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Monday, December 3, 2012

シベリア超特急 4 〜 監督殺人事件 〜/ Siberian Express 4



不朽の名作『シベリア超特急』シリーズ第4弾は何と舞台である。本作は2003年1月18日に新宿シアターアプルで上演された最初で最後の1度限りの舞台版をDVDにしたものだ。例によって演出、脚本、製作はマイク・ミズノ、監督は水野晴郎である。シベ超を生の舞台にして、しかも一度限りの公演とはマイク・ミズノも思い切った事をやったものだが、これをそのままシリーズ第4弾DVDとして発売してしまうあたりに、エンターテイナーでありプロデューサーでもあるマイク・ミズノの力量の向上を感じる。

本作のストーリーは少々トリッキーで面白い。端的に言うと『シベリア超特急 4』の製作を開始しようとしていた矢先、監督の水野が何者かによって殺害されてしまう。そして、この殺人事件の謎を解き明かすべく『シベ超 4』の制作スタッフは台本通りに『シベ超4』を演じることにした…、というもの。冒頭に宇津井健、内藤武敏や三田佳子などが出演しており、基本的には前作までの出演者がそのまま横滑りしているように見えるが、はっきり言ってこの御三方は出演者というよりも、舞台冒頭に水野とフリートークをかましているだけで、何らかの役を演じているわけではない。その他では新たな大物として丹波哲郎が本人役で参加するも、こちらもユルユルの演技とは程遠いもの。

ということで、本作をもって舞台と評するのは真面目に『舞台』に取り組んでいる方々に失礼かと思う。と言うのも、水野以外の役者陣は真面目に本舞台に取り組んでいるのに、肝心の主役の水野が台詞を忘れていると思われるシーンがあるのだ。周りの役者がそれをフォローしつつ上手く笑いに変えているが、おかげで舞台上に一流処を揃えておきながら、ストーリー展開は二の次になってしまい、舞台としてはほぼ破壊されたと言ってもいいだろう。私は何も台詞を発するだけで笑いを取る水野の『超棒読み』や『超々自然体』の演技を批判している訳ではない。台詞もロクに覚えずに一発勝負の『舞台』に上がってきた役者としての水野の取り組みを批判しているのだ。ちなみに、真柄加奈子も台詞忘れをしており、舞台袖のスタッフに次の台詞を促されている。

とは言うものの、そんな舞台も『シベ超』というフィルターを通して観てみると全てがそれらしく、本物の役者が演じる真剣な演技と水野のそれとの大きなギャップ、そしてそれが誘発する笑い。コメディー方面に強めに振った謎解きの面白さとお約束の反戦メッセージ。そして、最後にはお約束の『ドンデン返し』も準備されており『シベ超』らしい極上のエンターテイメントに仕上がった。

見終わった後にふと不思議な感じに襲われた。今、私が観たのは舞台なのかトークセッションなのか学園祭の出し物なのか…。『シベリア超特急 4を観たんだ』と自分自身に強く念じる事を強くおすすめする。さもなければ、この舞台作品を観たことすら忘れてしまうだろう。(SS)


製作: 2003年 日本 132分
監督: マイク・ミズノ / Mike MIZUNO
製作: 水野晴郎 / Haruo MIZUNO
ナレーター: 油井昌由樹 / Masayuki YUI
出演: 水野晴郎 / Haruo MIZUNO, 西田 和晃 (西田和昭) / Kazuaki NISHIDA, 三田佳子 / Yoshiko MITA, 宇津井健 / Ken UTSUI, 内藤武敏 / Taketoshi NAITO, 光本幸子 / Sachiko MITSUMOTO, 丹波哲郎 / Tetsuro TANBA, 真柄佳奈子 / Kanako MAGARA, やべきょうすけ / Kyosuke YABE, 安井昌二 / Shoji YASUI, 小田切みき / Miki ODAGIRI, 渡辺雄作 / Yusaku WATANABE, 金濱夏世 / Natsuyo KANAHAMA
ジャンル: ミステリー, 舞台
鑑賞方法: DVD

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