / Danny DeVITO
ジャンル: アドベンチャー, アクション
鑑賞方法: Blu-ray

Sunday, February 23, 2014

ロマンシング・ストーン 秘宝の谷 / Romancing the Stone

★★

宝探し系ジャングル・アドベンチャー作品の草分けといえば1981年に公開されたインディー・ジョーンズ・シリーズが思い出されるが、こちらも似たような路線の映画か。インディーよりは少々大人向けだが、ハチャメチャな展開はハリウッド娯楽映画の面目躍如。監督はジェイムズキャメロン。主演兼製作にマイケルダグラス。ヒロインにはキャスリーンターナー。

人気女流小説家のジョーンの元へコロンビアからの郵便物が届けられる。郵便物の中身は宝の地図だが、その地図を巡ってジョーンの姉が誘拐されてしまう。地図と引き換えに姉の命を助けるためジョーンはコロンビアへと向かうが、地図を狙う悪党から命を狙われるハメになり…。

それにしても『秘宝の谷』とは何とも安易なネーミング。そもそも秘宝があったのは谷ではなかったし。それはさておき、主人公はジャングルの中で濁流に飲み込まれたり、今にも崩れ落ちそうな吊り橋を渡ったり、ガンアクションからカーアクションとこの手の映画で考えられるシーンがテンコ盛りだが、何となく緊張感が無いユルい作品。インディー・ジョーンズは息つく暇も無いジェット・コースター・ムービーだったが、それとは趣の異なる心地良いテンポのアクション・アドベンチャーに仕上がっており、安心して見られる。(SS)


製作: 1984年 アメリカ 106分
監督: ロバート・ゼメキス / Robert ZEMECKIS
製作: マイケル・ダグラス / Michael DOUGLAS
出演: キャスリーン・ターナー / Cathleen TURNER, マイケル・ダグラス / Michael DOUGLASダニー・デヴィート / Danny DeVITO
ジャンル: アドベンチャー, アクション
鑑賞方法: Blu-ray

悪の教典 (映画)



貴志祐介の同名小説の映画化作品。ハーバード大卒のイケメン人気高校教師でありながらその内面はサイコキラーという男が主人公のホラー・サスペンスである。監督は三池崇史、主演に伊藤英明。なお、原作は上下巻で850頁超という大作なので、この手のサイコ・サスペンス小説にありがちな、殺人者の過去や深層心理を深堀りした記述が多いかと推測するも、原作は未読である。

都内の私立高校に勤める蓮実聖司はハーバード大を卒業した天才でイケメンで有能である生徒の人気者だが、その実態は冷酷なサイコキラーであり、蓮実にとって有害となる人間は躊躇なく殺害される。ある時、蓮実に好意を持っている女子生徒の安原とキスをしているところをクラスの不良生徒に見られてしまう。蓮実は合理的解決方法として不良生徒を殺害するが、その男子生徒の携帯電話を持っていることを安原が知ったことから、学校での飛び降り自殺に見せかけ安原を殺害する。しかし、その現場に女子生徒が偶然居合わせてしまい、しかもその日は学園祭の準備でクラスの生徒全員が学校に残っていた。窮地を脱するために、蓮実は校内の残る者全員の殺害を選択した…。

サイコキラーが手にするショットガンが、全く躊躇なく、そして外すことなく一発で生徒を殺害していく。何しろこの殺戮シーンが後半の1時間近くを占めるので、その手が好きな向きにはおあつらえ向きと言える。しかし、サイコキラーである蓮実の深層心理に関しては深く描かれておらず、殺害目的があやふやなままであり、結果的にはこのことが殺害シーンを単調なホラー映像と成り下げている。そういう意味ではカラスを無意味に殺すシーンが多少のヒントになりそうだが、個人的にはそのシーンに矛盾を感じる。また、天才的殺人者という設定でありながら、最後の殺戮を他人に擦り付けようとするロジックは余りにも幼稚で破錠しているし、ラストにおける殺害された者の生存を伺わせるシーンに至ってはもはや本当にホラー。最後のコマは『to be continued』なのだが、続編ありという意味では無いと思う。(SS)


製作: 2012年 日本 129分
原作: 貴志祐介 / Yusuke KISHI 『悪の教典』
監督: 三池崇史 / Takashi MIIKE
出演: 伊藤英明 / Hideaki ITO, 二階堂ふみ / Fumi NIKAIDO, 染谷将太 / Shodta SOMEYA, 林遣都 / Kento HAYASHI, 山田孝之 / TAkayuki YAMADA, 平岳大 / Takehiro HIRA, 吹越満 / Mitsuru FUKIKOSHI, 小島聖 / Hijiri KOJIMA
ジャンル: サスペンス, ホラー, R15+
鑑賞方法: Blu-ray

Friday, February 21, 2014

ハゲタカ (映画)

★☆

NHKの制作の大ヒットドラマ『ハゲタカ』の映画版作品である本作は、TV版と同様に、真山仁の経済小説ハゲタカバイアウトおよびレッドゾーンの3作品を原作とした経済ドラマである。TV版が非常に秀逸な作品であっただけに期待が高まるが、同じNHK制作の『外事警察』はTV版に比べて映画版の方がイマイチだっただけに本作はどうだろうか。主演は引続き大森南朋と柴田恭兵。共演に玉山鉄二。栗山千明や松田龍平もTV版に引続き出演している。

かつて日本を買い叩く「ハゲタカファンド」の辣腕マネジャーとして一世を風靡した鷲津は、一向に変わることのない閉鎖的な日本市場に見切りをつけ、海外で生活を送っていた。そんな時、日本を代表する自動車メーカーであるアカマ自動車の役員として迎えられていた芝野が鷲津の元を訪れ、アカマ自動車の救済を求めてきた。アカマ自動車は中国政府系ファンドのブルー・ウォール・パートナーズによる買収の危機にさらされていた。芝野の依頼を一度は断った鷲津だが、ブルー・ウォール・パートナーズの代表、劉一華の記者会見をみたのち、アカマ自動車からの正式な要請に答える形で「ホワイトナイト」としてブルー・ウォール・パートナーズと対峙することを決意する…。

映画版ということで、TV版を見ていなくても掴めるようなストーリー展開になっているのは間違いない。また、本作のメインストーリーは鷲巣と劉一華との対峙であり、芝野やアナウンサーの三島は脇に添えられた役どころと言っても過言では無いだろうが、TV版を見ていない人にはこの3者の過去の関係についての前知識が全く無いため、はてなマークが頭の中にグルグル回ったまま本作を鑑賞し続けたに違いない。

TV版では良く練られたファンドのスキームを充分に堪能することが出来たが、本作では所謂『リーマン・ショック』の翌年に公開された作品のため、どうしてもリアル経済に倣ったストーリーになってしまい、特に鷲津が劉一華を潰すためのロジックが稚拙に感じられた。そういう意味では、松田龍平演じる旅館の若旦那をTV版に続いて出演させるべき理由が見当たらないし、根本的なところでは、鷲津がアカマ自動車のホワイトナイトを引き受ける明確な動機が不明確。劉一華の最後も意味不明で、あらゆる意味で映画版はTV版を超えることが出来なかったと感じた。(SS)


製作: 2009年 134分 日本
原作: 真山仁 / Jin MAYAMA 「ハゲタカ」「バイアウト」「レッドアウト」
監督: 大友啓史 / Keishi OTOMO
出演: 大森南朋 / Nao OMORI, 柴田恭兵 / Kyohei SHIBATA, 松田龍平 / Ryuhei MATSUDA, 栗山千明 / Chiaki KURIYAMA, 嶋田久作 / Kyusaku SHIMADA, 志賀廣太郎 / Kotarou SHIGA, 中尾彬 / Akira NAKAO, 玉山鉄二 / Tetsuji TAMAYAMA, 高良健吾 Kengo KORA遠藤憲一 / Kenichi ENDO
ジャンル: サスペンス 
鑑賞方法: DVD

Tuesday, February 18, 2014

ストロベリーナイト シーズン1 (TV) #2 / Strawberry Night Season 1 (TV) #2



前回に引続き、第6話から最終話まで。

第6話「感染遊戯」
★★☆ 製薬会社勤務のエリート社員が自宅前でメッタ刺しに殺害された。被害者の着衣のボタンから犯人のものとおぼしき指紋が検出された一方、自宅の呼び鈴からは指紋が見つからなかった。姫川は犯人の狙いを被害者ではなく、旧厚生官僚として薬害感染問題に深く関与していた被害者の父親だったのではないかと睨み捜査を開始する…。

1話完結。捜査員の葉山の心の葛藤、姫川の勘働き、菊川の後輩に対する思いなど、姫川班の捜査官の人間ドラマがバランスよく描かれている。協働する所轄の捜査官に加藤あいを配して、それなりに役割を与えているのだがその必要はあったのか疑問。

第7 - 8話「悪しき実」
★★★ 右半身だけ死後硬直が早く解けた男性の変死体が発見された。通報者は恋人の女性と思わるが行方不明。男性のアパートからは13個の木片と私設私書箱の鍵が見つかる。手掛かりが乏しいなか、姫川は私設私書箱の中から多くの暴力団関係者の写真を見つけ、さらに全員が殺害されていることが判明する…。

右半身と左半身で死後硬直具合が異なるという変死体、ツカミの殺害シーンと行方をくらました被害者の恋人。姫川の推理を軸としたストーリー展開が素晴らしく、不幸な女性を演じる木村多江の好演が光る。謎解きと人間ドラマのバランスが秀逸な良作だが、一方で13人の暴力団関係者が殺害された事件の真相が置き去りになっているのが、心に引っ掛かる。

第9 - 第11話「ソウルケイジ」
★★★ 多摩川の土手で血まみれの左手首が発見された。被害者の手首は大工の高岡のものであり、高岡の工場から致死量を超える血液が発見されたことを考慮して死体損壊遺棄事件として捜査が進められた。一方、高岡の過去を調べていくと、高岡は従業員の三島を他人でありながら我が子のように育てていたこと、そして三島の父親はかつて高岡が働いていた工事現場で転落死していた事を突き止める…。

初の3話構成作品。血まみれの手首、高岡の過去と三島との関係など、二転三転する展開はスピード感があり、3話に分けられていても長くは感じない。ただ、登場人物が多くてかつ裏があり複雑なので名前を覚えないと面白さが半減するかもしれない。最終話らしい面白さだが、明らかになった真相が少々腑に落ちないのは自分だけだろうか。


刑事モノとして「謎解きの面白さ」を素直に味わえる作品。原作そのものが持つ面白さとそれを削ぐこと無く脚色されたストーリー、姫川班およびそれを取り巻く癖のある捜査官達との人間群像と秀逸な配役、テレビでよく表現出来たなと思う凄惨な映像の処理、それぞれのバランスが秀逸で、久々にフジテレビ謹製ドラマの面白さを充分に堪能出来た。全11話は「シーズン1」という体でリリースされているが、恐らくシーズン2などは無さそうである。ただ、原作はまだ続いているようなので、「踊る―」シリーズのようなフジテレ看板作品に育てるべく、シーズン2の制作を期待したい。(SS)


製作: 2012年 日本
演出: 佐藤祐市 / Yuichi SATO, 石川淳一 / Junichi ISHIKAWA 
原作: 誉田哲也 / Tetsuya HONDA「シンメトリー」「感染遊戯」「ソウルケイジ」 
出演: 竹内結子 / Yuko TAKEUCHI, 西島秀俊 / Hicetoshi NISHIJIMA小出恵介 / Keisuke KOIDE宇梶剛士 / Tsuyoshi UKAJI, 丸山隆平 / Ryuhei MARUYAMA, 渡辺いっけい / Ikkei WATANABE, 遠藤憲一 / Kenichi WATANABE, 高嶋政宏 / Masahiro TAKASHIMA, 生瀬勝久 / Katsuhisa NAMASE, 武田鉄矢 / Tetsuya TAKEDA, 滝藤賢一 / Kenichi TAKITO, 津川雅彦 / MasahikoTSUGAWA, 北見敏之 / Toshiyuki KITAMI, 杉本哲太 / Tetta SUGIMOTO, 滝藤賢一 / Kenichi TAKITO, 小木茂光 / Shigemitsu OGI, 石黒賢 / Ken ISHIGURO, 加藤あい / Ai KATO, 木村多江 / Tae KIMURA, 杉本哲太 / Tetta SUGIMOTO, 濱田岳 / Gaku HAMADA
ジャンル: サスペンス
鑑賞方法: DVD
エピソード: 
 第1話 「シンメトリー」
 第2話 「右では殴らない」
 第3話 「右では殴らない2」
 第4話 「過ぎた正義」
 第5話 「選ばれた殺意~過ぎた正義」
 第6話 「感染遊戯」
 第7話 「悪しき実」
 第8話 「悪しき実~嗚咽」
 第9話 「ソウルケイジ」
 第10話 「檻に閉じ込められた親子~ソウルケイジ」
 第11話 「こんなにも人を愛した殺人者がいただろうか~ソウルケイジ」

ストロベリーナイト シーズン1 (TV) #1 / Strawberry Night Season 1 (TV) #1



誉田哲也の姫川玲子シリーズ3作品「シンメトリー」、「感染遊戯」および「ソウルケイジ」を原作としたフジテレビ制作の連続TVドラマシリーズ。原作とは異なり、姫川玲子シリーズの映像化作品は全て「ストロベリーナイト」というタイトルが付けられ、それぞれの原作タイトルとは異なる。主演は竹内結子。「パイロット版」と称する初回作のスペシャルドラマ版の共演俳優に加えて、新たに小出恵介や丸山隆平といった新メンバーが加わっている。一話完結となっているのは「シンメトリー」と「感染遊戯」のみで、他のエピソードは複数回の放送で完結する。


第1話「シンメトリー」
★★★ 100人以上の死傷者を出した電車と自動車の接触事故から10年後の同じ線路上で、体の中心から縦に真っ二つとなった死体が発見される。被害者は列車事故を引き起こした男だった。自殺と他殺の両面で捜査が進められる中、事故当時、ある女子高生を必死に助けようとした駅員がいたことを姫川は知る…。

初回放送に相応しい完成度の高い作品。ここれほどの内容が小一時間ほどのテレビドラマに収められた事に驚く。火サスや土曜ワイドは見習ってほしい。縦に真っ二つになった死体や列車事故のシーンなど、テレビ作品としては描くのが難しい凄惨なシーンを非常に上手く処理をしている。

第2 〜 3話「右では殴らない」
★★ 劇症肝炎で亡くなったと思われる男性3人を司法解剖した結果、いずれの死体からも違法薬物が発見された。薬物を利用した連続殺人事件の可能性を疑った姫川は薬物テロも視野に入れて捜査を開始、被害者はいずれもオンラインゲームサイトの会員である事が判明。ゲーム内で被害者3人に共通する人物に関する調査を進めると、思いもよらない人物に突き当たる…。

2話連続作品。一見何の関係も無さそうな被害者の死体に共通する一点を突破口として、姫川が次々と紡ぎだす謎解きは素直に面白い。ラストは少々やり過ぎでありリアル感が削がれるが、観ている方としてはすっきり。ただ、同じすっきりさせるのなら、犯人の最終的な扱いの方こそ明らかにしてほしかった。

第4 〜 5話「過ぎた正義」
★☆☆ 強姦殺人などの重大な罪を犯したにも関わらず、少年法や精神鑑定結果により短期間の刑期で出所していた3人の男が立て続けに謎の死を遂げた。3つの事件内容や関係者に一切の共通点が無いなかで、姫川はこれら全ての犯人が警視庁の倉田捜査官に逮捕されていた事に気付く…。

2話連続作品。謎解きというよりも、登場人物の心の葛藤を描くことに重きを置いた展開であることは重々承知だが、3人の男の死の謎こそが姫川の初動のきっかけであるにも関わらず、結末に至るまでその真相解明が欠如しているのが全く腑に落ちない。冗長な展開でスピード感に乏しく一話に纏めた方が良かったかもしれない。



製作: 2012年 日本
演出: 佐藤祐市 / Yuichi SATO, 石川淳一 / Junichi ISHIKAWA 
原作: 誉田哲也 / Tetsuya HONDA「シンメトリー」「感染遊戯」「ソウルケイジ」 
出演: 竹内結子 / Yuko TAKEUCHI, 西島秀俊 / Hicetoshi NISHIJIMA小出恵介 / Keisuke KOIDE宇梶剛士 / Tsuyoshi UKAJI, 丸山隆平 / Ryuhei MARUYAMA, 渡辺いっけい / Ikkei WATANABE, 遠藤憲一 / Kenichi WATANABE, 高嶋政宏 / Masahiro TAKASHIMA, 生瀬勝久 / Katsuhisa NAMASE, 武田鉄矢 / Tetsuya TAKEDA, 滝藤賢一 / Kenichi TAKITO, 津川雅彦 / MasahikoTSUGAWA, 北見敏之 / Toshiyuki KITAMI, 杉本哲太 / Tetta SUGIMOTO, 滝藤賢一 / Kenichi TAKITO, 小木茂光 / Shigemitsu OGI, 石黒賢 / Ken ISHIGURO, 加藤あい / Ai KATO, 木村多江 / Tae KIMURA, 杉本哲太 / Tetta SUGIMOTO, 濱田岳 / Gaku HAMADA
ジャンル: サスペンス
鑑賞方法: DVD
エピソード: 
 第1話 「シンメトリー」
 第2話 「右では殴らない」
 第3話 「右では殴らない2」
 第4話 「過ぎた正義」
 第5話 「選ばれた殺意~過ぎた正義」
 第6話 「感染遊戯」
 第7話 「悪しき実」
 第8話 「悪しき実~嗚咽」
 第9話 「ソウルケイジ」
 第10話 「檻に閉じ込められた親子~ソウルケイジ」
 第11話 「こんなにも人を愛した殺人者がいただろうか~ソウルケイジ」

Mr & Mrs スミス / Mr & Mrs Smith



ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーが初共演。「殺し屋」という本業を互いに隠しつつ結婚した夫婦の闘いと愛の結末を描いた、アクション・コメディ作品。監督は「ジェイソン・ボーン・シリーズ」のダグ・リーマン。

コロンビアで知り合ったジョン・スミスとジェーンは恋に落ちて結婚。ジョンは建設工事関係でジェーンはITエンジニアと、互いに仕事に忙しい日々を送りつつ、ニューヨークでごく普通に暮らしているが、実は二人の本業は「殺し屋」。互いの秘密を隠しつつ偽りの結婚生活を送っていた。そんなある日、ジョンの元へ新たな殺害の依頼が舞い込む。標的はベンジャミン・ダンツ。FBIによる移送中に殺害をしてくれとの注文付きだった。一方、ジェーンの元にも新たな殺しの依頼が。その標的はベンジャミン・ダンツだった…。

ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーの共演ということで、とにかく画面に華がある。そして普通に見える夫婦が実は互いに殺し屋というツカミの良い脚本もあって、見始めこそワクワク感があったのだが、それも最初だけ。コメディーに強く振ったストーリーにも関わらず全く笑えないし、かと言ってアクションシーンも火薬量が多いだけで完全にリアル感が欠如しているためか、観ている者を白けさせてしまう。どっちつかずの中途半端な作品になってしまい、せっかくの豪華な俳優陣が全く活きていない寂しい作品になってしまった。ただ、二人のプロモーション映像と見間違うようなスタイリッシュなシーンが多い構成なので、ブラピ&アンジー好きの向きにはお勧め。(SS)


製作: 2005年 アメリカ 118分
監督: ダグ・リーマン / Doug LIMAN
出演: ブラッド・ピット / Brad PITT, アンジェリーナ・ジョリー / Angelina JOLIE
ジャンル: アクション, ロマンス, コメディー
鑑賞方法: Blu-ray

Tuesday, February 11, 2014

ダブルフェイス

★☆


2002年の大ヒット香港ノワールインファナル・アフェア」は、既にハリウッドでディパーテッドとしてリメイクされているが、本作はその日本版リメイク作品。TBSとWOWOWによる共同制作ドラマなので、正確には「映画」ではない。ストーリーは前半の「潜入捜査編」とそれに続く「偽装警察編」の2部構成となっている。

舞台は神奈川県横浜市。神奈川県警の森屋は地元の暴力団組織である織田組にて潜入捜査を行う捜査官。長期にわたる潜入捜査に苦しむ森屋だが、織田組を壊滅させるまでは潜入捜査は終わらないと上司から言明させられていた。そしてついに森屋は織田組による麻薬取引の現場と日時を掴む事に成功。県警のよる一掃作戦が実行されることになったが、取引現場を押さえる寸前のところで捜査情報が漏れたため、作戦は失敗する。織田組もまた県警内部に構成員を潜入捜査官として送り込んでいたのだった…。

インファナル・アフェアおよびディパーテッドは、既に鑑賞済みなのでストーリーは理解済みだったが、ディパーテッド同様に原作をなぞるかのような展開で、もう少し大胆なアレンジを加えても良いんじゃないかなとも思うが、オリジナルの完成度が高過ぎてもはや手が出せないのかもしれない。潜入捜査官としての苦悩や心の葛藤を醸しだす西島秀俊の好演技が光る。(SS)


製作: 2012年 日本 WOWOW TBS
監督: 羽住英一郎 / Eiivhiro HAZUMI
出演: 西島秀俊 / Hidetoshi NISHIJIMA, 香川照之 / Teruyuk KAGAWA, 角野卓造 / Takuzo KAKUNO, 小日向文世 / Fumiyo KOHINATA, 伊藤かずえ / Kazue ITO, 伊藤淳史 / Atsushi ITO, 平田満 / Mitsuru HIRATA, 堀部圭亮 / Keisuke HORIBE, 高橋光臣 / Mitsuomi TAKAHASHI, 和久井映見 / Hidemi WAKUI, 蒼井優 / Yu AOI, 田中要次 / Youji TANAKA, 北見敏之 / Toshiyuki KITAMI
ジャンル: サスペンス, アクション
鑑賞方法: DVD

Wednesday, February 5, 2014

藁の楯 (映画)



木内一裕の同名小説を三池崇史監督で映画化した作品。原作者の「木内一裕」と言われても?だが、「きうちかずひろ」と書かれて思い出した人は多いかもしれない。本作はビー・バップ・ハイスクールで有名なきうちかずひろの小説家デビュー作である。主演に大沢たかお、共演に松嶋菜々子、藤原竜也など。

「この男を殺して下さい。名前・清丸国秀。お礼として10億円お支払いします。」という衝撃的な全面広告が主要新聞に一斉に掲載された。広告掲載主は政財界の大物として知られていた蜷川。7歳になる蜷川の孫娘を暴行の上に殺害遺棄した清丸の首に10億円もの賞金が掛けられたのだ。この日から金に目のくらんだ日本中の一般市民から命を狙われる羽目になった清丸は危うく殺されかけ、逃亡潜伏先の福岡で自ら警察に出頭した。警視庁は清丸の身柄を送検すべく、銘苅、白岩のSP2名と捜査一課の刑事を護衛に付けた。だが、懸賞金に目が眩み清丸の命を狙わんとする者はもはや警察内部にまでも広がっていた…。

ストロベリーナイトなど、しばらく刑事モノ作品の鑑賞が続いていたので、いささか食傷気味ではあったが、そんな気持ちはオープニングのツカミである、件の全面新聞広告とその後のスピード感のある展開により軽く吹き飛ばされた。原作小説が持つオリジナリティ溢れるストーリーは斬新で非常に面白い。それだけに、後半に向けて気持ちが高まるも、突如現れた個人タクシーあたりから急速に違和感を感じ始める。そして、その後のプロセスを一切省いてラストの警視庁前へとなだれ込む乱暴な展開。これまで保持してきたリアリティーの糸もぷっつりと切れ、まさに「尻すぼみ」という言葉が相応しい作品。また、超憎たらしい悪役を見事に演じきった藤原竜也の演技が秀逸な一方、岸谷五朗の舞台ばりの大げさな動きがどうしても捜査一課の敏腕刑事には見えず少々残念。(SS)


製作: 2013年 日本 125分
監督: 三池崇史 / Takashi MIIKE
原作:木内一裕  / Kazuhiro KIUCHI「藁の楯」 
出演: 大沢たかお / Takao OSAWA, 松嶋菜々子 / Nanako MATSUSHIMA岸谷五朗 / Goro KISHITANI伊武雅刀 / Masatou IBU永山絢斗 / Kento NAGAYAMA藤原竜也 / Tatsuya FUJIWARA,  山崎努 / Tsutomu YAMAZAKI本田博太郎 / Hakutaro HONDA長江健次 / Kenji NAGAE四方堂亘 / Wataru SHIHUDO, 山口祥行 / Yoshiyuki YAMAGUCHI本宮泰風 / Yasukaza MOTOMIYA坂田雅彦 / Masahiko SAKATA中野裕斗 / Yuto NAKANO勝矢 / Katsuya
ジャンル: サスペンス, アクション
鑑賞方法: Blu-ray

Monday, February 3, 2014

ストロベリーナイト (TV) / Strawberry Night (TV)



誉田哲也原作の姫川玲子シリーズ第1作目「ストロベリーナイト」の初映像化作品はフジテレビ製作の2時間ドラマ。本作は「パイロット版」として2010年に制作され、2012年には連続ドラマ化と映画化もされた。主演に竹内結子でフジテレビ制作と、少々薄っぺらい刑事ドラマを想像するのだが、その期待は良い意味で完全に裏切られる。

女性でノンキャリアにも関わらず警視庁捜査一課十係主任に異例のスピード出世を果たした姫川玲子。そんな彼女のもとへブルーシートに包まれた男の死体が公園の溜め池のほとりで発見されたと一報が入った。発見された死体は丁寧に包まれていた一方、人目につきやすい公園に無造作に置かれたいた。現場の状況に違和感を感じる姫川は、以前監察医から報告を受けた全く別の事件である「脳の溶けた死体」とのかすかな繋がりを感じていた…。

一連の姫川玲子シリーズ映像化作品で一番最初に観たのは「映画版作品」 だったのだが、やっぱりシリーズ初回作である本作から見た方が良かったと後悔。初回作を見たことにより、姫川とその部下、癖のある登場人物やチームに起こった事件などを理解しつつ、映画版のストーリーと人物群像劇でモヤモヤっとなっていた部分がやっと理解できた。その映画版とは異なり、猟奇殺人などのシーンで放送上制約の多いTVドラマとしては非常に上手く映像化しているなと感心する。仮に映画で同じ映像を表現するのならもっと直接的で派手な映像になっただろうが、迫力を失うこと無くTV放送に耐えられる映像として仕上げた製作陣の辣腕に脱帽。ラストシーンは如何にもTV的なカジュアル感が出たが、久々に重厚で良質な刑事サスペンス・ドラマを観た。(SS)

製作: 2010年 日本 106分
監督: 佐藤祐市 / Yuichi SATO
原作: 誉田哲也 / Tetsuya HONDA「ストロベリーナイト」 
出演: 竹内結子 / Yuko TAKEUCHI, 西島秀俊 / Hicetoshi NISHIJIMA宇梶剛士 / Tsuyoshi UKAJI, 桐谷健太 / Kenta KIRITANI渡辺いっけい / Ikkei WATANABE, 遠藤憲一 / Kenichi WATANABE, 高嶋政宏 / Masahiro TAKASHIMA, 生瀬勝久 / Katsuhisa NAMASE, 武田鉄矢 / Tetsuya TAKEDA, 津川雅彦 / Masahiko TSUGAWA, 林遣都 / Kento HAYASHI, 国仲涼子 / Ryoko KUNINAKA
ジャンル: TV, サスペンス
鑑賞方法: DVD