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Tuesday, December 4, 2012

幸せの黄色いハンカチ / The Yellow Handkerchief



『男はつらいよ』シリーズで名を馳せる山田洋次監督による、北海道を舞台にした邦画ロードムービーの代名詞。1977年製作の本作は主人公に高倉健および倍賞千恵子というビッグネームを起用し、本作が映画デビュー作となる武田鉄矢や桃井かおりが脇を固めつつ渥美清が端役という、主役級役者を揃えて臨んだ意欲作。単純なストーリーと分かり易いハッピーエンドだが、当時の若い世代の行動心情を荒削りながらも鮮やかに演じる武田鉄矢と桃井かおり、そして加えて『健さん』の圧倒的な存在感と名演技が、淀みの無いテンポの良い展開と相まって、公開年の第1回日本アカデミー賞、キネマ旬報賞やブルーリボン賞など国内の映画賞を総なめした。しかし、邦画のヒット作が国内の殆どの映画賞を受賞してしまうというのは日本映画界の伝統なのか。各賞の主催者が他の賞と違う切り口で作品を評価する姿勢が強ければこうならないと思うのだが。

作品に話を戻す。前述のとおりストーリーは至極単純で、失恋してヤケになった武田鉄矢演じる花田欽也は、赤いマツダ・ファミリアでフェリーに乗り、北海道でのツーリングに出かける事に。そんな欣也にナンパされたのは桃井かおり演じる朱美という女の子。彼女もまた失恋の痛手を北海道旅行で癒そうとしていたのだった、一方、網走刑務所から刑期を終えた島勇作(高倉健)が出所していた。とある海岸で勇作に写真撮影をお願いしたことをきっかけとして旅を共にする事になった3人だが、旅を続けるうちに勇作の過去が次第に明らかになる…。

レビューではあまりネタバレを書きたくないのだが、こと本作についてはDVDのジャケット然り、映画の予告編然りで、黄色いハンカチがそこら中にはためいており、仕舞いには映画本編の映像でさえエンディング直前に黄色いハンカチが見切れており、これでは映画を観ている途中からハッピーエンドを分かりつつ鑑賞することになるのが個人的にはどうもしっくりこない。

日本映画界の大スターである高倉健だが、その作品は『ブラック・レイン』くらいしか鑑賞したことがなく、どんな役柄でもいつも高倉健という印象だった。しかし、本編開始直後に勇作が駅前食堂でビール・醤油ラーメンとかつ丼を注文してそれを貪り食うというシーンを観て、自分が間違っていた事に気付かされた。何の変哲も無いビールを飲んで飯を食うだけのシーンだが、6年間服役した出所直後の男が飲む久しぶりのビールと美味い飯、というのが語らずともひしひしと伝わってくるようだ。聞くところによると、このシーンのために二日間食事を摂らずに撮影に臨んで一発OKだったという。高倉健が真のプロフェッショナルたる一端がここにある。(SS)


製作: 1977年 日本 108分
監督: 山田洋次 / Yoji YAMADA
製作: 名島徹 / Toru NAJIMA
出演: 高倉健 / Ken TAKAKURA, 倍賞千恵子 Chieko BAISHO, 武田鉄矢 / Tetsuya TAKEDA, 桃井かおり Kaori MOMOI, 渥美清 / Kiyoshi ATSUMI
ジャンル: SF, サスペンス, アクション
鑑賞方法: DVD

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