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Tuesday, June 10, 2014

鉄子の旅 全6巻



『鉄道ファン』。時に『テツ』やら『鉄ヲタ』と称される鉄道好き。テツ自体はかなり古くから存在するようだし、特にオタク性も高くない一般的な趣味(だと個人的には思っている)だが、ある時から急に市民権を得たというか、認知度が上がったのには、本作も幾ばくかの影響を及ぼしているかもしれない。『鉄子の旅』は小学館の『月間IKKI』に連載された漫画で、旅の案内人として、旧国鉄時代からJR・私鉄に至るまで日本の全ての駅に降り立ったという横見浩彦が毎回企画する鉄道の旅を、菊池直恵の作画で描くノンフィクション漫画。

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基本的な展開としては、鉄ヲタの中でも『神』に近いとされる横見が鉄道の旅を企画して、その横見と対極にある鉄道に興味のない漫画担当の菊池と毎回日本中の鉄道を訪れるというもので、時折ゲストが来たりすることもあるが、この2名に小学館の編集者を加えた3名が通常の旅メンバー。『列車に乗り駅を降りる』こと、それ自体が『旅の目的』である横見。一方、菊池(というか、テツ以外の人)は鉄道による移動は旅の移動の『手段』の一つでしかすぎず、おのずと両者の意見は異なることになるのだが、この辺りの考え方の違いに対する驚きや、二人の掛け合いやらが毎回のお約束である。しかし、鉄道はあくまで移動手段であってそれ自体を楽しむ術を知らない菊池が、漫画としてなるべく面白くなるように作画しても、その底辺にある考え方の違いはレールのようにどこまで行っても交わることが無いため、鉄道好きな視点からみるとそのストーリー展開は少々棘々しさが感じられる。しかも、ストーリーが進むに連れて菊池が徐々に鉄道好きになっていって…というような甘い展開ではなく、むしろ回を追う毎に菊池の棘が益々鋭くなっていくのだが、まぁそこが本作の面白いところであり狙いでもあるのかなと思う。

なお、撮り鉄・完乗・鉄道模型・音鉄などなど、いろいろあるが、横見が降り鉄というか駅ヲタなため、本作の方向性もほぼ駅に主眼がおかれており、全てのテツが楽しめるかといえばそうでもない。ノンフィクションを標榜するのなら、乗った車両の詳しい情報や風景写真などもフィーチャーすると、もう少し濃くなったような気がするが。既刊全6巻に加えて、連載終了後のコラムや読み切りなどを含めた鉄子の旅プラスの実質全7巻。なお、横見企画の旅に5年間付き合った結果、体力の限界ということで筆を置いた菊池に代わり、ほあしかのこ作画による新・鉄子の旅も既刊全5巻が発行されている。(SS)

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初版発行: 2004年
原作: 横見浩彦
作画: 菊池直恵

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