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Tuesday, December 25, 2012

麒麟の翼 (映画)



加賀恭一郎シリーズとして有名な東野圭吾原作の同名小説を元に、主演に阿部寛を迎えて映画化したミステリー作品。原作小説どころか、加賀恭一郎シリーズ自体が未読なので、原作については一切コメンできないのだが、これに加えて、『新参者』という同シリーズのTBS製作TVドラマもあるようだがこれも未鑑賞。どうりで、本作の製作がTBSな訳だ。本作は日本の国道の起点でもある東京都中央区の日本橋に実際に存在する『麒麟の翼』をキーとして、そこで起きた殺人事件の捜査と、日本橋という街の素顔、事件の意外な真相とそれによって顕在化した切ない人間模様を描いたミステリー・ドラマ。

ある日、日本橋の翼のある麒麟像の下で男性の刺殺体が発見される。被害者である青柳武明は死の直前、腹部を刺されながら誰に助けを求めることもなく、8分間も歩き続け、縁もゆかりもない日本橋までやって来るという不可解な行動をとっていた。一方、容疑者には、青柳のバッグを持って現場から逃走中に車に轢かれて意識不明に陥った若者・八島冬樹が浮上。恋人・中原香織が懸命に無実を訴えるも、事件は八島の犯行としてあっけなく解決するかに思われた。そんな中、日本橋署の刑事・加賀恭一郎はコンビを組む松宮脩平とともに独自の捜査を進めていくが…。

タイトルの『麒麟の翼』とは何とも読者や聴衆の心をツカむのが上手いタイトルだなと。麒麟という想像上の動物に翼を付けた荘厳なモニュメントが、これまた日本の道路元標が埋め込まれた歴史ある日本橋と地にあるというだけで、歴史地理好きや道路好きの興味をくすぐる。そして、そこで起きた殺人事件と日本橋界隈の歴史ある神社仏閣との意外な関係…と、ツカミとしては十分。しかし、原作や脚本の質に対して肝心の映像が負けていると感じる。捜査本部や日本橋界隈での映像など、マスクをかけてもう少し映像に重厚感を出せば良いと思うし、出演者も新垣結衣や溝端淳平、黒木メイサなど出演者ありきで配役してしまった感が否めず、TBS製作のちょっと豪華なテレビドラマという所から抜けきってないのが残念。(SS)


製作: 2012年 日本 129分
監督: 土井裕泰 / Hiroyasu DOI
製作: 濱名一哉 / Kazuya HAMANA
出演: 阿部寛 / Hiroshi ABE, 新垣結衣 / Yui NIIGAKI, 溝端淳平 / Junpei MIZOBATA, 松坂桃李 / Tori MATSUZAKA, 中井貴一 / Kiichi NAKAI, 山崎努 / Tsutomu YAMAZAKI, 黒木メイサ / Meisa KUROKI, 劇団ひとり / Gekidan-Hitori, 鶴見辰吾 / Shingo TSURUMI, 松重豊 / Yutaka MATSUSHIGE, 田中麗奈 Reina TANAKA
ジャンル: ミステリー
鑑賞方法: Blu-ray

シャッター・アイランド / Shutter Island



マーティン・スコセッシ監督とレオナルド・ディカプリオの組み合わせで送るミステリー・サスペンス。絶海の孤島、シャッター・アイランドにそびえ立つ精神病を患った犯罪者のみを収容する施設を舞台に、施設から行方不明になった女性の捜索に訪れた連邦保安官が、施設の警務官や医師達の不審な言動と行動に悩まされつつ、次第に大きな核心に迫っていく様を、ブルーのフィルターが掛かった重厚な映像の元に描き出す。

ボストン沖の孤島、シャッター・アイランドには、精神を患った犯罪者を収容するアッシュクリフ病院があり、患者は皆厳重な監視下におかれていたが、ある日レイチェルという女性患者が突然行方不明になる。事件の捜査のため、連邦保安官であるテディがその相棒チャックと共にシャッター・アイランドに派遣された。上陸した2人は、医師やナース、患者たちへの聞き込みを開始するが、テディはレイチェル失踪事件とは無関係な、レディスなる人物についての質問を繰り返す。実は、テディとレディスには過去にある因縁があり、この病院にレディスが収容されていると知ったテディは、復讐の為にこのシャッター・アイランドへやってきたのだった…。
公開当時のキャッチコピーは「衝撃のラスト」で、上映前には今やシベリア超特急の専売特許となり、使用するのに躊躇する「この映画のラストはまだ見ていない人にはけっして話さないでください」や「登場人物の目線や仕草にも注目しましょう」という旨のテロップが入るという作品。そもそも映画というのは素直に楽しむものであって、必死に考えて謎解きをするものではないような気がするが、そういう事に魅力を感じる方にはおあつらえ向きの作品。しかし、勘の良い人だったら見てる途中やそもそもの映画の設定を読んだだけでも、本作の『衝撃のラスト』に気付くかもしれない。しかし、気づいた後、もしくは二度目の鑑賞でもそれなりに楽しめるのが本作の良い所で、一粒で二度美味しいを地で行く作品。なお、本レビューを書くのは二度目に観た後なのだが、一度目に映画館で観た時は3つ星かそれ以下の低評価にも関わらず、二度目に観た後は4つ星となった。つまり、勘の良い人ほど二度観るべき。(SS)


製作: 2010年 アメリカ 138分
監督: マーティン・スコセッシ / Martin SCORSESE
製作: 
出演: レオナルド・ディカプリオ / Leonardo DiCAPRIO, マーク・ラファロ / Mark RUFFALO, ベン・キングスレー / Ben KINGSLEY, ミシェル・ウィリアムズ / Michelle WILLIAMS, エミリー・モーティマー / Emily MORTIMER, マックス・フォン・シドー / Max Von SYDOW, パトリシア・クラークソン / Patricia CLARKSON
ジャンル: ミステリー, サスペンス
鑑賞方法: 映画館, DVD

Saturday, December 15, 2012

007 #23 スカイフォール / 007 #23 Skyfall



1962年公開のドクター・ノオから数えること第23作目の本作は,そのドクター・ノオから50年目に製作・公開された節目の作品でもある。主演はシリーズ3作目となるダニエル・クレイグ。

物語はMI6のエージェントが殺害され、MI6がNATOを通して世界中のテロ組織に密かに送り込んでいるスパイのリストが入ったハードディスクが盗まれる事態から始まる。事件現場に到着したボンドは、息も絶え絶えの仲間のエージェントの命を救うことも、出血を止める事すらも許されず、MによりHDDの確保を指示される。舞台はトルコの市街地。お約束のカーアクションに続く、バザールの屋根で繰り広げられバイクチェイスは本作でも最大の見もの。車からバイク、列車と逃げる犯人も遂にボンドに追いつかれ、最後は走る列車の屋根の上で緊迫する格闘が続くが、作戦は思わぬ形で失敗することになる...。

3作目となるダニエル・クレイグのボンドは、巷やイギリスの批評家からは概ね良い評価を受けているようで、シリーズ最高のヒット作というキャッチコピーも嘘ではないのだろう。しかし、本作は個人的にはダニエル・ボンドの中でワースト作品。序盤のトルコのバザールの屋根で繰り広げられるバイクチェイスから列車の屋根でのアクションが本シーンのツカミで最高の山場。以降は、火薬の量で勝負した画像が続くのみ。いつもは、イギリス人らしい小気味良いジョークの一つや二つが入り、ニヤリとさせられるのだが、それも無し。ダニエル・ボンドでは初出演となる久々登場のQがボンドに渡す道具は本人認証機能付きの銃と発信機のみ。しかも、ペン型爆弾は古いと言いやがった。シリーズにおけるQの存在価値は、ペン型爆弾とかワイヤーが仕込まれた時計とか、イグノーベル賞狙いかと思わせるスパイグッズにあったんじゃないのか。ストーリーも首を傾げるところが多く、特に上海からマカオ、そしてUKに戻り、最後の決戦に至るあたりは、そこまで場所を変えて敵と対峙する合理的な理由が見つからず困ってくる。プロパンガスあるなら最初からそれで戦えよと。

長崎の軍艦島がロケ地として出てる。この島は映画に向いている島だと思うが、トルコのバザールもよく映画で使われる。記憶するところでは、ゴースト・プロトコルやザ・バンクなど。皆が走りまくってるので、屋根が大丈夫か心配になる。(SS)


製作: 2012年 イギリス 143分
監督:  サム・メンデス / Sam MENDES
製作: カラム・マクドゥガル / Callum McDOUGALL
出演: ダニエル・クレイグ / Daniel CRAIG, ジュディ・デンチ / Judi DENCH, ハビエル・バルデム / Javier BARDEM, レイフ・ファインズ / Ralph FINNES, ベン・ウィショー / Ben WISHAW
ジャンル: アクション, スパイ, サスペンス, 007
鑑賞方法: 映画館

Wednesday, December 5, 2012

キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン (映画) / Catch Me If You Can (film)



フランク・アバグネイル・ジュニア氏 (Frank William ABAGNALE, Jr.) は元・天才詐欺師で、現在はFBIに捜査協力を行う銀行詐欺および偽造小切手摘発の権威である一方、偽造防止小切手の発案者としても知られている人物である。そのアバグネイル氏による自伝小説『Catch Me If You Can』を原作として、主人公にレオナルド・デカプリオ、そしてアバグネイルを追いかけるFBI捜査官カール・ハランティにトム・ハンクスを起用し、スティーヴン・スピルバーグによる監督で製作された映画作品である。

物語はそのフランクがまだ高校生だった頃から始まる。フランクの父は地元でも名のとおる高名な人物でフランクは父を心から尊敬していたが、その父が経営する店が国税局の査察捜査を受けた事を発端に幸せだった一家は崩壊し始める。そしてある日突然両親が離婚するすると聞いた時、フランクはあまりのショックで家を飛び出してしまった。一文無しのフランクだったが、生きるために父が16歳の誕生日に作ってくれた小切手帳を偽造して少額の小切手詐欺を働くようになる。しかし、フランクの貧相な風貌や年齢から相手にしてくれない銀行ばかりだった。そんなある日、彼はホテルでパンナム航空のパイロットを見かけた時にふと気付いた。早速パイロットになりすまして銀行を尋ねると、その風貌を見て信用し誰もが騙された。これに味をしめたフランクは偽造小切手を乱発し巨額の資金を手に入れていく。一方、偽造小切手による詐欺事件を捜査していたFBI捜査官のカール・ハランティは、フランクが振り出す小切手を手掛かりにして、いまだ姿の見えぬフランクを徐々に追い詰めていた…。

この手の作品にありがちな勧善懲悪という訳でもなく、かと言って天才詐欺師を賛美するような作品でもない。言うならば、悪事を働いた詐欺師とその詐欺師を追いかけるFBI捜査官の両方がハッピーエンドを迎えるという面白いストーリーを持つ作品で、最後までストレスなく鑑賞できる。敢えて言えば、小切手詐欺の被害者である銀行が可哀想ではあるが。原作は未読だが、総額数百万ドルの小切手詐欺をテーマにした作品であるので、描き方によってはもう少し重い感じになったかもしれないのだが、全体的にコミカルかつ軽妙なタッチで描かれ、148分と長めの作品ながら最後まで気持よく観ることが出来る秀逸作。(SS)


製作: 2002年 アメリカ 148分
監督: スティーヴン・スピルバーグ / Steven SPIELBERG
製作: スティーヴン・スピルバーグ / Steven SPIELBERG
出演: レオナルド・デカプリオ / Leonardo DICAPRIO, トム・ハンクス / Tom HANKS, クリストファー・ウォーケン /  Christopher WALKEN, マーティン・シーン / Martin SHEEN, ナタリー・バイ / Nathalie BAYE, エイミー・アダムス / Amy ADAMS, ジェニファー・ガーナー / Jennifer GARNER
ジャンル: クライム, コメディ
鑑賞方法:DVD

Tuesday, December 4, 2012

幸せの黄色いハンカチ / The Yellow Handkerchief



『男はつらいよ』シリーズで名を馳せる山田洋次監督による、北海道を舞台にした邦画ロードムービーの代名詞。1977年製作の本作は主人公に高倉健および倍賞千恵子というビッグネームを起用し、本作が映画デビュー作となる武田鉄矢や桃井かおりが脇を固めつつ渥美清が端役という、主役級役者を揃えて臨んだ意欲作。単純なストーリーと分かり易いハッピーエンドだが、当時の若い世代の行動心情を荒削りながらも鮮やかに演じる武田鉄矢と桃井かおり、そして加えて『健さん』の圧倒的な存在感と名演技が、淀みの無いテンポの良い展開と相まって、公開年の第1回日本アカデミー賞、キネマ旬報賞やブルーリボン賞など国内の映画賞を総なめした。しかし、邦画のヒット作が国内の殆どの映画賞を受賞してしまうというのは日本映画界の伝統なのか。各賞の主催者が他の賞と違う切り口で作品を評価する姿勢が強ければこうならないと思うのだが。

作品に話を戻す。前述のとおりストーリーは至極単純で、失恋してヤケになった武田鉄矢演じる花田欽也は、赤いマツダ・ファミリアでフェリーに乗り、北海道でのツーリングに出かける事に。そんな欣也にナンパされたのは桃井かおり演じる朱美という女の子。彼女もまた失恋の痛手を北海道旅行で癒そうとしていたのだった、一方、網走刑務所から刑期を終えた島勇作(高倉健)が出所していた。とある海岸で勇作に写真撮影をお願いしたことをきっかけとして旅を共にする事になった3人だが、旅を続けるうちに勇作の過去が次第に明らかになる…。

レビューではあまりネタバレを書きたくないのだが、こと本作についてはDVDのジャケット然り、映画の予告編然りで、黄色いハンカチがそこら中にはためいており、仕舞いには映画本編の映像でさえエンディング直前に黄色いハンカチが見切れており、これでは映画を観ている途中からハッピーエンドを分かりつつ鑑賞することになるのが個人的にはどうもしっくりこない。

日本映画界の大スターである高倉健だが、その作品は『ブラック・レイン』くらいしか鑑賞したことがなく、どんな役柄でもいつも高倉健という印象だった。しかし、本編開始直後に勇作が駅前食堂でビール・醤油ラーメンとかつ丼を注文してそれを貪り食うというシーンを観て、自分が間違っていた事に気付かされた。何の変哲も無いビールを飲んで飯を食うだけのシーンだが、6年間服役した出所直後の男が飲む久しぶりのビールと美味い飯、というのが語らずともひしひしと伝わってくるようだ。聞くところによると、このシーンのために二日間食事を摂らずに撮影に臨んで一発OKだったという。高倉健が真のプロフェッショナルたる一端がここにある。(SS)


製作: 1977年 日本 108分
監督: 山田洋次 / Yoji YAMADA
製作: 名島徹 / Toru NAJIMA
出演: 高倉健 / Ken TAKAKURA, 倍賞千恵子 Chieko BAISHO, 武田鉄矢 / Tetsuya TAKEDA, 桃井かおり Kaori MOMOI, 渥美清 / Kiyoshi ATSUMI
ジャンル: SF, サスペンス, アクション
鑑賞方法: DVD

Monday, December 3, 2012

シベリア超特急 5 〜 義経の怨霊、超特急に舞う〜 / Siberian Express 5



本作は『シベリア超特急 5』でシリーズ第5弾ではあるが、前作は舞台であり、次作のシリーズ第6弾は水野晴郎の急逝により宙に浮いたまま、また、第7弾も舞台作品であることから、映画第4弾であり且つ実質シリーズの最終作となる。監督はマイク・ミズノ。製作・原作・脚本・主人公は水野晴郎。西田和晃は変わらず。大物ゲストとしては本作が最後の出演映画となってしまった故岡田眞澄。歌舞伎界から片岡某の二人、宝塚からは西條三恵が佐伯大尉の妹役として出演している。それにしても、シリーズを通して歌舞伎役者や宝塚出身者などが出演が目立つが何故だろうか。特に、本作では片岡某やら尾上某やら大量出演している。彼らはシベ超を役者キャリアにおけるステップアップの一つとでも考えているのだろうか。

ということで、物語の舞台はいつも通り。一応書いておくと、第二次世界大戦開戦前夜の1941年。ヒットラーとの会談を終えた山下泰文日本陸軍大将と佐伯大尉は、モスクワ駅からシベリア鉄道に乗り込んだ。そんな二人に『満州里到着までの7日間で、とある地図を確保せよ』との緊急伝令が入電した。そして、その地図とは源義経の秘宝のありかを描いた古地図のことだった。しかし、この古地図を探しているのは山下閣下だけでは無かった。そして、この古地図を巡ってお約束の密室殺人事件が発生する…。

本作はボンちゃんが二役で演じる淀川長治のパロディーから始まる。映画全体の展開を知った今となっては意味が無いとは言わないが、ハッキリ言ってしょーも無いシーンで意味不明である。しかし、この冒頭シーンの完成度が本作全体の方向性を如実に物語っているようだ。その他では、宙を舞うロープや列車上での格闘などいつも通りで、過去名作へのオマージュはヒッチコックのみならず西部劇の名作『駅馬車』にまで及ぶ。しかし、圧巻はシリーズ第2作以来の階段落ちである。万里の長城を落ちるこの階段落ちは圧巻とは書いたが、一言で言えばやり過ぎであり、もはや万人が持ち得る『笑いのツボ』の向こうにある事は否めない。

予算の配分が間違っているというのは言いすぎだろうか。お約束の『出演者紹介』シーンにおけるモスクワ駅のセットは相当に造り込まれており、ベニヤ板臭は微塵も臭わない。過去のシリーズにおいては、くま川鉄道あたりのSL走行をそれっぽく魅せたと思われる蒸気機関車の走行シーンだが、本作ではCGでそれを表現している。CGと言っても『シベ超』らしさ溢れるCGで、それ自体が何ら本作に対してリアリティーを与えている訳ではないが。また『一切揺れない車両』として過去に散々ツッコまれた車両のセットは、本作では『カメラワーク』および稲川素子事務所派遣の国際女優さん達が頑張って『揺れる車内を歩く演技』をしたことにより、疾走するシベリア鉄道車内を表現している。しかし、車両の幅があり過ぎて鉄道車両らしさを失ったのが残念。しかし、私が本作で最も酷評したいのは、高品質なセットやCGなどのいわゆる『見てくれ』部分に予算をかけておきながら、キャスティングも含めた作品の『中身』を手薄にした挙句、コメディー色を相当に強めた作品として仕上げてしまったことだ。本作はB級と言われながらもミステリー作品であり、絢爛豪華なエンターテイメントであったはずなのに、それが低俗なコメディー作品に落ちぶれていると言わざるを得ない。しかもコメディー作品として評価しても中途半端。個人的にはシベ超らしさという意味ではシリーズ第2作目が頂点にある作品で、映画作品としては第3作目が頂点かと思う。鑑賞し終わった後に、引退するタイミングを間違えた年老いたプロスポーツ選手の老獪さとは違う情けないプレーを観たかのようで、一人のシベ超ファンとして幾ばくかの寂しさを感じた。

今回の本編開始前のテロップは『最後に登場する真犯人の名と続くどんでん返しは決して人に話さないで下さい』というもの。はいはい。誰にも言いませんよ。スターウォーズ風のエンディングロールから『ドンデン返し』と続き、DVD版では最後にNG集も追加されている。

かつて、ポルシェのCMコピーに『最新のポルシェが最高のポルシェだ』というのがあったが、これを鑑みるに『最新のシベ超が最高のシベ超』とはならなかったようで残念だ。本作はこれまでシベ超作品を観たことの無い初心者にはお勧めできない。これはコアなファンが過去のシリーズ作品を十分に消化して、やっと到達できる悟りの境地にそびえ立つ霊峰のようなものだ。(SS)


製作: 2004年 日本 134分
監督: マイク・ミズノ / Mike MIZUNO
製作: 水野晴郎 / Haruo MIZUNO
ナレーター: 油井昌由樹 / Masayuki YUI
出演: 水野晴郎 / Haruo MIZUNO, 西田 和晃 (西田和昭) / Kazuaki NISHIDA, 片岡愛之助 / Ainosuke KATAOKA, 片岡進之介 / Shinnosuke KATAOKA, 西條三恵 Mie SAIJO, 中野良子 / Ryoko NAKANO, 岡田眞澄 / Masumi OKADA, ガッツ石松 / Guts ISHIMATSU, 佐藤允 / Makoto SATO, 淡島千景 / Chikage AWASHIMA, ニコラス・ペタス / Nicholas PETTAS, 片岡未来 / Mirai KATAOKA, 中村福助 / Fukusuke NAKAMURA, 大槻ケンヂ / Kenji OTSUKI
ジャンル: ミステリー
鑑賞方法: DVD

シベリア超特急 4 〜 監督殺人事件 〜/ Siberian Express 4



不朽の名作『シベリア超特急』シリーズ第4弾は何と舞台である。本作は2003年1月18日に新宿シアターアプルで上演された最初で最後の1度限りの舞台版をDVDにしたものだ。例によって演出、脚本、製作はマイク・ミズノ、監督は水野晴郎である。シベ超を生の舞台にして、しかも一度限りの公演とはマイク・ミズノも思い切った事をやったものだが、これをそのままシリーズ第4弾DVDとして発売してしまうあたりに、エンターテイナーでありプロデューサーでもあるマイク・ミズノの力量の向上を感じる。

本作のストーリーは少々トリッキーで面白い。端的に言うと『シベリア超特急 4』の製作を開始しようとしていた矢先、監督の水野が何者かによって殺害されてしまう。そして、この殺人事件の謎を解き明かすべく『シベ超 4』の制作スタッフは台本通りに『シベ超4』を演じることにした…、というもの。冒頭に宇津井健、内藤武敏や三田佳子などが出演しており、基本的には前作までの出演者がそのまま横滑りしているように見えるが、はっきり言ってこの御三方は出演者というよりも、舞台冒頭に水野とフリートークをかましているだけで、何らかの役を演じているわけではない。その他では新たな大物として丹波哲郎が本人役で参加するも、こちらもユルユルの演技とは程遠いもの。

ということで、本作をもって舞台と評するのは真面目に『舞台』に取り組んでいる方々に失礼かと思う。と言うのも、水野以外の役者陣は真面目に本舞台に取り組んでいるのに、肝心の主役の水野が台詞を忘れていると思われるシーンがあるのだ。周りの役者がそれをフォローしつつ上手く笑いに変えているが、おかげで舞台上に一流処を揃えておきながら、ストーリー展開は二の次になってしまい、舞台としてはほぼ破壊されたと言ってもいいだろう。私は何も台詞を発するだけで笑いを取る水野の『超棒読み』や『超々自然体』の演技を批判している訳ではない。台詞もロクに覚えずに一発勝負の『舞台』に上がってきた役者としての水野の取り組みを批判しているのだ。ちなみに、真柄加奈子も台詞忘れをしており、舞台袖のスタッフに次の台詞を促されている。

とは言うものの、そんな舞台も『シベ超』というフィルターを通して観てみると全てがそれらしく、本物の役者が演じる真剣な演技と水野のそれとの大きなギャップ、そしてそれが誘発する笑い。コメディー方面に強めに振った謎解きの面白さとお約束の反戦メッセージ。そして、最後にはお約束の『ドンデン返し』も準備されており『シベ超』らしい極上のエンターテイメントに仕上がった。

見終わった後にふと不思議な感じに襲われた。今、私が観たのは舞台なのかトークセッションなのか学園祭の出し物なのか…。『シベリア超特急 4を観たんだ』と自分自身に強く念じる事を強くおすすめする。さもなければ、この舞台作品を観たことすら忘れてしまうだろう。(SS)


製作: 2003年 日本 132分
監督: マイク・ミズノ / Mike MIZUNO
製作: 水野晴郎 / Haruo MIZUNO
ナレーター: 油井昌由樹 / Masayuki YUI
出演: 水野晴郎 / Haruo MIZUNO, 西田 和晃 (西田和昭) / Kazuaki NISHIDA, 三田佳子 / Yoshiko MITA, 宇津井健 / Ken UTSUI, 内藤武敏 / Taketoshi NAITO, 光本幸子 / Sachiko MITSUMOTO, 丹波哲郎 / Tetsuro TANBA, 真柄佳奈子 / Kanako MAGARA, やべきょうすけ / Kyosuke YABE, 安井昌二 / Shoji YASUI, 小田切みき / Miki ODAGIRI, 渡辺雄作 / Yusaku WATANABE, 金濱夏世 / Natsuyo KANAHAMA
ジャンル: ミステリー, 舞台
鑑賞方法: DVD

Friday, November 30, 2012

シベリア超特急 3 ~ 60年目の悪夢 ~ / Siberian Express 3



邦画の名作『シベリア超特急』のシリーズ第3弾は、密室殺人事件や反戦というシリーズ・テーマに変わりはないものの、舞台も時代も総取替して臨んだ意欲作。今回は現代の瀬戸内海を航行する豪華客船が舞台だが、60年前にシベリア鉄道で起きた事件がダイアローグ形式で語られる展開で、シベリア鉄道車内で起きる殺人のトリックの中身も併せて鑑みるところ、シリーズ第1作目と2作目を足して2で割ったような作品だろうか。なお、本作は息子の不祥事で芸能活動を自粛していた三田佳子の復帰作であり、宇津井健、大浦みずきや内藤武敏などベテラン・ビッグネームが普通に出演しているあたりから、本作のネームバリューもそれなりに築かれたという事を感じさせる。

舞台は2002年。瀬戸内海上を航行する豪華客船上で大富豪の宮城伝蔵が主催する船上パーティーが開催されていたが、その最中にパーティーの参加者が殺されてしまう。殺害された時刻は3:14。そういえば宮城伝蔵が60年前にシベリア鉄道で遭遇したある殺人事件も同じ3:14に起きたものだった。そして、宮城伝蔵はその当時の話を静かに語りはじめた…。一方、その60年前のシベリア鉄道では、ヒットラー、ムッソリーニおよびスターリンとの会談を終えた山下奉文日本陸軍大将がシベリア鉄道で日本へ帰国する途中であった…。

『ヒットラーもスターリンも何を考えているのか分からぁん』という山下閣下の棒読み台詞、回を追う毎に洗練される人物紹介。考え込んでいるのか居眠りしているのか、はたまた死んでいるのか判別不能な閣下の演技。テグス丸見えの宙を舞うロープなど、過去の名作に対する数々のオマージュと定番シーンは本作でも健在。しかし今回はもっと凄い隠し玉が用意されている。冒頭の超長回しは本シリーズではすっかり定番となった手法だが、ここに凄まじい急降下爆弾が仕込まれている。時間でいうと本編開始後9:30の辺りで監督のマイク・ミズノが画面背後に見切れているのである。黄色いトレーナーを着ているマイク・ミズノはまさに特典映像のメイキングでみた監督そのものである。これを世間では大NGとかトンデモなどと評しているようだが、私はそうは思わない。これは『シベ超』を心から楽しんでもらおうとの狙いを持って意図的に織り込まれたマイク・ミズノ一流のエンターテイメントだろう。そしてその仕掛けに囚われた有名人を含む多くの人が、ネタとしてWEBやらTVやらラジオやらで喋りまくっている。私もそんな一人だが、この見切れのシーンに大笑いしてマイク・ミズノの仕掛けた罠に嵌まりつつ、監督としての力量の向上を感じるのだった。

今回の本編開始前のテロップは『瀬戸内海事件の真相とラスト二つのドンデン返しは決して人に話さないで下さい』との事だが、もはや『本作を観たことを決して誰にも喋ってはいけません』と言われているようなものだ。しかし、この前フリで『シベ超』のコアなファンを煽っておきながらの余りに普通過ぎるドンデン返しには全く納得出来ない。シリーズも3作目にきてマイク・ミズノとしては練に練った真面目な『ドンデン返し』なのだろうが、これでは笑いも何もないだろう。もちろん、それを良しと観る向きもあるのだろうが、私は『シベ超』が『シベ超』である所以をマイク・ミズノ自ら捨てたようなものと感じ、エンディングロールを観ながら盛り上がる私の高揚感をすっかり台無しにされ、久々に胸糞が悪くなった。(SS)


製作: 2001年 日本 111分
監督: マイク・ミズノ / Mike MIZUNO
製作: 水野晴郎 / Haruo MIZUNO
ナレーター: 油井昌由樹 / Masayuki YUI
出演: 水野晴郎 / Haruo MIZUNO, 西田 和晃 (西田和昭) / Kazuaki NISHIDA, 三田佳子 / Yoshiko MITA, 宇津井健 / Ken UTSUI, 大浦みずき / Mizuki OOHRA, 内藤武敏 / Taketoshi NAITO, アガタ・モレシャン / Agathe MORECHAND, 真柄佳奈子 / Kanako MAGARA, 大塚ちひろ / Chihiro OTSUKA
ジャンル: ミステリー 
鑑賞方法: DVD

シベリア超特急 2 ~ 菊富士ホテル殺人メロディ ~ / Siberian Express 2



シリーズ第1作目にしてもはや伝説となった『シベリア超特急』のシリーズ第2弾は、舞台をシベリア鉄道の車内から満州里(マンチュウリ)付近にある菊富士ホテルの3階に移し、例の如く密室殺人事件とそれを解決へと導く山下大将の活躍、そしてマイク・ミズノ監督渾身の反戦メッセージを描く。寺島しのぶ及び第7回国民的美少女コンテストグランプリの須藤温子の映画デビュー作でもあり、両名とも素晴らしい作品をデビュー作に選んだと思うが、鈴木保奈美の『刑事物語』のように『黒い歴史』になければと切に願う次第。それにしても出演者が非常に豪華である。淡島千景、草笛光子、光本幸子、二宮さよ子、加茂さくらに長門裕之とよくまぁ集めたものだが、この辺は前作のキャスティングを反省したマイク・ミズノの成長が見られるところだ。なお、水野晴郎の自画自賛によると、前述の俳優陣に対して出演依頼をする際、台本を見せずにお願いしたところ『水野さんのが造る映画だと楽しそぉー』ということで全員快諾したそうだ。俳優陣は前作を観たのだろうか。

舞台を列車車内からホテルの室内に移しただけで、密室殺人事件をテーマにした物語の基本線は前作と変わっていないが、物語は当時の事件関係者のキーパーソンが現代にて、取材の記者に対して語るダイアローグの形で展開される。時代は第2次世界対戦開戦前夜の1941年。ヒットラーとの会談を終えた山下奉文日本陸軍大将はシベリア鉄道で日本へ帰国する途中だったが、何者かにより鉄道が爆破されたため、満州里近くの菊富士ホテルへ急遽宿泊することになった。山下大将以外も含めて見るからに癖のありそうな宿泊者達。そして謎の殺人事件が発生する…。

冒頭における菊富士ホテルへチェックインのシーンにおける登場人物の紹介や、『ヒットラーは信用できんぞ!』『スターリンは何を考えているか分からぁん』『何とか戦争だけは回避させなければいかんなぁ』という山下大将の棒読み台詞など、自らの前作に対するセルフ・オマージュ。そして宙を舞うロープ、画面分割や人物目線のカメラワークなどなど過去の名作に対する数々のオマージュに溢れているのも前作同様。

本作における私のお気に入りのシーンの一つは山下大将がナイフを持つシーンだ。どう贔屓目に観ても山の如く動かない山下大将が持つナイフに、被害者役を演じる長門裕之自らが刺されに向かっている。まるで、晩年のジャイアント馬場の十六文キックに向かって引き寄せられる若手レスラーのようだ。一方、水野晴郎の駄々を捏ねる子供のような演技を補うべく獅子奮闘の演技で役者魂を見せた長門裕之は称賛に値する。そして、それを上回るシーンは殺人事件の犯人という嫌疑を掛けられ、軍人らしく自決を迫られた山下大将が頭部に引き金を掛けた後に発する『やめたぁ〜』という台詞である。名だたる女優陣が魂を込めて作り上げた緊迫感あるシーンを一瞬で完膚無きまでに崩すこの名セリフは後世まで語られるに違いない。それにしても、水野晴郎の『超棒読み』と『超々自然体の演技』は本作でも健在だが、歌舞伎役者の中村福助も水野に負けじと甲高い声と緊張感の無い演技で魅せており、水野の稚拙な演技を上手くボカしている。

今回の本編開始前のテロップは『真相は三つの逆転のあと判明しますが決して人に話さないで下さい』というもの。もはや日本語がおかしいがまぁ良いだろう。『絢爛豪華なエンターテイメント、そして加えてサスペンスの面白さ、そして最後に流れる戦争反対のテーマ(水野晴郎談)』をじっくりと堪能して欲しい。もう何があっても驚かないつもりで観たが、最後に大波のように襲いかかる『どんでん返し』は、ダイアローグで語られるという本作の基本設定そのものでさえ木端微塵にするほどの強力な破壊力。マイク・ミズノを堪能し、耐え、許し、受け入れる覚悟が出来ているか否か、鑑賞前に自己確認する事を強くお勧めする。(SS)


製作: 2001年 日本 111分
監督: マイク・ミズノ / Mike MIZUNO
製作: 水野晴郎 / Haruo MIZUNO
ナレーター: 油井昌由樹 / Masayuki YUI
出演: 水野晴郎 / Haruo MIZUNO, 西田 和晃 (西田和昭) / Kazuaki NISHIDA, 淡島千景 / Chikage AWASHIMA, 草笛光子 / Mitsuko KUSABUE, 光本幸子 / Sachiko MITSUMOTO, 寺島しのぶ / Shinobu TERASHIMA, 二宮さよ子 / Sayoko NINOMIYA, 加茂さくら / Sakura KAMO, 中村福助 / Fukusuke NAKAMURA, 須藤温子 / Atsuko SUDO, 尾上松也 / Mtsuya ONOE, 長門裕之 / Hiroyuki NAGATO, 安井昌二 / Shoji YASUI
ジャンル: ミステリー 
鑑賞方法: DVD

シベリア超特急 ~ 悪魔が乗った殺人列車 ~ / Siberian Express



邦画を語る上でこの作品だけは避けては通れない、という名作は数多く有る。例えば名作シリーズの『男はつらいよ』は、定番ながらも飽きのこない展開と銀幕を彩る名だたる名優達の演技で大衆の人気を掴んでいるものだ。

さて、シリーズ全6作が製作された『シベリア超特急』は名シリーズに成り得るか否か。私の見解は、本シリーズこそ邦画を語る上で避けては通れない名作シリーズだと断言したい。観る度にいい意味でも悪い意味でも裏切られ、満を持して友達に紹介するも逆に『何てことしてくれるんだ!』と凄まれたり、本作を観た後に貴重な時間の損失してしまった事を悔やむ時もある。私の妻は何度一緒に観ようと頼んでも決して観てくれない。それでも、何故か愛して止まないこの名作『シベリア超特急』シリーズの記念すべき第1作目を紹介したい。

物語の舞台は第二次世界大戦開戦前夜の1941年。ヒットラーとの会談を終えた山下泰文日本陸軍大将は、外務省の青山一等書記官と佐伯大尉を連れ、満州経由で日本へ帰国するためシベリア鉄道の車内ですごしていた。しかし、イルクーツクを出発し満州へ向かう車内で殺人事件が発生した。自らのコンパートメントで山の如くじっと推理を巡らせる山下大将。しかし、そんな山下大将を嘲笑うかのように二番目、三番目の殺人が発生し、そして凶弾は山下大将自身へ向けられる…。

巷における本作の評価はいわゆる『B級映画』と言われるもので、ググれば総じて酷評レビューが多い一方、麻薬的な面白さを感じているレビューワーも多く、評価が別れる作品であるのは間違いない。しかし、冷静に考えてみると、本作よりも予算と時間を掛け、流行のアイドルやタレントを起用して華やかに製作される邦画作品群の中で、一体幾つの作品が本作よりも娯楽作品として面白いと言えるだろうか。一体幾つの作品が本作よりも世の中に伝えたいメッセージを織り込んでいると言えるだろうか。監督・脚本・演出を担当したマイク・ミズノの手腕は、デビュー作であるという事を差し引いても二流であるのは確かだろう。しかし、この不完全さこそが本作の魅力であり、そして ―私の勝手な想像だが― その不完全さを補うべくスタッフ一丸となった努力の結晶によって、この稀有の作品が産まれたに違いない。

しかし、とは言っても本作が『B級』であることは否めない事実だ。走行中のシベリア鉄道が舞台であるが、画面は一切の揺れを感じさせないし、列車の屋根で格闘するシーンではセットの端が見切れてバレバレであったり、山下大将が銃で狙われるシーンなどは、かたせ梨乃や菊池隆則などの『本物』の俳優のみならず、稲川素子事務所から借りてきた三流外国人俳優までもが緊張感のある表情で役を演じているのに対し、水野晴郎だけが超自然体の普段顔で緊迫したシーンが台無しだったりするが、これに関しては、どんな時でも動じない日本陸軍の高級幹部という設定を完璧に演じ切っている可能性もあり、評価は難しい。とにかく、アラを探しだすとキリがないのだが、こうしてアラを探すのもまた本作を観る上での楽しみと言うべきか。

しかし、本作を『B級』たる位置付けにしている最大の要素は、水野晴郎の『超棒読み』と『超々自然体な演技』に尽きる。そして、監督のマイク・ミズノ自ら、俳優としての水野晴郎の実力を過信し、この個性派俳優を起用する事に固執してしまったことが、本作を『B級』たる位置に貶めている決定的な要因なのではないだろうか。それにしても不可解なのは、DVDの本編終了後にかつて日テレの金曜ロードショーで水野が行なっていたような作品解説が特典映像として流れるのだが、ここでの滑舌ぶりは演技時のそれとは比べものにならないほどであることだ。自分の作品を自分自身で高評価しているのだから気分もいいだろう。だが、この饒舌さをほんの少しでも演技に回せればと思うのは私だけだろうか。

そんな作品解説とは人が変わったような滑舌の悪い水野晴郎のナレータから始まる本作は、『この映画はクレジットが出たあとある事が二度起こりますので、決してお友達に話さないで下さい』というテロップが流れて本編が始まるのだが、見終わった後に『これは話したくても話せる訳が無い』と思うに違いない。類似したテロップを流したり宣伝コピーに使う作品は過去に山ほどあったが、その何れも軽々と凌駕するマイク・ミズノ一流の『世界初の2回のどんでん返し(水野晴郎談)』を堪能し、そして見終わった後に押し寄せる独特の虚脱感にクタクタになるまで浸かってほしい。(SS)


製作: 1996年 日本 93分
監督: マイク・ミズノ / Mike MIZUNO
製作: 水野晴郎 / Haruo MIZUNO
ナレーター: 油井昌由樹 / Masayuki YUI
出演: 水野晴郎 / Haruo MIZUNO, 西田 和晃 (西田和昭) / Kazuaki NISHIDA, 占野しげる / Shigeru SHIMENO, かたせ梨乃 / Rino KATASE, 菊池隆則 / Takanori KIKUCHI,  アガタ・モレシャン / Agathe MORECHAND, インゲ・ムラタタ / Inge MURATA, シェリー・スェニーエリック・スコットフランク・オコーナー, フィリップ・シルバースティン
ジャンル: ミステリー 
鑑賞方法: DVD

Thursday, November 29, 2012

ハゲタカ - Road to Rebirth (TV)



『チェイス 国税査察官』や『監査法人』、最近では『外事警察』など硬派なテーマを元に、無骨ながらも民放にはない『TVっぽくない』映像で製作されるNHKのドラマはどれも秀逸な作品が多い。キャスティングも当世流行のアイドルや芸人、ジャニーズを使って画面を華やかにする訳ではなく、真に演技力のある俳優陣を起用する辺りがNHKらしい。本作は経済小説を多く手がける真山仁の小説ハゲタカバイアウトの2作品を原作とした経済ドラマ。

物語は外資ファンドのホライズン・インベストメントワークスで敏腕ファンド・マネジャーとうたわれた鷲津(大森南朋)が日本へ帰国するところから始まる。鷲津の目的は「日本を買い叩く」こと。かつて勤めていた三葉銀行が抱える不良債権を安く買い叩いては、経営者や従業員の事情など一切聞かず高値で売り飛ばす。そんな容赦ないやり方はいつしか『ハゲタカ』と呼ばれるようになっていた。そんな鷲津のハゲタカファンドが最初に標的としたのは老舗旅館の『西乃屋』だった。そして、旅館を切り売りされ何もかも失った西乃屋の社長は事故死してしまう。

その鷲津の強引な手法に異を唱えるのが、かつての三葉銀行時代の上司であった芝野(柴田恭兵)。芝野と鷲津は事ある毎に対立していく。一方、日本で企業を買い叩くハゲタカファンドに対して執拗に取材をするTVキャスターの三島(栗山千明)。彼女の父親はかつて小さな工場を経営していたが、銀行の貸し渋りにあい自殺をしたのだった。そして、当時の銀行の担当者が鷲津だった。そして、鷲津に切り売りされた『西乃屋』の息子である治(松田龍平)は、急成長するIT企業の若き社長となり、憎き敵でありながら同時に憧れでもある鷲津に挑戦状を叩きつけた…。

不良債権処理やハゲタカファンドなど、現実世界で起こっている事象を取り上げるだけではなくその裏にある人間模様を丁寧に描いているのだが、秀逸なのはストーリーだけではない。ブルーフィルターが掛かるTVの枠を超えた映像美、TVシリーズであるが故に放送時間枠内があるのは当然だが、ストーリーの展開をボカすことなく、一つのテーマをしっかりと描ききる凝縮感。映像・音楽・キャスト・演出と全てがバランスが良く描かれたNHKのドラマ史に名を残す名作に違いなく、見始めたら最後、全6話を一気に観てしまうことを請け負う。(SS)


製作: 2007年 日本
原作: 真山仁 / Jin MAYAMA 「ハゲタカ」「バイアウト」
演出: 大友啓史 / Keishi OTOMO, 井上剛 / Tsuyoshi INOUE, 堀切園健太郎 / Kentaro HORIKIRIZONO
出演: 大森南朋 / Nao OMORI, 柴田恭兵 / Kyohei SHIBATA, 松田龍平 / Ryuhei MATSUDA, 栗山千明 / Chiaki KURIYAMA, 嶋田久作 / Kyusaku SHIMADA, 志賀廣太郎 / Kotarou SHIGA, 渡辺哲 / Tetsu WATANABE, 中尾彬 / Akira NAKAO, 冨士眞奈美 / Manami FUJI, 小林正寛 / Masahiro KOBAYASHI, 光石研 / Ken MITSUISHI, 大杉漣 / Ren OSUGI, 宇崎竜童 / Ryudo UZAKI, 菅原文太 / Bunta SUGAWARA
ジャンル: TV, サスペンス 
鑑賞方法: NHK, DVD
エピソード: 
 第1話 「日本を買い叩け!」
 第2話 「ゴールデン・パラシュート」
 第3話 「終わりなき入札」
 第4話 「激震!株主総会」
 第5話 「ホワイトナイト」
 第5話 「新しきバイアウト」

Wednesday, November 28, 2012

難波金融伝ミナミの帝王 #35 非情のライセンス / The King of Minami #35



シリーズ第35作目の本作はいろいろと趣が変わった作品となった。まず、冒頭のツカミのシーンに続くタイトルロールで、主な出演者の紹介がされるようになった。だが、結城哲也(ゆうき哲也)と天田益男の沢木組一家は何故かここでは紹介されない。しかし、最も大きな変更点は探偵だ。矢吹探偵事務所の面々が事務所から消え、新たな探偵として川島なお美演じる速水翔子が加わった。萬田金融の事務所シーンでは、体に線に沿うような薄手のシャツと深いスリットの入ったスカートをまとった川島なお美が、その見事なボディシェイプを魅せている。

と言うことで、画的にはメジャー・チェンジを踏んだ本作だが、ストーリー的に大きな変化は無く、むしろ回を追う毎に水戸黄門や大岡越前のようなストーリーの基本線に乗った王道的なシリーズになってきた。悪党には遠藤憲一が起用されており、品川区出身の彼に関西弁による演技はさぞ厳しかったろうと想像するが、違和感を感じないのは遠憲一流のの演技力か、はたまた方言指導の宇野ポテトの力によるものだろうか。(東北出身の私には正確な評価は不可能だが)。

今回のテーマは耳慣れない『道具屋』なる商売。債務不履行などにより差し押さえとなった物件を競売で買い叩き、それをリサイクルショップなどへ転売して利ざやを抜く商売で、これはこれで真っ当な商売なのだが、悪徳道具屋の『ソレイユ』は差し押さえ物件を高額で競り落としたうえに、債務者へ2倍の価格で買い戻しをさせ、債務者をカタに嵌めていた。もう一つのテーマは『小口債務者』。十万二十万という小口の借金を銀次郎に頼むも債務不履行で飛ぶというもの。ところが飛んだ小口債務者の証書をよく見ると、皆がみな同じ住所を記載していたのだった。そしてこの住所のマンションの所有者が『ソレイユ』だった。そして、最後のテーマは『ゼネコンの裏社員』という、表立って出来ない仕事を秘密裏に処理するヤクザまがいの社員。そして、この3つのキーワードに悪徳金融とヤーさんが絡みつつも、最後のキリ取りへと帰結していく。

舎弟の公平も段々と目に慣れてきたが、遠藤憲一演じるソレイユの社長に『このオールバックメガネ!』など、軽口を叩くのが玉にキズ。そんな勢いで時折銀ちゃんにも軽口を叩くのだが、公平に対して銀ちゃんが返事をしたシーンをまだ観た事がない。二人は仲が悪いのだろうか。愛車は変わらずブラバスチューンのSL『なにわ33 む 77-77』。ちなみに、探偵の翔子の愛車は白いBMWのZシリーズ。(SS)


製作: 2000年 日本 75分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
製作: 
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 山本太郎 / Taro YAMAMOTO, 川島なお美 / Naomi KAWASHIMA, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 宇野ポテト / Potato UNO, 井上茂 / Shigeru INOUE, 仲本工事 / Koji NAKAMOTO, 遠藤憲一 / Kenichi ENDO, 石橋正次 / Masatsugu ISHIBASHI, 山西道広 / Michihiro YAMANISHI, 山本竜二 / Ryuji YAMAMOTO
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

刑事物語 くろしおの詩



正式なタイトルとしては『4』が付かないのだが、正真正銘のシリーズ第4作目は高知県高知市を舞台に、片山刑事がハンガーヌンチャクとゴルフクラブを武器にして活躍する。

ツカミの犯人護送シーンから早速失態を演じる片山刑事。誤送した犯人がトイレに入ってる際に腹痛に苦しむ妊婦を臨月と勘違いして目を離した隙に犯人に逃げられてしまう。何とか犯人は捕まえたものの、植木等演じる署長はカンカンとなり片山刑事をクビにしたうえ、旧知の友人という職業安定所の所長宛の手紙まで持たせて追い出してしまった。職業安定所にて紹介された仕事はキャバレーのボーイ。水商売は嫌だと言いつつも何だかんだで働き始めた片山だったが、そのキャバレーは地元の暴力団の息が掛かった店だった…。

前作のシリーズ第3作『潮騒の詩』では脚本も熟れてきた感じがあり、笑いと涙と人情と片山刑事の破天荒な行動がそれぞれバランスよく配置されていたのだが、本作は全体を『笑い』に強く振ったコメディ色の強い作品という印象。また、地元の暴力団が片山刑事の最後の相手ということもあってか、大仁田厚やサンダー杉山、ガッツ石松などの格闘系男子が多く出演しているのも本作の特徴。一方、シリーズでは2回目の登場となる関口宏や本シリーズのエンディングテーマ曲を唄う吉田拓郎、三波春夫などの有名処が端役としてチョイと出演しているのも面白い。

結局のところ、それなりに捜査っぽいことをして、最後は暴力団の大集団と闘い、全員を倒したところでパトカーのサイレンが聴こえる、という至極単純明快なストーリー。悪く言えば少々雑な展開で面白みに欠けるが、相も変わらず画面から滲み出るような片山刑事の優しさが凝縮されたラストシーンのお陰で、気持よく見終えることが出来る。(SS)


製作: 1985年 日本 106分 
監督: 渡邊祐介 / Yusuke WATANABE
製作: 
出演: 武田鉄矢 / Tetsuya TAKEDA, 相原友子 (あいはら友子) / Tomoko AIHARA, 大友柳太朗 / Ryutaro OTOMO, 植木等 / Hitoshi UEKI, 石橋蓮司 / Renji ISHIBASHI, 三浦浩一 / Koichi MIURA, 神保美喜 / Miki JINBO, 関口宏 / Hiroshi SEKIGUCHI, ガッツ石松 / Guts ISHIMATSU
ジャンル: ドラマ, アクション, コメディ
鑑賞方法: DVD

難波金融伝ミナミの帝王 #34 トイチの身代金 / The King of Minami #34



シリーズ第34作目。舎弟や探偵などの顔ぶれに変化はなく、公平、麻子&涼子に沢木組長&広瀬はんといった面々。今回の債務者は堀ちえみ演じる子連れのシングルマザーと綾田俊樹演じる元弁護士がメインなのだが、そんな元アイドルやら脇役俳優やらを凌駕する存在感と大人顔負けの演技力で魅せる子役の政田鈴加ちゃんが債務者側のファーストクラス。一方、悪党としてはあちこちのサラ金からツマんで身動きが取られなくるほど借金を抱えた債務者に、借金を一本化する債務整理を勧める『提携弁護士』なる人間とそのバックに居る金貸しとなる。二枚目俳優の長谷川初範が珍しく悪役の金貸しを演じている。

サブタイトルの『トイチの身代金』とは少々無理のあるタイトルだが、その身代金を掠め盗る誘拐事件のシーンに結構な時間を取っており、手に汗握るとまでは言わないが、それなりに面白い。一方、最後のキリ取りは偽名で借金させるわ、免許証を偽造するわ、銀行を騙すわ、と違法行為のオンパレードで強引過ぎる感が否めないが、キリ取りの対象となる銭も表には出せない裏金だから故に銀ちゃんも強引にキリ取ったのかもしれない。冒頭からエンディングまでと、主役級の露出度と小役らしからぬ演技で魅了してくれた子役の政田鈴加ちゃんはもうとっくに大人だろうが、今も俳優をしているのか否かが気になる。愛車は変わらずブラバスのSL。(SS)


製作: 2000年 日本 95分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
製作: 
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 山本太郎 / Taro YAMAMOTO, 竹井みどり / Midori TAKEI, いしのようこ / Yoko ISHINO, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 宇野ポテト / Potato UNO, 井上茂 / Shigeru INOUE, 堀ちえみ / Chiemi HORI, 月亭八方 / Happou TSUKITEI, 長谷川初範 / Hatsunori HASEGAWA, 綾田俊樹 / Toshiki AYATA, 政田鈴加 / Suzuka MASATA, 片桐竜次 / Ryuji KATAGIRI, 頭師孝雄 / Takao ZUSHI
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

Wednesday, November 21, 2012

難波金融伝ミナミの帝王 #33 劇場版XV 商工ローン-保証人の落とし穴 / The King of Minami #33



2000年一発目の本作はシリーズ第33作目は劇場版第15作目。取り巻きは変わらず公平、麻子&涼子、沢木組長&広瀬はん。タイトルにあるように『商工ローン』が今回のテーマ。『倒産の最終トリガー』とも言われる商工ローンだが、少しググると分かるのだが、一説には商工ローンを使った会社の70%が倒産の憂き目にあうと言う。ちなみに、市中の闇金を使った場合は90%以上が潰れるというので、まぁ銀ちゃんのところよりは善良かもしれない。しかし、中小企業に対しては貸し渋る銀行も、こうした商工ローンには資金融資するのだから、銀行も悪どいものだ。もう一つのテーマは的屋 (テキ屋)という商売。的屋の組織構造、隠語、地元警察や暴力団組織との関係がストーリーの中でサラッと描かれており、的屋業界の説明的なストーリーとなっている。債務者には若かりし頃の痩せた彦摩呂が演じる商社社長の青島と、有薗芳記演じる的屋の八木。商工ローンの社長には故峰岸徹。

青島は米国から健康食品を独占輸入するために萬田金融から500万の債務を負うも、それでも足りない資金を補うため自分の彼女を保証人にして商工ローンから追加の50万を借りた。しかし、商工ローンの保証人には『根保証』という落とし穴があった…。

『なぁ銀次郎さん、何とかならへんのぉ?』→『わしには関係あらへん。』→ 麻子から調査報告 →『何とか取れそうやな』という、債務者の裏に居座る悪党からキリ取る一連の流れが『水戸黄門の8:45分』バリに板についてきた。最後は銀ちゃんらしい知的なキリ取りで気持ちの良いフィニッシュ。ところで、舎弟の公平は銀ちゃんに対して口答えが多過ぎるな。もう少し兄貴を敬う姿勢が欲しいものだ。(SS)


製作: 2000年 日本 90分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
製作: 
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 山本太郎 / Taro YAMAMOTO, 竹井みどり / Midori TAKEI, いしのようこ / Yoko ISHINO, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 宇野ポテト / Potato UNO, 井上茂 / Shigeru INOUE, 彦摩呂 / Hikomaro, 持田真樹 / Maki MOCHIDA, 峰岸徹 / Toru MINEGISHI, 有薗芳記 / Yoshiki ARIZONO, 笑福亭松之助 / Matsunosuke SHOUHUKUTEI, 下元年世 / Toshiyo SHIMOMOTO, 六平直政 / Naomasa MUSAKA
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

Tuesday, November 20, 2012

難波金融伝ミナミの帝王 #32 劇場版XIV 借金極道 / The King of Minami #32

★☆

シリーズ第32作目は劇場版第14作目。一作毎に交代で出場する舎弟は山本太郎演じる公平。探偵は麻子&涼子。協力者のヤーさんは変わらず沢木組長と広瀬。今回は債務者も悪党も両方が極道という珍しいストーリー。銀ちゃんの債務者となる極道には元『ピラニア軍団』の志賀勝が演じる福永組長。その福永を嵌める極道には木之元亮演じる小杉。関係者も極道者が多く、まるで『ミナミの帝王』の名を借りたヤクザ映画のようだ。

かつて『ミナミの夜叉竜』と呼ばれ、沢木組の広瀬曰く『昔ながらの本物の極道』という福永組の福永だったが、今はかつての弟分である小杉から回されるチンケなシノギで細々と組を守っていた。そんなある日、兄弟分である台湾マフィアのワンリーから、偽造プリペイドカードの取引話を持ち込まれた福永は、これまでに無い巨額のシノギに目がくらみ、銀ちゃんから3000万もの借金をしてその話に飛びついた。しかし、それは小杉が福永を金銭的に追い込むために仕組んだ罠だった…。

結局、キリ取りの対象は小杉の裏にいる建設会社なのだが、福永を嵌めた小杉の最終的な扱いなどストーリーの締め方が雑なのが残念。また、雑といえば元『ピラニア軍団』の志賀勝の演技も雑で、追い込まれた債務者を演じるには少々物足りない。しかし、古いタイプの極道の役柄という意味ではこれ以上ないキャスティングだろう。前作に引き続き森川正太が出演しているが、今回は台湾マフィアのワンリーという設定で前作の債務者からガラっと変わった役柄にも関わらず良く似合う。

パチンコ屋のシーンでまたもや城ゆたかの『国東慕情』が流れている。制作当時は真剣に売りだそうと考えていたのではないだろうか。愛車は変わらずブラバスチューンのSL。(SS)


製作: 1999年 日本 87分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
製作: 
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 古本新乃輔 / Shinnosuke FURUMOTO, 竹井みどり / Midori TAKEI, いしのようこ / Yoko ISHINO, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 宇野ポテト / Potato UNO, 井上茂 / Shigeru INOUE, 志賀勝 / Masaru SHIGA, 木之元亮 / Ryo KINOMOTO, 森川正太 / Shota MORISHITA, 前田五郎 / Goro MAEDA, 山本竜二 / Ryuji YAMAMOTO, 木村栄 / Sakae KIMURA, 八木小織 (八木小緒里) / Saori YAGI, 鶴田忍 / Shinobu TSURUTA
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

難波金融伝ミナミの帝王 #31 劇場版XIII リストラの代償 / The King of Minami #31

★☆

シリーズ第31作目は久々の劇場版第13作目。ここのところ舎弟の出入りが激しい。といっても古本新乃輔演じる拓也と山本太郎演じる公平の二人なのだが。と云うことで今回の舎弟は拓也。探偵は竹井みどりといしのようこの麻子&涼子。協力者のヤーさんは変わらず沢木組長と広瀬はん。債務者は森川正太演じるしがない探偵の宇田川。広島出身のようでシリーズでは珍しく広島弁がスクリーンを飛び交う。一方、今回の悪党だが、ヤーさんやら悪徳金融やらの悪人は出てこず、広島の普通の会社の2代目社長がキリ取りの相手となる。ということで、広島県福山市がストーリーの中心となり銀ちゃんのみならず舎弟に探偵に沢木組とレギュラー出演者全員が出張っている。

今回は私立探偵の宇田川を中心として展開する。宇田川は元々広島で会社員をしていたのだが、社長の従兄弟という上司に楯突いたばかりに仕事を干されてリストラに有ってしまった男だ。退職後に心機一転、大阪にて探偵事務所を開業したものの、本業の探偵調査の稼ぎも悪く、銀ちゃんの借金500万も返済出来ずクビの回らない状態だった。そんな時、フトしたきっかけで広島での会社員時代にリストラの際のどさくさに紛れて退職金を貰い損なっていた事を思い出した。しかし、広島へ赴き会社と交渉するも会社は支払いを拒むのだった…。

最後のキリ取りは少し無理があり、無理矢理というか力づくでカタに嵌め込んだような方だが、まぁ気にするほどでもなし。村上ショージにピンクの電話と相変わらず芸人が端役出演しているが、今回のキャスティングでのファーストクラスは森川正太だろう。債務者の宇田川を観ていると幾ら役柄とはいえ観ているだけでムカムカしてくる。うだつの上がらない奴とはこういう輩の事を言うのだろう。そしてこういう役柄にピッタリなのが森川正太なのだ。なお、愛車は変わらずブラバスチューンのメルセデスSLだが、距離的にそれほど遠くないためか、銀ちゃんは広島まで車で出張したようだ。(SS)


製作: 1999年 日本 79分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
製作: 
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 古本新乃輔 / Shinnosuke FURUMOTO, 竹井みどり / Midori TAKEI, いしのようこ / Yoko ISHINO, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 宇野ポテト / Potato UNO, 井上茂 / Shigeru INOUE, 森川正太 / Shota MORIKAWA, 小西博之 / Hiroyuki KONISHI, 斉藤洋介 / Yosuke SAITO
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

難波金融伝ミナミの帝王 #30 アリバイ証明の罠 / The King of Minami #30



1999年製作の本作は、シリーズにおける赤道マイルストーンである第30作目。舎弟は2作前に初出演した山本太郎演じる公平。探偵は矢吹探偵事務所の麻子&涼子で、協力者の沢木組長と広瀬はんは変わらず。債務者には中野英雄演じる山中、悪党の親玉には加納竜だが、今回のキリ取りは悪党からではなく債務者の山中を直接カタに嵌めるため、加納竜はチョイ役の友情出演に留まっている。

今回は赤の他人に会社員証明を販売し、如何にも正規の会社に勤めているかのようなアリバイを売る『アリバイ会社』がテーマ。当初は順調に儲かっていたアリバイ会社も、名義を貸した社員が会社名義で飲み屋にツケを残したたところからほころび始める。そして、そのほころびに悪党がドンドンと付け込み、仕舞いに会社は倒産の憂き目に。しかし、転んでもタダでは起きない社長は出資者の有限責任を悪用して、会社名義で金を借りまくるだけではなく、叩けば埃の出るアリバイ会社の登録者を恐喝し金を強請るのだった…。

本作に登場する『中央銀行 難波支店』はシリーズ第26作目で殺人が行われたサラ金であり、他の作品でも多く出てくる『ミナミの帝王ビルディング』だ。また、中野英雄が居酒屋で一杯飲むシーンがあるが、この際バックで流れている音楽はシリーズ第27作目の『逆転相続』で、布施辰徳演じる城ゆたかが唄う『国東慕情』。久々に聴いたが心に染みるいい唄だ。なお、シリーズも30作目にして初めて銀ちゃんがダッシュするシーンが出た。走らせた債務者は中野英雄演じる山中だが、この偉業はミナミの帝王史に残る。(SS)


製作: 1999年 日本 79分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
製作: 
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 山本太郎 / Taro YAMAMOTO, 竹井みどり / Midori TAKEI, いしのようこ / Yoko ISHINO, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 宇野ポテト / Potato UNO, 井上茂 / Shigeru INOUE, 中野英雄 / Hideo NAKANO, 蟷螂襲 / Shu TOUROU, 加納竜 / Ryu KANOU, 島田洋七 / Yoshichi SHIMADA
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

Monday, November 19, 2012

難波金融伝ミナミの帝王 #29 システム金融 / The King of Minami #29



シリーズ第29作目。舎弟は再び古本新乃輔演じる拓也。探偵は変わらず麻子&涼子。ここ数作、日高久を観ていないが元気しているのだろうか。ツカミのショートストーリーではビシバシステムの住田隆がシリーズ第8作目『愛人契約』以来の出演。しかし、このツカミで最も驚いたのは住田ではなく立花理佐が出演していたことだ。端役の女にしては可愛い子だと思っていたが、エンディングの出演者のロールでハッと気づいた。

今回の債務者はラサール石井演じる磯部。ディスカウントストアの社長だがその実、店は女房の力で保っており、磯部は商売もソコソコに夜の女に入れ込んでいた。そんな磯部は仕入れの業者から『システム金融』の話を聞かされる。システム金融とは現金と引換にその現金の4割増しの融通手形を発行させ、これを雪だるま式に繰り返して、債務者をキッチリとカタに嵌める方法。当初、磯部は三桁の単位で手形を転がしていたが、欲に目が眩んだ磯部はドツボにはまる…。

前作に引続き融通手形に絡んだ展開だが最後はちょっと尻すぼみ。わずかな三文芝居で悪党から5000万を引き出した磯部に2000万はご褒美としては多すぎだろう。しかし、今回の悪党に配した役者陣が酷すぎる。悪玉には善人顔で甲高い声が特徴の秋野太作で、悪役向けの顔とは正反対の役者。そして悪の舎弟役はAV男優にして『個性派俳優』という体の山本竜二。俳優としての実力はさておき、この配役が作品全体の質を落としているのは間違いない。ブラバスチューンのSLクラスは変わらず。

Okada_Chiyoさて、シリーズの約半分を見終わって今更なのだが、日高久、宇野ポテトや井上茂 に並ぶ端役常連でいつも気になっている女優さんがいる。出演頻度はかなり高く、だいたい債務者の母親みたいな役が多いのだが、今作でもキッチリ出演していたので調べてみたところ、驚愕の事実が発覚することに。その女性の名は『岡田千代』。東映京都撮影所ニューフェース11期生入社の彼女は『ミナミの帝王』シリーズのレギュラー兼プロデューサーの結城哲也 (本作からクレジットは『ゆうき哲也』となっているが、今は『ゆう城哲也』とも表記したりする。)の奥様である。参った。どうりで出演回数が多い訳だ。

更に調査を進めると井上茂は結城哲也の兄貴である事が判明。そして、井上茂は東映京都撮影所でクレジットにも名前が登場しない程の脇役、斬られ役、チンピラ役として出演していた俳優の自然発生的集団『ピラニア軍団』の元メンバーである。ちなみに、本シリーズの出演者では川谷拓三、岩尾正隆、志茂山高也、片桐竜次、室田日出男などが『ピラニア軍団』の元メンバーとして挙げられる。なお、志茂山は『チャンバラトリオ』の現メンバーで、コンビを組む山根伸介、元メンバーの結城哲也、南方英二、伊吹太郎、山根一輝など、本シリーズの端役として出演する役者はこのような狭いネットワークから高頻度で選ばれていることを付け加えておく。(SS)


製作: 1999年 日本 78分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
製作: 
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 古本新乃輔 / Shinnosuke FURUMOTO, 竹井みどり / Midori TAKEI, いしのようこ / Yoko ISHINO, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 宇野ポテト / Potato UNO, 井上茂 / Shigeru INOUE, ラサール石井 / Lasarl ISHII, 徳田尚美 / Naomi TOKUDA, 山本竜二 / Ryuji YAMAMOTO, 岡田千代 / Chiyo OKADA
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

難波金融伝ミナミの帝王 #28 破産−金融屋殺し / The King of Minami #28



ケイエスエスと読売テレビ共同制作のシリーズ第28作目は山本太郎演じる新庄公平を新たな舎弟に据えて少々見映えを一新した作品。なお、探偵は変わらず麻子&涼子の矢吹探偵事務所。

今回の債務者は自動車修理会社の角田社長と建設会社の田部井社長の2人で、それに悪知恵を教えるのが悪徳金融の花井ファイナンス。角田は花井の入知恵で1000万の融通手形を振出して会社を倒産させ夜逃げをする。花井は不渡りが出ると認識しつつ融通手形を割引いて金を抜いていた。一方、田部井は工事受注工作の裏金をつまらない名刺詐欺でかすめ盗られて首が回らなくなった挙句に、角田と同様に花井の手ほどきで5000万相当の融通手形を振出し、会社を倒産させ更に自己破産してしまう。花井ファイナンスは両社の倒産整理に乗って、融通手形を乱発させ金を抜いていたのだった。

今回のストーリーはシノギの仕組みも規模も悪人をカタに嵌める最後の締めも何となくボヤッとした感じで終わってしまった。田部井社長を演じる森脇健児がそもそもボヤッとした演技しか出来ないだけに、不完全燃焼感が強く残った作品。前回に引続き夜逃げの債務者を訪ねた際に器物損壊の罪を犯してしまった銀ちゃんだが、顔もふっくらとしてきて顎の周りのシャープさが失われてくると同時に、歳なりの貫禄もでてきた。愛車は変わらずブラバスチューンのメルセデスSLクラス。(SS)


製作: 1999年 日本 81分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA 
製作: 
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 山本太郎 / Taro YAMAMOTO, 竹井みどり / Midori TAKEI, いしのようこ / Yoko ISHINO, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 宇野ポテト / Potato UNO, 井上茂 / Shigeru INOUE, 升毅 / Takeshi MASU, 森脇健児 / Kenji MORIWAKI, 正司花江 / Hanae SHOJI, 山城新伍 / Shingo YAMASHIRO, 中田ボタン / Botan NAKATA
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

Friday, November 16, 2012

難波金融伝ミナミの帝王 #27 劇場版XII 逆転相続 / The King of Minami #27



シリーズ第27作目で劇場版第12作目。拓也、麻子&涼子は変わらず。債務者の追い込みでは京阪地域四国などの近距離出張が多いが、それ以外では九州主張が多く、まして東京は麻子が第5作目『キタの女闇金』で対象者の調査に行ったくらいだろうか。個人的には大阪発青森行の寝台特急『日本海』に乗って東北へ逃げる債務者のほうがイメージしやすいのだが、そうではないようだ。ということで、今回は大分の別府温泉へキリ取り出張する銀次郎。ちなみに、大分県は竹内力の出身地でもあり、本シリーズではシリーズ第16作目『偽装結婚』に続く2回目の別府温泉出張。

今回は商社の女社長が遊ぶ金欲しさに銀ちゃんから金を借りようとするも銀ちゃんに断られるところから始まる。一方、売れない演歌歌手の藤巻は、家族のためを思い銀ちゃんから借金をして違法カジノへ投資したのだが、そのカジノが警察に摘発されてしまい投資金は全額露と消えてしまう。しかし、この投資を募った岩崎という男は警察の手入れを事前に知っており、はじめから詐欺を意図した投資金を募集していたのだった…。

今となっては珍しくも無いが、DNA鑑定という当時はそれなりに目新しい知見を絡めつつ、商社の女社長、売れない演歌歌手、そして演歌歌手の義理の息子と、最初はバラバラの要素がエンディングに向かって帰結していく様はいつものとおり。悪党の片棒を担いだ女社長役の松居一代だが、大阪弁も迫力があり中々の演技で魅せる。たった一人でもこうした存在感のある女優が出ると画面の雰囲気に厚みが出て安心して見られる。

ところで、銀ちゃんが債務者を追い込む際に、借金返済方法の提案としてよく挙げられるのが、原発作業員・マグロ遠洋漁船・腎臓・肝臓・角膜にソープと言ったところが定番だが、今回は新たに国際養子縁組という新提案が。子供までも借金返済の便に利用しようとは怖い怖い。シリーズでは初めてだと思うが、夜逃げした債務者の家に入るために、銀ちゃん自ら器物破損の罪を犯している。付近の住民に110番されたのだがその辺は有耶無耶になっているようだ。

本作の冒頭では、布施辰徳演じる城ゆたかが持ち歌の『国東慕情』を唄うシーンから始まるが、その際宇野ポテトがステージ上でMC役として登場しているが、これを観てシリーズ第11作目の『欲望の街』でのい十三ミュージックが脳裏をよぎった人は相当な『ミナミの帝王』好きである。しかし、この『国東慕情』は劇中で散々流れるのだが、それなりにいい歌だな。CD化はされてないようだが何気に欲しくなるメロディーだ。そういえば、今回は銀ちゃんの愛車が出てないような気がするが、気のせいか。また、今回より衣装協力として竹内力自身のファッションブランドである『RIKI TAKEUCHI』がクレジットされている。(SS)


製作: 1998年 日本 82分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
製作: 
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 古本新乃輔 / Shinnosuke FIURUMOTO, 竹井みどり / Midori TAKEI, いしのようこ / Yoko ISHINO, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 宇野ポテト / Potato UNO, 布施辰徳 / Tatsunori HUSE, 松居一代 / Kazuyo MATSUI, 丹波義隆 / Yoshitaka TANBA, 福家美峰 / Bihou FUKUYA, 山本竜二 / Ryuji YAMAMOTO
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

刑事物語5 やまびこの詩


シリーズ第5作目にして最終作の本作は、群馬県沼田市という海のない少々地味な場所を舞台にして、コミカル路線を若干強めにして片山刑事の活躍を描く。マドンナには鈴木保奈美と賀来千香子を真咲姉妹として起用しているが、二人とも本作が本格的な映画デビュー作で、全編にいたってレオタード姿のシーンが多く、特に鈴木保奈美は演技がまるで素人なのだが、それを補うためか否か、今は懐かしい超ハイレグの姿で踊りまくっており、デビュー作兼PR映像かと思わせる内容。

ストーリー的には凝ったところも無ければ、これといった見所も無いので、説明は割愛するが、最終話としては少々残念な出来と言わざるを得ない。思うに、シリーズ第3作目の『潮騒の詩』が本シリーズの頂点に位置する作品で、それ以降は下り坂。武田鉄矢が主演兼脚本(クレジットは片山蒼)で全作の原案並びに脚本を手掛けているのだが、プロの脚本家を入れて武田の負担を下げるなど、もう少し気合いを入れて製作すれば、寅さんシリーズのようなロングシリーズに化けたかもしれず、そういう意味では勿体無い。裏を返せば、全国を興行行脚する片山刑事の活躍をもっと見たかったのだが…。印象的なラストシーンが巷ではそれなりに高評価を受けているようだが、過剰演出で個人的には特に思うところはない。(SS)


製作: 1987年 日本 98分 
監督: 杉村六郎 / Rokurou SUGIMURA
製作: 
出演: 武田鉄矢 / Tetsuya TAKEDA, 賀来千香子 / Chikako KAKU, 鈴木保奈美 / Honami SUZUKI, 井川比佐志 / Hisashi IGAWA, 村井国夫 / Kunio MURAI, 野村将希 / Masaki NOMURA, 小林桂樹 / Keiju KOBAYASHI
ジャンル: ドラマ, アクション, コメディ
鑑賞方法: DVD


しかし、よくよく見るとこのジャケット写真がすごい。今となっては賀来千香子も鈴木保奈美も絶対に拒否すると思われる。そう意味では貴重なショット。

Wednesday, November 14, 2012

難波金融伝ミナミの帝王 #26 劇場版XI 追憶 / The King of Minami #26



1998年製作のシリーズ第26作目は久々の劇場版第11弾。取り巻きはもはや固定感の強いいつもの拓也、麻子&涼子。本家の漫画が100巻を超えてかつ現在も連載中なのだが、それにしてもネタがよく尽きないものだ。日テレの名作刑事ドラマ『太陽に吠えろ』で『長さん』として一躍名を馳せた故下川辰平が定年間近の桜井刑事兼債務者として出演している。シリーズをとおして名俳優と呼ばれる役者が幾人か出演しているが、この下川辰平もその一人だろう。本シリーズでは吉本松竹芸人の出演が多く、お世辞にも上手いとは言えない彼らの演技 ―もちろん、それはそれで好きなのだが― に自分自身がすっかり慣れてしまっていたが、下川辰平が魅せる老刑事のいぶし銀っぷりはまるで画面から滲み出るようで素晴らしい。

今回はその下川辰平が演じる桜井刑事を中心として展開する。定年まであと1ヶ月を迎えた桜井刑事は警視総監賞を12回も受賞した名刑事。しかし、定年までにどうしても解決しなければならないヤマがあった。それは15年前におきた殺人事件だった。桜井は時効まであと1ヶ月のこのヤマを追うために、退職金を前借りした挙句に銀ちゃんから300万の借金をしている。しかし、迷宮入りを目前にしたこの事件の唯一の手掛かりである目撃者の女をどうしても見つけ出せずに居た…。

桜井の部下と桜井の娘のあやことのサブストーリー。その娘の重大な決断。そして、15年前におきた時効間近の殺人事件について、桜井からその背景について銀ちゃんに語られるシーンはシリーズで一二を争うお涙頂戴話。鬼の萬田も流石に桜井にホダされたのか否か、それとも貸した銭の回収のためか、沢木組長に協力を求め事件の唯一の手掛かりである目撃者の女の調査を始める。と、そこまでは良いのだが、警視総監賞を12回も取った刑事が私財を投げ打ち、15年も費やすも全く得られなかった手掛かりが、極道ネットワークを使った途端にあっさりと見つかっちまう、というのは少々安易な展開と言わざるを得ないかなと。しかし、最後のどんでん返しと堕ちた女達の小ネタをきっちり回収した後に続くハッピーエンドに免じて目をつむろう。

ここ数作で『がに股でソファーにどっかり座り、タバコふかしながらしかめっ面』という銀ちゃんが定番のポーズになってきた。それにしても前回にも増して銀ちゃんのスーツが凄すぎる。実際に売ってるんだろうが、こんなん銀ちゃん以外に一体誰が着るんや。(SS)


製作: 1998年 日本 88分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
製作: 
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 古本新乃輔 / Shinnosuke FIURUMOTO, 竹井みどり / Midori TAKEI, いしのようこ / Yoko ISHINO, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 宇野ポテト / Potato UNO, 下川辰平 / Tappei SHIMOKAWA, 井上茂 / Shigeru INOUE, 草薙良一 / Ryouichi KUSANAGI
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

難波金融伝ミナミの帝王 #25 消えない傷跡 / The King of Minami #25



1998年製作のシリーズ第25作目。舎弟の拓也に探偵の麻子&涼子は変わらず。宇野ポテトもしっかりと数秒間ほど出演。ツカミのショートストーリーでは銀ちゃんの債務者の女が借金返済のために、マザコンのボンボンと結婚されるところから始まるのだが、こんなしょうもないストーリーでも、その後の伏線の始まりになっているのがしっかりとしたところ。

事の発端は割烹の名店『鴨安』での事件から始まる。大阪でも一二を争う味の名店とうたわれた『鴨安』だが、先代の主人が引退した途端に、2代目の倅が味よりも利益を優先し、経営方針を180度転換してしまうのだが、そんなやり方に意義を唱える女将を追い出し、花板の西村に至っては嘘の借金漬けにされた挙句に利き手をナイフで刺されてしまう…。

最後は『鴨安』の株式が未発行であることを逆手に取っての見事なキリ取りを見せるが、いつもの詐欺まがいのキリ取りと違って、なかなか知的なフィニッシュで気持ち良い。前々作の長編版はさておき、本作では久々に刃物を使ったバイオレンスシーンが炸裂する。しかし、2回目のバイオレンスシーンについては、拓也に指摘されかつ本人も認めているとおり西村を煽った銀次郎の判断ミスと思われる。今回の銀ちゃんのスーツは派手過ぎて怖い。拓也のしょうもないジャージが霞んで見える。こんな格好で街を歩いたら、すれ違う人が皆避けるに違いない。愛車は引き続きブラバスチューンのメルセデスSLクラス。(SS)


製作: 1998年 日本 85分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
製作: 
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 古本新乃輔 / Shinnosuke FIURUMOTO, 竹井みどり / Midori TAKEI, いしのようこ / Yoko ISHINO, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 宇野ポテト / Potato UNO, 北原佐和子 / Sawako KITAHARA, 絵沢萠子 / Moeko EZAWA, 南條豊 / Yutaka NANJO, 新藤栄作 / Eisaku SHINDO
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

難波金融伝ミナミの帝王 #24 嘆きのニューハーフ / The King of Minami #24



1998年の第1作目はシリーズ第24弾。矢吹探偵事務所の2人と拓也は変わらず。本作はニューハーフという存在がチラホラとメディアへ露出し始めて、その存在が世間に広がり始めた頃の話。タイトルからして梅子は当然の出演として、十数年前のはるな愛(春菜愛)が出演している。悪党役には仁支川峰子(西川峰子)。つかみのショートストーリーでは、今はいずこの北野誠にミスター端役コンビの井上茂に宇野ポテトが出演。特に方言指導も兼ねて本作の製作にも名を連ねる宇野ポテトは素性がイマイチ不明だったが、本作では本人役で端役出演しており、持ちネタを披露している。

今回のストーリーはそのはるな愛演じるニューハーフのリオを中心に展開する。ミナミのニューハーフパブ『冗談酒場』で働くリオは整形手術やら店のバンスやらで、銀次郎から600万の借金を重ねていた。そのリオを引き抜こうとするのがライバル店の『アクトレス』の女社長の奥田。奥田はリオのバンスの精算と違法な性転換手術を交換条件にリオの引き抜きに成功する…。リオの借金とアクトレスの奥田社長、その奥田社長の弟で違法な性転換手術を行う医師の奥田、そして奥田医師の婚約者もまた銀次郎の債務者、と序盤にばら撒かれた伏線が一点に結実していいく様はいつもどおり。

はるな愛の演技が仁支川峰子のそれに比べて余りに稚拙なのが何だが、ニューハーフ世界チャンピオンの若き頃の演技だと思ってみればそれはそれで楽しく、エンディングではニューハーフのモロ下ネタで本作を締める。なお、奥田医師の婚約者襲われて担ぎ込まれた病院の医者が、シリーズ第19作目『保険金横領』で銀次郎に型に嵌められたアメリカのヤブ医者役の俳優だったのを見て『まだ、医者やってたのか』と思わず吹いた。出演者や端役の顔が固定されたままシリーズが続くと、こういう無用な笑いが起こるのが玉に瑕。(SS)


製作: 1998年 日本 81分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
製作: 
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 古本新乃輔 / Shinnosuke FIURUMOTO, 竹井みどり / Midori TAKEI, いしのようこ / Yoko ISHINO, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 宇野ポテト / Potato UNO, 井上茂 / Shigeru INOUE, 仁支川峰子 (西川峰子) / Mineko NISHIKAWA, はるな愛 (春菜愛) / Ai HARUNA, 北野誠 / Makoto KITANO, 亀山忍 / Shinobu KAMEYAMA, 草川祐馬 / Yuma KUSAKAWA
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

難波金融伝ミナミの帝王 #23 難波金融伝 ミナミの帝王 長編版 / The King of Minami #23



シリーズ第23作目は上演5時間という長編の意欲作。前作まではVシネ版と劇場版の製作年度とシリーズ全体のリリース番号がバラバラだったのだが、本作は1997年製作なのでリリースされた時点での最新作ということになる。全5部で構成された本作はそれぞれに『運命 / 陰謀 / 裏切り / 屈辱 / 逆襲』というサブタイトルが付いており、リリースはDVD5枚組。さすがに劇場版という訳にはいかなかっただろうし、Vシネ版だからこそ製作し得た作品といえる。長編だけに出演者も多く過去に出演した俳優がてんこ盛りで、それだけでも好きな人には嬉しい作品。

探偵には矢吹麻子と坂井涼子のいつもの2人。ちなみに、麻子が探偵事務所の所長とは知っていたが、涼子が所員とは知らなかった。舎弟には水城拓也に助手として梅子。沢木組長と若頭の広瀬も変わらずで、シリーズを見続けた人には見慣れた面々。黒沢年男演じる悪党の丸岡は銀ちゃんの父親をカタに嵌めて、家庭を滅茶苦茶にして以来の因縁がある男。そして、その丸岡の片腕で命令とあれば人の命を手に掛ける事をも辞さないヤクザな男に菅田俊。菅田俊はシリーズ第5作目『キタの女闇金』以来の出演。金主さんの夏八木勲も久々の出演。銀ちゃんの愛車は変わらずブラバスチューンのメルセデスSLクラス。

Amazonで検索: 難波金融伝 ミナミの帝王 長編版5時間 (5枚組)

以下のレビューではそれなりに物語の核心を記述しているため、まだ観てない方は読まないほうが良いかも。まぁ、読んだところでそれほど関係無いのですが。


第1部 運命: モノクロのフラッシュバックから始まるツカミのショートストーリーは銀次郎の少年時代に遡る。黒沢年男演じる丸岡がイカサマ博打でカタに嵌められた銀次郎のオヤジをキリ取りで追い込むところをまだ少年の銀ちゃんが追い返す。この丸岡が以降に渡り銀ちゃんの前に立ちはだかる。シリーズ第12弾で『日掛け屋』として登場した中西良太がセコい詐欺師の小泉として登場する。トイチの利息をキチッと収めていた小泉だが、幾つものセコい詐欺を続ける小泉に大きなリスクを感じた銀ちゃんはついに全額回収へと動き出した。しかし、その矢先に小泉が不審な自殺を遂げる…。一方、情にほだされ100万を貸した男に夜逃げされた梅子が銀次郎のところに駆け込んできた。梅子の債権を引き受けた拓也は梅子を引き連れて追い込みをかける…。

銀次郎と丸岡の因縁、セコい詐欺師の小泉、その小泉の不審な死、梅子が金を貸した男とその娘などなど、とりあえずは本作におけるストーリーの基本的な要素を紹介するような1時間なので、本題はこれからのようだ。


第2部 陰謀: 小泉の自殺に不信を抱いた銀次郎は、事件の裏に暗躍する悪党がいると睨み、拓也、麻子と涼子を使って調査を開始した。しかし、別れた嫁やギャンブル仲間は『小泉は自殺をするようなタマやない』と声を揃える。一方、麻子は小泉が金を借りたサラ金の担当者である塚本との奇妙な関係に気づいていた。立場が弱い債務者の小泉に塚本がペコペコしていたというのだ。更に涼子が塚本を調べると多重債務者を更にサラ金へ紹介する丸岡興業という『紹介屋』に出入りしている事が分かった。一方、梅子の債権回収の件で父親の借金を背負った娘のかずみが気になっていた。かずみは看護婦を辞めてミナミの夜で働いていた。相変わらず情に厚い拓也が金貸しに似合わない好意をかずみにかける。しかし、そのかずみが抱える借金は丸岡興業のものだった。

1部で散りばめられた伏線の『点』が2部で段々と線になってきた。そしてその線は銀ちゃんが少年時代からの因縁の男、丸岡に繋がっているようだ。なお、宇野ポテトが喫茶店のマスター役で登場しているので一応報告。ミスター端役は長編版でも裏切らない。


第3部 裏切り: 引き続き丸岡興業の調査を進める銀ちゃんの探偵軍団である麻子と涼子。しかし、勘の利く丸岡は涼子の調査に気付くと同時にかずみの線から拓也も嗅ぎつける。そんな拓也は持ち前の優しからか、かずみの借金200万を銀ちゃんからトイチで肩代わりする。しかし、丸岡興業で200万を返済したかずみが新たに突き付けられたのは、父親が新規で借りたという500万の借用書だった。返済しても返済しても新たな借金が出来てしまう。困り果てたかずみに丸岡は『萬田金融の顧客リストを持ってくれば借金をチャラにする。』と提案する…。

例によって情に厚く心優しい拓也が第3部のストーリの中心。かずみの借金を肩代わりするだけではなく、かずみを嫁に取ろうと思い婆さんに挨拶に行くも、手痛いしっぺ返しを喰らうのだが、拓也は大きな決心をしようとする。第3部で銀ちゃんと丸岡が直接対峙するのだが、少年時代の一件を思い出した銀ちゃんの顔が怖すぎる。今はすっかり丸くなってテレビでお茶目をする竹内力だが、さすが若い頃の彼には凄まじい迫力がある。


第4部 屈辱: 自分の身可愛さに萬田金融の顧客リストを丸岡に流してしまったかずみ。しかし、そんな事は露知らずの拓也はかずみに結婚の申し込みをする。人情に厚い拓也の好意に良心の呵責を感じたかずみは、丸岡の会社へ乗り込み、ナイフで丸岡を突きつけながらリストの返却を迫るも、返り討ちにあってしまう。丸岡は『この戦争で流される最初の血か…。』と呟きながら、銀次郎潰しにかかる。紹介屋が競争相手の顧客リストを手に入れたら最後、やる事は決まっている。少年時代からの因縁もあり熱くなる銀ちゃんにはもはや冷静な判断が下せずにいた…。

銀ちゃんのオフィスでの丸岡との直接対決のシーンでは、珍しくフィルム長回しで互いの台詞が交わされるのだが、流石は黒沢年男である。男らしい迫力満載の演技は決して竹内力に負けてはいない。第4部でも物語の主人公は拓也。段々と仕上がってきた。なお、第4部開始直後に出演者の紹介がされるのだが、そのバックに流れる映像により軽くネタばれするのが残念。


第5部 逆襲: 罪の意識と拓也の熱すぎる愛情に耐えられなくなり自殺をしてしまったかずみ。そして、自分の女が銀ちゃんを裏切ってしまったと知り、自分なりのけじめをつけようとする拓也。丸岡を襲撃するも逆に返り討ちに遭った拓也は瀕死の状態で銀次郎に助けられる。一方、丸岡の調査を引き続き行う探偵軍団は、丸岡のビジネスにわずかなほころびを見つけ、『地番錯綜地』というキーワードで丸岡を潰しにかかる…。

『地番錯綜地』とは地番と実際の土地が合致していない土地のこと。その『地番錯綜地』に絡むのは第1部の冒頭シーンで夜の女に裏切られた工務店の社長。第5部にきて4時間ぶりにやっと絡んできた。端役三羽烏の一角、井上茂が第5部まできてやっと端役で出演。良く見るとジャケット写真の通天閣が『The King of Minami』となってまんがな。


5時間の長い作品だが、各部が1時間で観やすく尺稼ぎの無駄なやり取りも少なく、それなりの凝縮感で冗長な感じはしない。そして、一見下らないと見えるショートストーリーでも、そこに撒かれた伏線はキッチリ回収する。幾つもの『点』が『線』になり、エンディングに向かって結実していく様はアカデミー賞受賞作品の『LAコンフィデンシャル』を思い出させる。そして、それこそ『ミナミの帝王』シリーズの真骨頂、かつ質の高い脚本の見せ所でもある。ハードな暴行シーンが少ない本シリーズでは珍しく、ナイフで暴れるヤクザな男や、沢木組長の殺人を匂わせるシーンまであり、これまでもこれからも無いようなバイオレンスシーンが見もの。

本作は、銀次郎が幼い頃から心に抱え込んでいる過去の因縁との決別を描いた作品と言えるが、決して丸岡を再起不能にしたりキッチリとカタに嵌めた訳ではない。それは相生橋のラストで両者の闘いがまだまだ続くことを示唆しているシーンでからも分かる。しかし、それとは別の裏の主人公は拓也とかずみだろう。特に拓也の派手な服装に似合わない人情が物語に厚みを与えている。(SS)


製作: 1997年 日本 300分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
製作: 
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 古本新乃輔 / Shinnosuke FURUMOTO, 竹井みどり / Midori TAKEI, いしのようこ / Yoko ISHINO, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 宇野ポテト / Potato UNO, 梅垣義明 / Yoshiaki UMEGAKI, 黒沢年男 / Toshio KUROSAWA, 夏八木勲 / Isao NATSUYAGI, 菅田俊 / Shun SUGATA, 中西良太 / Ryota NAKANISHI, 今村涼子 / Ryoko IMAMURA, 井上茂 / Shigeru INOUE, 沼田爆 / Baku NUMATA, 高岡健二 / Kenji TAKAOKA, 岡田千代 / Chiyo OKADA, 大沢あかね / Akane OSAWA
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

Tuesday, November 13, 2012

難波金融伝ミナミの帝王 #22 特別編 密約 / The King of Minami #22



シリーズ第22作目は『特別編』と銘打たれた作品。1995年製作の本作はケイエスエスに加えてよみうりテレビが共同製作としてクレジットされている。銀ちゃんの取り巻く面々は少々画が異なる。舎弟は久々に柳沢慎吾演じる竜一が復帰。探偵は麻子&涼子でいつものとおりなのだが、探偵の舎弟っぽい扱いの役柄のキョウヘイ役として中山太吾郎なる俳優が出演している。ツカミでは竜一がつまらない『名刺詐欺』に引っ掛かり、しばらく出演していなかったのにも関わらず、全く成長していないところを見せる。その名刺詐欺をしでかした男にトミーズ健、ツカミの端役に川藤幸三と、関西の著名人が出演している。

今回のストーリーはその名刺詐欺の男を見つけ出しキリ取るところからから始まる。その名刺詐欺の男のおじきというのが、大阪近郊の都市で市長選を戦う弘田という現職市長だが、『ミナミの萬田銀次郎』と知った弘田は選挙でバラ撒く『実弾』の不足を補うため、銀ちゃんから1億の選挙資金を借りる事に。しかし、こうした『実弾戦』にも関わらず選挙情勢はライバル候補の峰岸の優勢に傾いていた。弘田の負けは銀ちゃんの1億が無駄になるという事を意味するにも関わらず、銀ちゃんはライバルの峰岸選挙事務所に1億円を持って訪ねる…。

今回の銀ちゃんのロジックは選挙戦でよく耳にする『実弾戦』が行われている現場ならどこでも適用できそうだ。最初の1億は自己資金で工面した銀ちゃんだが、金主さんも1億ともなると3日ほど要するらしく、追加の1億は珍しく、というか最初で最後だろうが、沢木組長から調達している。貸す銭もトイチなら借りる銭もトイチでキッチリ返すとは男らしい。愛車はダイムラー改めメルセデスSLクラス。ナンバーが27-34といつもの77-77とは違う。なお、端役出演の宇野ポテトだが、彼の演技と台詞はここ数作では最も濃い。(SS)


製作: 1995年 日本 93分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA 
製作: 
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 柳沢慎吾 / Shingo YANAGISAWA, 竹井みどり / Midori TAKEI, いしのようこ / Yoko ISHINO, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 宇野ポテト / Potato UNO, 芦屋小雁 / Kogan ASHIYA, 野村真美 / Mami NOMURA, 中山太吾朗 / Daigorou NAKAYAMA, トミーズ健 / Tommies KEN, 岡田千代 / Chiyo OKADA, 前田五郎 / Goro MAEDA
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

Monday, November 12, 2012

難波金融伝ミナミの帝王 #21 スペシャル劇場版 #1 ローンシャーク・・・追い込み / The King of Minami #21



シリーズ第21作目。製作は1995年と前作より2年前に製作されたようで、『スペシャル劇場版』と銘打たれた作品。意味はよくわからないが、タイトルの『劇場版』にローマ数字の連番が付けられていないので、何が『スペシャル』なのかを気にしつつ鑑賞してみた。まぁ結論から言うと、アメリカマフィアを絡めて物語のスケールを大きくしたのに加えて、シリーズ中でも一二を争う豪華な出演陣のようだ。舎弟に竜也、探偵の麻子&涼子に加えて久々の梅子はいつもどおりとして、他に前田吟、佐藤B作などのベテラン俳優陣のみならず、元チェッカーズの高杢貞彦、喜多嶋舞、円広志、羽野晶紀、岸部四郎、元日活女優の絵沢萠子、西川きよしの息子の西川忠志、同じ西川だが関係ない西川のりお、空手家の角田信朗、など著名処がちらほらと出演。これほどの役者陣となると確かにVシネでは元手は回収できないかも。

今回の債務者はアメリカでビジネスに失敗し、アメリカマフィアの高利貸しの追ってから逃げてきた男。日本帰国後に銀ちゃんから借金をして新規ビジネスを始めるも、1億もの詐欺の片棒を担がされた挙句に、マフィアの息の掛かったヤクザに捕まってしまう。アメリカに連れられてしまうと幾ら銀ちゃんと言えども手が出ない。追い詰められた銀ちゃんは沢木組長の協力を得て勝負に出る…。

タイトルのローンシャークは英語の"loan shark"で、意味は違法な高利貸しや闇金という意味。平たく言えば銀次郎の商売を英語にしただけで大それた意味は無い。むしろ、何でアメリアの高利貸しをストーリーに絡めたのかが良く分からないのだがまぁ良いか。製作が95年のため、愛車は以前と同じダイムラーと思われる濃紺の4ドア。(SS)


製作: 1995年 日本 95分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA 
製作: 
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 大森嘉之 / Yoshiyuki OMORI, 竹井みどり / Midori TAKEI, いしのようこ / Yoko ISHINO, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 宇野ポテト / Potato UNO, 岸部四郎 / Shirou KISHIBE, 前田吟 / Gin MAEDA, 佐藤B作 / B-saku SATO, 喜多嶋舞 / Mai KITAJIMA, 高杢貞彦 / Sadahiko TAKAMOKU, 絵沢萠子 / Moeko EZAWA, 西川のりお / Norio NISHIKAWA, 西川忠志 / Tadashi NISHIKAWA, 角田信朗 / Nobuaki KAKUTA, 羽野晶紀 / Aki HANO
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

難波金融伝ミナミの帝王 #20 劇場版X 待つ女 / The King of Minami #20



節目のシリーズ第20作目は、劇場版としても節目の第10作目。1997年の製作だが銀ちゃんの後ろ髪もボリュームアップし、貫禄も同時にアップ。劇場版の制作年的にはシリーズ第15作目のVシネ版に追いついた。探偵は変わらず麻子&涼子だが、出入りの激しい舎弟には古本新乃輔演じる拓也が復活。なお、原作者の郷力也が友情出演をしている。

ツカミでは銀ちゃんの債務者である印刷屋の小野寺と芸者の菊千代の遊びの最中に銀次郎が取り立てに来るも、粋な切り返しで銀ちゃんを追い返す菊千代が気持ちいい。その菊千代と不甲斐ない小野寺が物語の主人公だが、大していい男でも無いのに何故かモテる小野寺はさておき、菊千代は語らずとも小野寺に対する愛が観ているこちらににも伝わってき、役柄といい中村久美の演技といい秀逸。本田博太郎も大袈裟な演技だが役者っぷりを十分に魅せており、前作の芸人祭りとは大きく色合いが異なる作品に仕上がった。

印刷屋の小野寺は芸者の菊千代と結婚すると共に、新規事業を立ち上げて銀次郎の借金を返済し、新たな人生を踏み出そうとしていた。しかし、新規事業とは名ばかりで、実際は格安旅行をネタにした詐欺の片棒を担がされ2100万もの借金をしてしまう。一方、結婚する前に付き合っていたクラブの女、マキと別れるために100万もの大金を積むも、マキは妊娠した事をネタに手切れ金として500万を要求してきた…。にっちもさっちも行かなくなった小野寺は菊千代の元を去り、マキとの関係を清算しようとするが…。

良い女と悪い女の象徴がまさに菊千代とマキ。そして割を食うのはいつも良い女。夫である小野寺を信じて再び有馬温泉で芸者として働く姿がイジらしい。涼子も芸者『野菊』として潜入調査をするが、女も惚れる菊千代の姐さんっぷりに仕事を忘れて涼子も段々と情が移っていくほど。嫁に貰うんやったらこういう女やないとあきまへん。ということで、最後は麻子の『ねぇ、何とかならへんの?』から始まる銀ちゃん一流の『取れるところから取ったる』戦法で、冒頭の詐欺絡みの会社からきっちりとキリ取るのだが、そんなメインストーリーが霞むほど、菊千代が存在感を発揮している。どうでも良いのだが、シリーズ20作も見続けてると『ミスター端役』宇野ポテトの出どころが段々分かってきた。愛車は変わらずメルセデスSLクラス。(SS)


製作: 1997年 日本 86分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
製作:
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 古本新乃輔 / Shinnosuke FURUMOTO, 竹井みどり / Midori TAKEI, いしのようこ / Yoko ISHINO, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 宇野ポテト / Potato UNO, 螢雪次朗 / Yukijirou HOTARU, 中村久美 / Kumi NAKAMURA, 本田博太郎 / Hirotarou HONDA, 比企理恵 / Rie HIKI, 岡田千代 / Chiyo OKADA, 郷力也 / Rikiya GO
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

難波金融伝ミナミの帝王 #19 劇場版IX 保険金横領 / The King of Minami #19



1996年製作のシリーズ第19作目は劇場版第9作目。探偵は麻子に涼子のいつものコンビ。舎弟は今回が最後の出演となる宮谷信也演じるリョータ。本シリーズでプロデューサー兼沢木の親分役として出演している結城哲也のチャンバラトリオで仲間の南方英二や、当時アニマル梯団で宮谷信也の相方であるモンキッキー、詐欺師役で山田雅人など、本作は芸人祭りの様相を呈している。

今回は骨董品店を営業するギャンブル狂いで銀ちゃんの債務者である植木が空き巣の被害に会うのだが、損害保険会社の悪徳調査員と結託し架空の動産損害保険金1000万円を請求するも、900万以上を悪徳調査員に取られてしまう。困り果てた植木はロスアンゼルスへ高飛びしてしまい、萬田金融一同も植木の足取りを追う…。

シリーズ第4作におけるフィリピン以来の海外ロケ敢行作品で、銀ちゃんがロスまで追い立てるも債務を払うアテの一切無い植木から取れないので、悪徳調査員からキリ取るという話。しかし、ロスまで行ってもド派手なスーツを着こむ銀ちゃんとリョータの浮きっぷりが激しい。そういえば、フィリピンでも派手な格好だったが、今の時代なら空港のセキュリティ・ゲートを通過できないとみた。肝心のキリ取りだが、銀次郎の債務を払うための努力を全くしなかった植木に対して、保険金をかすめ取った悪徳調査員をカタに嵌めるというのも少々筋が違うところ。しかし、止めときゃ良いのに、欲の皮の突っ張っらせてしまった悪徳調査員は最後にきっちりカタに嵌められる。愛車は引き続きメルセデスSLクラスで、エンディングは相生橋でのショートコントとストップモーション。これを見るとホッとするのは私だけではあるまい。(SS)


製作: 1996年 日本 82分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
製作:
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 宮谷信也 / Shinya MIYATANI, 竹井みどり / Midori TAKEI, いしのようこ / Yoko ISHINO, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 宇野ポテト / Potato UNO, 山田雅人 / Masato YAMADA, 石井愃一 / Kenichi ISHII, 徳田尚美 / Naomi TOKUDA
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

Sunday, November 11, 2012

難波金融伝ミナミの帝王 #18 劇場版VIII 詐欺師の運命 / The King of Minami #18



シリーズ第18弾、劇場版第8作目。舎弟の竜也、探偵に麻子&涼子コンビは変わらず。宇野ポテトも十数秒ほど警官役で出演しており、ミスター端役は相変わらず健在だが、日高久や井上茂、梅垣義明といった面々は劇場版になったせいかここのところ見かけない。他では、河内家菊水丸や当時関西芸人のドンと呼ばれた上岡龍太郎が友情出演を果たしている。どうでも良いのだが、シリーズ第15作目『堕ちる女』でホスト役で出演した俳優が再び博多のヤクザという役柄で出演するも、相変わらずの芋演技に役者としての成長が見られなかったのが残念。

今回のストーリーは九州から出てきた詐欺師の話。演じるのは博多出身の光石研なので方言は問題無さそうだ。その詐欺師が大阪の資産家の孤独な老女を詐欺に嵌めるのだが、老女は詐欺師にとても優しく接してもらっていた為に、最期まで頑として詐欺に遭った事を認めようとしない。一方、この老女の娘婿がギャンブル狂いで銀ちゃんから2000万もの大金を借りていたが、夜逃げ同然に飛んでしまう…。

逃げた詐欺師を追って九州に出張する銀ちゃん。逃げた詐欺師には博多のヤクザも絡んでいたため、沢木の親分や広瀬も一緒に出張るも、最後は『金融屋』なりの殺し方で債務を回収し、関係者一同それなりにハッピーエンド。しかし、老女の娘夫婦が警察に告発してしまったのは、銀ちゃんの読み違いというより指示不足だろう。結果として、博多のヤクザが絡んでくる辺りはこじつけっぽく見えてしまい『尺稼ぎ』としか思えない。愛車は変わらずメルセデスSLクラス。(SS)


製作: 1996年 日本 82分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
製作:
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 大森嘉之 / Yoshiyuki OMORI, 竹井みどり / Midori TAKEI, いしのようこ / Yoko ISHINO, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 宇野ポテト / Potato UNO, 石井トミコ / Tomiko ISHII, 光石研 / Ken MITSUISHI, 島田洋七 / Youshichi SHIMADA
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

Saturday, November 10, 2012

難波金融伝ミナミの帝王 #17 劇場版VII 先物取引の蟻地獄 / The King of Minami #17



シリーズ第17作目は劇場版第7弾。舎弟に達也、探偵に麻子と涼子は変わらず。今回は売れない借金まみれのAV監督の鏑木がふとしたきっかけで先物取引と出会い、最初は儲かるものの追加の取引で悪徳業者にキッチリカタに嵌められてしまう。一方、鏑木の娘も矯正下着販売のマルチ商法で詐欺の片棒を担がされていた。先物取引の証拠金やら追証金やらで銀次郎に借金を重ねていた鏑木だが、麻子が調査を進めると先物取引の会社もマルチ商法も裏では同じ詐欺師が仕切っており、親子揃って同じ人間に騙されていたことが分かった…。

今回の債務者は証拠金の10倍の金額で先物取引を行うも、購入したコーヒー豆の大暴落のより想像以上の損失を出してしまった。詳細は説明されていないが、悪党は恐らく実際の取引をしておらず、かつ嘘の情報を流して鏑木に買いを勧めカタに嵌めたようだ。最後は『手形の裏書き』という、ありきたりな方法でキリ取った銀次郎だが、そこに至るまでのプロセスは中々秀逸で良く出来ている。銀ちゃんの策もあり、親子揃って人生出直しのハッピーエンドとなった。今回の愛車もメルセデスSLクラス。また、本作から劇場版エンディングもRIKIの『欲望の街』となった。(SS)


製作: 1996年 日本 82分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
製作:
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 大森嘉之 / Yoshiyuki OMORI, 竹井みどり / Midori TAKEI, いしのようこ / Yoko ISHINO, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 宇野ポテト / Potato UNO, 城後光義 / Mitsuyoshi JOGO, 高橋長英 / Choei TAKAHASHI, 島田洋七 / Youshichi SHIMADA
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

Friday, November 9, 2012

難波金融伝ミナミの帝王 #16 劇場版VI 偽装結婚 / The King of Minami #16



シリーズ第16作目は劇場版6作目。シリーズ前作は1997年の製作だが、本作は1995年製作なので、髪が短めの銀ちゃんは若く見えるし、声も表情も豊かだ。探偵は麻子と劇場版前作に続き可愛かずみ演じるけいこ。舎弟は劇場版前作に続き大森嘉之演じる竜也。ドジを踏む事が多い竜也だが、今回はドジというより悪党に拉致された挙句、大怪我を負ってしまう。この大怪我以降は、松本竜介演じる津川が銀ちゃんの実質的な助手として活躍する。また、桂ざこばと笑福亭鶴光がバーの客役として瞬間端役出演している、僅かな出演時間でも笑いを織り込むのが芸人らしいところ。

今回のストーリーは偽装結婚がテーマ。ルビー・モレノ演じるフィリピン人の女性が偽装結婚を利用して来日し夜の店で働くも、実際は借金漬けにされて殆どタダ働きされている状態に。一方、偽装結婚させられた男は銀ちゃんの債務者であったため、『旦那の借金は嫁の借金』ということで追い込みを掛けたが女は姿を消してしまう。そんな時、竜也が悪党に拉致され大怪我を負ってしまう…。

舞台は大阪ミナミから別府温泉と銀ちゃんも久々に関西圏を出てのキリ取り。シリーズでは珍しく、竜也が激しい暴行にあったり、ルビー・モレノが刺されたりとかなり暴力的な悪党をきっちりカタに嵌める。また、探偵の2人もけいこは潜入捜査に麻子はクラブのママに化けたりとなかなかの熱演。最後は思いもよらぬ形でハッピーエンドだが、銀ちゃんも何か思うところありそうだ。最後のテロップとエンディングは素人風処理に逆戻り。(SS)


製作: 1995年 日本 85分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
製作:
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 大森嘉之 / Yoshiyuki OMORI, 竹井みどり / Midori TAKEI, 可愛かずみ / Kazumi KAWAI, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 日高久 / Hisashi HIDAKA, 大杉漣 / Ren OSUGI, ルビー・モレノ / Ruby MORENO, 宇野ポテト / Potato UNO, 松本竜介 / Ryusuke MATSUMOTO, 佐川満男 / Haruo SAGAWA, 春やすこ / Yasuko HARU, 紅萬子 / Manko KURENAI, 笑福亭鶴光 / Tsuruko SHOUHUKUTEI, 桂ざこば / Zakoba KATSURA
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

難波金融伝ミナミの帝王 #15 堕ちる女 / The King of Minami #15



シリーズ第15作目。探偵および舎弟は変わらず、麻子・涼子・拓也の3人。愛車も変わらずメルセデスSLクラス。ツカミのショートストーリーは本編に全く関係無いのに長すぎる。面白い話なのでサラッと切り上げれば良かったのに。

しかし、ツカミにもまして今回の本編は良く分からない。話の筋はクラブの女やホスト通いの女子高生が借金漬けにされて最後は売春婦まで堕とされていく。そうした女の影に潜む悪党から金をキリ取る、というものだが、そもそも銀次郎の債務者はクラブの女一人。しかも債務は100万ぽっきり。女子高生に金を貸したのは舎弟の拓也が個人的にやったこと。そして、銀次郎に助けてくれと頼んできた男は、銀次郎の債務者でも何でもなくお金に困っていない医者である。これでは銀次郎が腰を上げる大義名分が無いはずだが、何故か『それなりの手数料はかかりまっせ』と言いつつ、悪党をカタに嵌める。これでは金貸しの銀次郎というよりもただの詐欺師の話だな。

加えて出演者の演技が酷い。特に女子高生役の女とホスト役の男。クレジットを観る限りでは恐らく倉前志保という女優なのだが男優さんは調べきれなかった。この二人は大阪弁も酷いが演技はもっと酷く正視に耐えられない。良作が多く平均の高い作品が多い本シリーズおいて一二を争う駄作。(SS)


製作: 1997年 日本 78分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
製作: 
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 古本新之輔 / Shinnosuke, FURUMOTO, 竹井みどり / Midori TAKEI, いしのようこ / Yoko ISHINO, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 宇野ポテト / Potato UNO, 原哲男 / Tetsuo HARA, 鹿内孝 / Takashi SHIKAUCHI, 伊藤美紀 / Miki ITO, 中谷彰宏 / Akihiro NAKATANI, 蟷螂襲 / Shu TOUROU, 木下ほうか / Hoka KINOSHITA
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

難波金融伝ミナミの帝王 #14 銃撃の復讐 / The King of Minami #14



シリーズ第14作目。『金融屋にハジキは要らん!』とシリーズ第3作『金貸しの条件』で銀ちゃんが言ったとおり、過去のシリーズでは銃撃シーンは元より、暴力シーンもハードなものは一切無かったのだが、今回はタイトルからして既に『銃撃』という言葉が使われているように、少々アコギな悪人と対峙することになった銀ちゃん。麻子・涼子の探偵さんはそのまま。舎弟には新たに古本新乃輔が起用され、歴代舎弟でも最もエゲツない服装の水城拓也として登場している。悪党には中尾彬が登場。天然の怖い顔がヤクザな悪役に良く似合う。

親の遺産を食い潰した挙句に借金を重ねるドラ息子が今回の債務者だが、その裏に潜む地上げ屋ならぬ地下げ屋がキリ取りの対象となる。ツカミのショートストーリーが無くそのまま本編に突入するが、そのツカミで撒かれた伏線はしっかりとストーリーの山場で回収され、エンディングではこれまでにない巨額のキリ取りに成功している。銃撃されるシーンでは銀ちゃんの動きが『カオルちゃん』のそれにそっくりで少し笑ってしまう。探偵はフィルムカメラをデジカメに切り替えて銀ちゃんにモニターで報告するなど、微妙ながらも着実に進化。車は変わらずメルセデスのSLクラス。(SS)


製作: 1997年 日本 78分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
製作: 
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 古本新之輔 / Shinnosuke, FURUMOTO, 竹井みどり / Midori TAKEI, いしのようこ / Yoko ISHINO, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 井上茂 / Shigeru INOUE, 宇野ポテト / Potato UNO, 尾美としのり / Toshinori OMI, 中尾彬 / Akira NAKAO, 下元史朗 / Shorou SHIMOMOTO, 蟷螂襲 / Shu TOUROU, 前田五郎 / Goro MAEDA
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

Tuesday, November 6, 2012

難波金融伝ミナミの帝王 #13 詐欺師潰し / The King of Minami #13



シリーズ第13弾。ツカミのショートストーリーでは笑福亭鶴光が借金まみれの債務者役で登場。やはり鶴光は映画よりラジオに方がオモロイと再認識。探偵にはいつもの麻子と1作品開けて涼子が復活。それはさておき、アニマル梯団のコアラこと宮谷信也が舎弟役の『りょうた』として抜擢されているのだが、本作も含めて2作のみの出演のようだ。その他の登場人物として、ドツボにはまる債務者に島崎俊郎と大沢逸美。詐欺師の悪党に萩原流行が出演している。萩原は良く見ると2枚目なのだが、悪党も良く似合う。

前作と異なりストーリーは至極単純。サクラを使って如何にも儲かってそうな喫茶店を利用した『開店屋』という詐欺にハメられる債務者と、いつもどおりの『取れるところから取ったる』という事で開店屋からキリ取る銀次郎という構図。しかし単純なだけにアラも見える。そもそも喫茶店の売上から銀次郎の1000万を返済するというビジネスモデルに無理がある。銀次郎からの借入金の債務利子返済だけで300万/月。喫茶店の純利益が多く見積もって売上の30%だとして、生活費を全く考えなかったとしても必要な売上は最低1000万/月。店のコーヒー単価は1杯250円なので1350杯/日。営業時間を超頑張って18時間としても80杯/1時間は捌いていかないと利子の返済すらおぼつかず、元金の返済など夢のまた夢だ。つまりは、トイチの借金をして事業を開始するところから既に破綻していると言える。

観る前は島崎俊郎の演技を少しナメていたのだが、いざ始まってみるとこれが中々の演技を魅せ、本職の大沢逸美や萩原流行に決して引けを取らない。しかし、そんな真面目な演技だけでは島崎俊郎の名が廃るというもの。エンディングではしっかり『らしさ』を見せている。シリーズも13作を数え、銀ちゃんの声も一段とトーンが下がってきた。台詞はまだまだあるが、表情豊かな若い頃の銀ちゃんとは違う。愛車は引き続き黒のSLクーペ。(SS)


製作: 1996年 日本 78分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
製作: 
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 宮谷信也 / Nobuya MIYATANI, 竹井みどり / Midori TAKEI, いしのようこ / Yoko ISHINO, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 井上茂 / Shigeru INOUE, 宇野ポテト / Potato UNO, 島崎俊郎 / Toshio SHIMAZAKI, 大沢逸美 / Itsumi OSAWA, 萩原流行 / Nagare HAGIWARA, 笑福亭鶴光 / Tsuruko SHOUHUKUTEI
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

難波金融伝ミナミの帝王 #12 銀次郎vs悪徳弁護士 / The King of Minami #12



シリーズ第12作目。前作あたりからシリーズの『基本線』に乗り、シリーズとして安定してきた。舎弟と探偵は変わらず。坂上香織が探偵助手のなつみとして出演。梅子は今回もお休みってどうでもいいか。日高久や井上茂といった端役は相変わらず出演。毎回顔を連ねるこの人達だが、特に気にならないのは、それぞれ端役として主張し過ぎない演技を心掛けているからだろうか。いや、そこまで考えている訳無いか。

博打好きで日掛け屋から小金を借りている、よくあるタイプの男が今回の主人公。これに銀次郎の債務者であるプロボクサー、ヤクザな日掛け屋、悪徳弁護士と悪徳医者が絡みあい、舞台も西成から愛媛の大三島とそれなりに複雑。しかし、探偵の綿密な調査にハッタリ、義理と人情、散らした伏線とその回収もなかなか質が良く、時系列で展開するためストーリーに淀みがなく安心して観られる秀作。

シリーズの出演者には関西弁が不自然な者も多いが、本作で悪党を演じる岩本恭生はもうちょっと鍛錬が必要。北海道出身の彼にコテコテの関西弁は辛かったか。今回の愛車は前回に引き続きメルセデスのSLクラス。(SS)


製作: 1995年 日本 86分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
製作: 
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 竹井みどり / Midori TAKEI, 大森嘉之 / Yoshiyuki OMORI, 坂上香織 / Kaori SAKAGAMI, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 日高久 / Hisashi HIDAKA, 井上茂 / Shigeru INOUE, 轟二郎 / Jirou TODOROKI, 岩本恭生 / Kyousei IWAMOTO, 中西良太 / Ryota NAKANISHI
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD

難波金融伝ミナミの帝王 #11 欲望の街 / The King of Minami #11



シリーズ第11作目は純Vシネ版としての発売。前作では濡れ場からスタートだったが、今回はストリップ劇場と、2作続けてイロモノのツカミから始まる舞台は、淀川区十三のミュージックホール。撮影協力にクレジットされている事から、実際の舞台で撮影されたようだ。今回はここで働くストリッパーとその追っかけの須田を中心に展開する。ストリッパー演じるのは当時、大人気AV嬢だった白石ひとみ。ノッケから股間にボカシを入れた映像で観客の心を鷲掴みにしている。竜也と麻子は変わらずだが、いしのようこが本作から探偵の涼子役として出演、梅子はお休み。その他では、債務者に笹野高史、悪党に平泉成、ミュージックホールの経営者に室田日出男とベテラン俳優陣が出演している。

銀次郎の債務者である須田は、彼女が借金のカタにソープランドに売り飛ばされそうになるのを防ぐため、銀次郎から金を借りて借金を肩代わりした。一方、沢木組長は貸した1000万が回収不可能になり銀次郎に相談していた。銀次郎がその証文を良く見ると、連帯保証人の名前は例の須田だった。既に銀次郎に借金をしている須田が1000万もの借金の保証人になれるはずがない。調査を進めると一連の件の裏では『保証人屋』が暗躍していることが分かった…。

シリーズも3年目に入り、麻子にも舎弟というか部下が付き、しかめっ面の銀ちゃんと事務所から電話で配下の手下をマネージメントするシーンが増えた。白石ひとみもそれなりに頑張って演技をしており、室田日出男、笹野高史や平泉成などベテランの脇役陣が素晴らしい演技で魅せておりストーリーに深みを与えている。涙が出るとは言わないが、いつものシリーズとは違ういい話に仕上がった。銀ちゃんの愛車はどこかのチューンドとおぼしき濃いグレイのメルセデス・SLクラス。

本作から竹内力が唄う『欲望の街』がエンディングでかかる。やはり『ミナミの帝王』のエンデイングは、相生橋上での小コントとストップモーションに被せる『欲望の街』が定番でかつ最高と改めて確信。なお、本作はもちろんフィクションだが、1993年に大阪で起きた実際の事件をヒントに脚本化されたそうで、その旨を告げるテロップが最後に流れる。前作ではぎこちなかったテロップの処理も、今回は『プロの仕事』のようでホッとした。(SS)

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製作: 1995年 日本 81分
監督: 萩庭貞明 / Sadaaki HAGINIWA
製作: 
出演: 竹内力 / Riki TAKEUCHI, 竹井みどり / Midori TAKEI, 大森嘉之 / Yoshiyuki OMORI, いしのようこ / Yoko ISHINO, 結城哲也 / Tetsuya YUKI, 天田益男 / Masuo AMADA, 笹野高史 / Takashi SASANO, 白石ひとみ / Hitomi SHIRAISHI, 平泉成 / Sei HIRAIZUMI, 室田日出男 / Hideo MUROTA, 井上茂 / Shigeru INOUE, 中田ボタン / Botan NAKATA
ジャンル: ドラマ
鑑賞方法: DVD


一応、YouTubeの『欲望の街』を貼っておく。これがホントのワイルドだろ。